2年連続挑戦の斎藤慎太郎八段、前期の雪辱なるか

渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する、将棋の第80期名人戦七番勝負(主催、朝日新聞社・毎日新聞社)の開幕戦となる第1局が4月6・7日(水・木)に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われています。開幕戦なので、渡辺名人の振り歩先による振り駒が行われ、渡辺名人の先手となりました。

昨年に続き、2期連続で両者の対戦となった名人戦七番勝負。前期は4勝1敗で渡辺名人が防衛し、斎藤八段に格の違いを見せつけた形となりました。前期七番勝負が終了してからの両者の対戦は2局あり、1勝1敗です。

挑戦者の斎藤八段にとって気になるのは、A級順位戦のラス前8回戦で挑戦を決めてから、調子が上がっていないこと。4局指して1勝3敗で、A級の9回戦でも糸谷哲郎八段に敗れています。

対して受けて立つ渡辺名人は王将戦でこそ失冠の憂き目を見ましたが、棋王戦では防衛を決めて10連覇達成。「自分の力が落ちていないことが分かった状況で、名人戦に臨めます」と語っていました。

2期連続での名人挑戦は第70~72期にて、森内俊之名人に羽生善治挑戦者が3期連続で挑戦して以来のこと。この時は3期目の挑戦で羽生挑戦者が奪取しました。それ以前だと第37、38期の中原誠名人―米長邦雄挑戦者、第17、18期の升田幸三名人―大山康晴挑戦者、第12、13期の大山名人―升田挑戦者という例があります。このうち、連続2期目の挑戦で名人奪取を実現したのは第18期の大山挑戦者だけですが、ここで名前をあげた棋士は全員が名人経験者です。棋界のトップ10であるA級順位戦を2期連続で優勝できる棋士は、至高の地位へ至るにふさわしいというべきでしょう。

前期の七番勝負では5局中3局が矢倉、残りは相掛かりと雁木が1局ずつという戦型の内訳でした。しかし直近の両者の傾向を見ると、相掛かりを採用することが増えています。

9時に始まった本局は先手の渡辺名人が早々に矢倉の戦型選択を明示。しかしその後角交換が行われ、両者の構えは角換わりのような形になりました。戦型の垣根をオーバーラップしていく現代将棋らしい展開ですが、午前中の時点ではお互い大きな長考もなく手が進み、両者準備は万端との印象を受けます。

本局は2日制で持ち時間はそれぞれ9時間。終局は翌4月7日の午後から夜にかけてが予想されます。

相崎修司(将棋情報局)

開始前、駒を並べる渡辺名人(左)と斎藤八段(提供:日本将棋連盟)
開始前、駒を並べる渡辺名人(左)と斎藤八段(提供:日本将棋連盟)