オンライン住宅ローン⽐較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSは、住宅ローン勉強会を4月11日に開催した。

2022年に入って住宅ローン金利が毎月上昇傾向にあり、4月からは物価上昇の兆しが出ている。また、コロナ禍は⼀時期のパニックから脱し、コロナ前提での経済が再構築されつつある。

こうしたことを踏まえ、今回の勉強会では「金利上昇・物価上昇・コロナ収束」が、住宅ローンユーザーや銀行に与える影響を分析。同社COO塩澤崇氏が登壇し、トレンドや今後の見通しを共有した。

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ユーザーがウェブ上で住宅ローンを比較する時代にシフト

MFSは住宅ローンの比較サービス「モゲチェック」などを提供しているフィンテックの会社。塩澤氏はモルガン・スタンレー証券での住宅ローン証券化ビジネスや、ボストン・コンサルティング・グループでの戦略コンサルティングに従事した後、2015年よりMFS 社のCOOを務める。

同社は「ユーザーサイド」「資本市場と消費者市場の橋渡し」「ロジックと本質」の3つのポリシーを掲げ、自社サービス「モゲチェック」などを介して得たユーザーの属性やニーズ、銀行の商品情報や販売戦略といった情報を勉強会というかたちで還元している。

今回、最初のテーマとして解説されたのが金利上昇だ。住宅ローンの固定金利は上昇傾向にある一方、変動金利は下落傾向にあり、2カ月連続で固定と変動の金利差は1%台まで上昇していることを紹介した。

「2019年のトランプ大統領時代には、米中の貿易摩擦で米国も利下げを行っていた影響によって、金利差が0.6%まで縮んだ時代もありました。が、現在は変動が低くて固定が高いという状況が拡大し、年間の返済額に直しますと年20万円の差、35年間の総返済額で700万円も差が出る状況です」

おおよそ変動金利70%、10年固定20%、全期間固定10%という現在の金利タイプのシェアについては今後、相対的に変動の魅力が高まることで変化することが予想される。

「やはり変動の低金利に魅力を感じて、全期間固定のシェアが減り、変動と10年固定が今後さらに拡大するという見立てをしています。また、全期間固定ほど金利が高くない10年固定は、とはいえ金利上昇が怖いというお客様の受け皿になることが予想されます」

また、塩澤氏は全国の主要地銀の変動金利の動きを隔月で表したグラフを紹介。従来、住宅ローンは不動産業者からの紹介が一般的だったが、金利比較サービスが普及したことで住宅ローン市場の競争が激化していると語った。

「京都銀行さんも横浜銀行さんも、急激に金利が下がっています。ネット銀行やメガバンクの金利水準に収斂するような動きで、「モゲチェック」ユーザーで実際に銀行へ申し込んだ人数は、前年同月比で3.5倍に増加と急速に伸長しました。住宅ローン商品がウェブで比較される時代に、地銀も変動金利の水準を引き下げざる得ない状況が見てとれるかと思います。ネットとメガに地銀が加わった三つ巴の戦いとなり、地銀もネット集客に力を入れざる得ないため、さらに変動金利が上がりづらい局面に入っていくと言えます」

金利は今後どう動く?

「金利の見通しについて、まず変動金利ですが、日銀の公式アナウンスメントである需要拡大による持続的な2%インフレの達成による金融緩和解除には程遠いのが現状です。日本は少子高齢化による人口減少に加え、賃金も横ばいで需要が弱い。一方でウクライナ情勢による資源価格高騰や円安による輸入物価の増加と、コストプッシュ型のインフレによるスタグフレーションに入りつつある。この状況で景気引き締めに繋がりかねない金融緩和解除は考えにくいと思います」

加えて、賃金上昇には儲かる新事業に投資し、儲からない事業を閉めることで売上成長を図る企業の新陳代謝が不可欠だが、雇用維持優先の日本ではなかなか難しいという。

他方で"金利のスワップ"と資金調達のコスト、銀行の収益で決まる固定金利は、10年固定の上昇余地がやや乏しい一方、民間金融機関の全期間固定はまだ上がる余地があると解説する。

「少しテクニカルな説明ですが、金利スワップは固定金利の収入を変動金利に変換する際に必要なコストです。銀行は預金で資金を調達しますので利子の支払いは変動、固定金利で住宅ローンとして貸付すると固定金利の収入という形になります。固定金利の収入に対して変動の支払いになり、銀行の中で金利リスクを負うため、固定の入りを変動の入りに変える過程でコストが生じます」

金利のスワップコストは国債の利回りとほぼ同じで、国債の年限はフラット35の場合、10年国債の利回りが指標になるという。

10年固定ユーザーは11年目以降の金利に注意

昨今の物価上昇による家計防衛意識の高まりで固定費の見直しが進み、住宅ローンの借り換えニーズが強まることも予想される。

「実際、足元で借り換えの申込数は増加傾向にあり、前年同月比で「モゲチェック」ユーザー数は1.2倍に増えています。今年4月に借り換えを申し込んだユーザーに聞くと、17%が物価上昇がきっかけと回答しており、物価上昇の報道が増えるほど、この数字は伸びてくると考えています」

借り換えについては、11年目以降の金利が割高な10年固定を借りている人はとくに要チェックだという。

「ネット銀行7行の10年固定商品の金利を見ると、1番高い銀行は1.02%、1番低い銀行は0.615%と全期間固定よりも低い水準です。しかし、11年目に変動金利へ変わる際の引き下げ幅が小さく、1番低い銀行は0.537%ですが、1番高い銀行は2.075%の変動金利となります。マイナス金利の今日日、0.4~0.3%ぐらいの変動金利が主ななか、知らないうちに高い金利を払っている方も少なくない。10年固定を借りているお客様は変動金利に切り替わるタイミングでの見直しを強くオススメします」

物価上昇に伴う動きで同社がウォッチしているもう一つの指標が家賃だ。家賃が上がると様子見で購入を控えていたユーザーが物件購入に傾き、住宅ローンの申込み数増加につながる。耐性がついたことで経済面でコロナ禍は収束していくとの見通しを示した。

「23区の転入超過数を見ると、コロナの影響で2021年は一時的に減ったものの、22年ではプラスに転じています。住宅系のREIT5銘柄の稼働率も上がり始めており、ややタイムラグがあって、契約更新のタイミングで毎月の賃料も上がるイメージを持っています。足元の住宅ローンユーザーの動きとして、コロナに関する相談比率は大幅に減少しています。我々の借り換えサービスにおけるコロナに関する相談の比率は、2020年5月は15.6%のお客様がコロナでの収入減少などによる家計見直し相談でしたが、22年2月は0.1%。コロナ禍が直撃した飲食・観光といった業種で業態転向が進み、コロナ融資などの補助で小康状態になっていると思われます」