BPO青少年委員会は15日、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解を出した。

BPOの事務局がある千代田放送会館

この見解では、「刺激の強い薬品を付着させた下着を、若いお笑い芸人に着替えさせ、股間の刺激で痛がる様子を、他の出演者が笑う番組」を例に挙げ、「被害者のお笑い芸人は、事前にある程度知らされていたのかもしれないが、痛みはリアルであり、周りの出演者は他人の痛みを嘲笑していた」と説明。

また、「深い落とし穴に芸人を落とし(ここまではドッキリ番組の定番であるが)、その後最長で6時間そのまま放置するというドッキリ番組」を挙げ、「その穴から脱出するための試みが何回となく放映され、脱出に失敗して穴の中に落ちる芸人を、スタジオでビデオを視聴する他の出演者のうち何人かが、嘲笑するというものもあった」とした。

これらの事例に対し、2007年の同委員会の見解の中で憂慮した「人間を徒らに弄ぶような画面が不断に彼らの日常に横行して、彼らの深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性」が現実化しかねないと指摘。「苦しんでいる人を助けずに嘲笑する」シーンは、発達心理学と脳科学の研究に基づき、「子どもの中に芽生えた共感性の発達を阻害する可能性があることは否めない」とした。

さらに、「テレビで演出される“他人に心身の痛みを与える行為”を、青少年が模倣して、いじめに発展する危険性も考えられる。また、スタジオでゲストが笑いながら視聴する様子が、いじめ場面の傍観を許容するモデルになることも懸念される」と主張している。

また、この見解について「番組制作者に対してバラエティ番組の基準やルールを提示することを目的として本見解を出すものではない」と強調。

「視聴者を楽しませるバラエティ番組の制作を実現するためには、番組制作者の時代を見る目、センスや経験、技術を常に見直し、改善し、駆使することが重要であることを改めてお伝えしたい」、「“他人の心身の痛みを嘲笑する”演出が、それを視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性があることが、最新の脳科学的及び心理学的見地から指摘されていることも事実であり、公共性を有するテレビの制作者は、かかる観点にも配慮しながら番組を作り上げていくことが求められている」と結んだ。