封じ手の時点で形勢に差がついていた
渡辺明名人へ斎藤慎太郎八段が挑戦する第80期名人戦七番勝負(主催、朝日新聞社・毎日新聞社)の第1局が、4月6、7日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われました。結果は107手で渡辺名人が勝利し、七番勝負の成績を1勝0敗としました。
斎藤八段の名人挑戦は前期に続く2期目です。本局は渡辺名人の先手番で、矢倉模様に進みます。しばらく前例のある進行でしたが、41手目の▲9五歩で未知の局面となります。この位を取るのは予定だったと渡辺名人は局後に明かしました。対する斎藤八段は△4四歩~△6四角という順で、先手の飛車に狙いをつけます。角筋をかわす▲5八飛に△4五歩と銀取りに突き出しました。先手の銀が動くと△1九角成と香を取ることが出来ます。
■厳しかった遠見の角
ですが渡辺名人は堂々と▲4五同銀、対して△1九角成と香を取るのは当然なようですが、ここでは△4四歩と一度受けたほうがよかったかもしれません。▲3四歩△2二銀に▲2六角と打った手が厳しかったからです。6二の金取りなので後手は受ける必要がありますが、金取りを防げても以下の先手の攻めを受け切るのは容易ではありません。2六の角、4五の銀、5八の飛車がいずれも急所に利いています。実戦は▲2六角に△5二玉ですが、▲3七桂と跳ねてさらに先手の攻め駒が増えました。間もなく封じ手となりますが、その時点で形勢はかなり離れていたようです。「もう互角に戻すのも難しいかなという感じでした」とは局後の斎藤八段の述懐です。
■渡辺名人が快勝
最後は85手目▲8二銀が収束へ向かう一手、△同飛に▲7一角の王手飛車が決まりました。これは△6二飛で防げるようですが、▲6一金と打たれると崩壊します。実戦の△4三玉は飛車を犠牲に少しでも安全圏に逃げ込もうという手ですが、渡辺名人が的確に寄せ、開幕局を快勝で飾りました。
渡辺名人が3連覇へ向けて好スタート。対して斎藤八段は先手番の次局で挽回したいところです。4月19、20日に行われる第2局からも目が離せません。
相崎修司(将棋情報局)