「柔術界の鬼神」クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)は、やはり強かった。5月5日、東京都内シークレットスペースで開催された『RIZIN LANDMARK vol.3』で萩原京平(SMOKER GYM)にバックチョークを決め僅か97秒で勝利。「次はタイトルマッチだ!」と絶叫した。
この勝利で夏以降に、牛久絢太郎(K-Clann)が保持するRIZINフェザー級王座への挑戦が決定的。その後、大晦日のリングで朝倉未来(トライフォース赤坂)と再戦を行う可能性も浮上している─。
■アップセットは起きず
「最初だけ(闘い方を)間違えました。でも、リスクを背負った試合で勝てて良かった。次はタイトルマッチ、ウシク(牛久絢太郎)かかって来いよ! 逃げないでください」
試合後に、クレベル・コイケは穏やかな表情でそう話した。
まずは、試合を振り返ってみよう。
開始直後から、萩原が積極的に前に出て得意の打撃を見舞っていった。クレベルをロープ際に追い込み右ストレートをヒットさせる。その後も、果敢に攻めた。パンチを浴びたクレベルは、右眼上をカットし出血。
ここで一気に…と萩原は追撃するが、クレベルが機敏に対応する。
カウンターのタックルでグラウンドの展開に持ち込んだのだ。ここからは、クレベルの独壇場。アッサリとバックを奪い、両足で胴体をロックしバックチョークを決める。寝かされてしまうと萩原は何もできず、タップを余儀なくされた。
「チャンスをものにできなかったことが悔しい。やってきたことが間違っていたのか。いまは先のことが考えられない」
敗れた萩原京平は、かなり落胆していた。
闘い方は間違っていなかった。
打撃で勝機を見出そうとし、先手を取った。グラウンドの展開に持ち込まれることも覚悟していただろう。おそらくは、すぐに起き上がる練習を積んでいたはず。だが、それができなかった。寝技では、クレベルの方が一枚も二枚も実力上位だったということだ。
作戦は遂行したが、力及ばず。アップセットは起きなかった。
■クレベルは無敵なのか?
これでRIZIN5連勝、すべてをチョークで決めたクレベルは言った。
「私は、ここまでトーナメントのイメージで闘ってきた。カイル(・アグォン/米国)、マシマ(摩嶋一整/毛利道場)、アサクラ(朝倉未来)、ウルカ(佐々木憂流迦/セラ・ロンゴ・ファイトチーム)に勝って、今回の試合はセミファイナル(準決勝)。次は、ウシクとファイナル(決勝)を闘う。
長い闘いだけど、次の試合に勝ってチャンピオンになりたい」
イベント後には、RIZIN榊原信行CEOも、「夏か秋に牛久選手とクレベル選手の試合を組みます」と明言。両者によるタイトルマッチは決定事項となった。
牛久は、4月の『RIZIN.35』で前王者の斎藤裕(パラエストラ小岩)を返り討ちにしベルトを死守。2度目の防衛戦でクレベルを迎え撃つことになる。最強の挑戦者を相手に、いかに闘うのか?
大方の見方は「クレベル優位」。
それでも牛久陣営は、クレベルの闘い方を徹底分析しているはず。意外性十分の王者相手に緊迫感溢れる闘いになりそうだ。
クレベルは自信に満ちた表情で、こうも話す。
「ウシクと闘って私が勝つ。これは間違いない。もう、勝つイメージも完成している。最後に私がトライアングル(三角絞め)を決める。
それでチャンピオンになったら現役を引退する。これは冗談(笑)。その後はもう一度、アサクラとやるのも楽しいかな。彼は人気のある選手だし、ファイトマネーもいいから(笑)。それに、ベラトールの強い選手たちとも闘っていきたい」
牛久とのタイトルマッチの勝敗に関わらず、朝倉未来とのリマッチ実現の可能性は高い。多くのファンが待ち望むカードだからだ。その舞台は、大晦日のリングが相応しい。
今年の下半期もRIZINフェザー級戦線は、熱を帯び続ける。そして、闘いの中軸を担うのはクレベルだ。
「打倒!クレベル」
これが今後、日本人ファイターにとっての大きなテーマとなろう。
また、今イベントの中で次回大会も発表された。
7月2日、沖縄アリーナ『RIZIN.36』─。
ここで、朝倉海(トライフォース赤坂)の再起戦が行われる。対戦相手は未定だが、外国人ファイターになりそうだ。
※「RIZIN LANDMARK vol.3」は、RIZIN LIVEほかでPPV配信。アーカイブ配信は5月10日(火)23時59分まで。
文/近藤隆夫