マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、円安について解説していただきます。


円は最弱通貨

「円安」の勢いが止まりません。Bloombergが集計する拡大主要通貨32のなかで、今年に入ってから4月20日までに、円は最も弱く、米ドルに対して10.4%下落しました。アルゼンチンペソ、トルコリラ(!)、ロシアルーブル(!!)が円より上位にあり、円の弱さが際立っています。

  • 主要32通貨の対米ドル騰落率

口先介入は不発

ここもと鈴木財務相や黒田日銀総裁が円安をけん制する「口先介入」を行っていますが、今のところ不発に終わっています。米ドル/円は大台の130円を目前としており(4月22日現在未達)、02年1月につけた135.22円も通過点に過ぎないとの見方も出てきました。果たして円安阻止のための為替介入はあるでしょうか。過去の事例を振り返って考えてみたいと思います。

まず、日本の為替介入は、財務省が決定して、日銀が外国為替市場で実際の売買を行います。正式には外国為替平衡操作と呼ばれます。以下は主に(91年4月以降について)財務省の「外国為替平衡操作の実施状況」に基づいています。


日本は過去10年以上、為替介入を行っていません。最後に介入したのは11年11月4日の「米ドル買い円売り」で、投機的動きの抑制が目的だったようです。

円買い介入の事例はごくわずか

日本が「米ドル売り円買い」の介入を行った事例はごくわずかです。90年代初頭は日米貿易摩擦によって円高誘導を迫られたから(その後は米ドル/円の下落が止まらなくなって「米ドル買い円売り」の介入に転換)。そして、97-98年は、アジア通貨危機(≑米ドル高)や円キャリー取引への対応でした。

協調介入も次第に難しく……

主要国による国際協調介入も、ドル高是正を狙った85年プラザ合意や、その後のドル下落に歯止めをかけようとした87年ルーブル合意など、かつては大々的に行われました。しかし、近年では新興国の台頭などにより利害調整が困難となるなか、東日本大震災後の円高是正など、かなり特殊なケースに限られているようです。

  • 米ドル/円相場(月足)と為替介入

為替相場の転換には政策サポートが必要!?

上記のものを含めて、90年代から2000年代前半は頻繁に為替介入が実施されました。チャートからは為替介入によって相場が転換したようにも見えますが、それにはかなり執拗な介入が実行された後だったようです。また、それだけではなく、金融政策や財政政策の裏付けがあったことも重要でしょう。

例えば、90年代半ばの米ドル高円安への転換は、米FRBの利上げや日本の財務省による外貨投資規制の緩和を伴っていました。2000年代前半の米ドル安円高は優に100回を超える介入では止まらず、米FRBの利上げや住宅バブルの発生によって転換したとの印象です。また、東日本大震災後の円高是正は、12年12月の第二次安倍政権発足や翌年4月の黒田日銀の異次元緩和をもってようやく方向が明確になったと言えるでしょう。

介入はあったとしてもスムージングオペ止まりか

足もとの「円安」は主に、日銀と主要中銀の金融政策の差に根ざしています。したがって、日銀が金融政策の正常化へ舵を切る、あるいは主要中銀の正常化方針が何らかの理由で大幅な見直しを迫られるなどの状況変化がなければ、「円安」が転換するのは難しそうです。そうしたなかで、日本の為替介入は諸外国の協力も理解も得られないでしょう。仮に日本が単独で為替介入に踏み切るとしても、それは、急激な相場変動を抑制するためのスムージング・オペレーションが関の山ではないでしょうか。