天然パーマにコンプレックスを抱く大学生・久能整が、常識にも疑う視点を持ち、普通は見逃してしまうわずかな違和感にも気づき、結果的に難事件を解決。同時に人の心の闇も晴らしていく――俳優の菅田将暉が主演するフジテレビ系ドラマ『ミステリと言う勿れ』(毎週月曜21:00~)が、きょう28日に最終回を迎える。

好調な視聴率で、見逃し配信の再生数もTVerで新記録をマークするなど大きな話題となっており、SNSでは「整のあの意見は違うと思う」「整の言葉が胸に刺さった」など多くの議論を呼んだ。

“憑依型俳優”と呼ばれる菅田をして「憑依できるような役じゃなかった」という今作。そんな彼に、現場でのエピソードを語ってもらった――。

  • 『ミステリと言う勿れ』主演の菅田将暉 撮影:蔦野裕

    『ミステリと言う勿れ』主演の菅田将暉 撮影:蔦野裕

■みんな当たり前のように観ている感覚「戦ってよかった」

――日本アカデミー賞の話題賞・俳優部門受賞、おめでとうございます。その授賞式で、プレゼンターの小栗旬さんが久能整の格好をして現れ、大きな話題となっていましたね。

ありがとうございます。小栗さんには本当に感謝していますし、あれこそエンタメな登場の仕方ですよね(笑)。完全にね(笑)

――それほど久能整が一般に認知されたという証左でもあると思うのですが、放送前の制作発表会見で「整くんがあまりに正論をふりかざす人間になってはいけない。そのさじ加減はすごく気にした」とおっしゃっていました。菅田さんが意識されたその部分は、視聴者へ伝わったという実感がありますか?

そうですね。感じましたし、視聴者の方々がちゃんと分かってくれているなという安心感もありました。そこまで悩まなくても良かったのかなと(笑)。それはある意味、僕にとって発見でした。

ただ、やっぱり深く観てくださる方も多いから、絶対観ながら疲れると思うんです(笑)。そうあるべきドラマだからそれが正しいと思うんですが、ライトに楽しみたい人からしたらちょっとそうはいかない…。でも、その辺のさじ加減にはこだわって良かったですね。業界内での評判とかも聞くと、戦って良かったなって。先輩や同業者の方がこれほど観てくださっているのが、ありがたいです。本当にみんな当たり前のように観てくださっている感覚だったので。

――整の言葉が毎回ネットで反響を集めていますが、ご自身が好きなセリフは?

原作の中では、「子どもは乾く前のコンクリートみたいだ」というような言葉が好きでした。幼少期に乾く前のコンクリートに落ちたり、そうして経験したものが固まって、大人になっても残っていく。それはすごく腑に落ちました。

ドラマでしゃべったセリフで言えば、第2話に犬堂家で「人間がすることはすべて自然の範疇です」というやり取りがすごく響きました。

――魅力的な共演者との対立構造も魅力です。

犬堂我路くんを(永山)瑛太さんに演じていただいたのは感謝ですし、ライカ(門脇麦)も整くんには特別な存在。そんな人物を僕自身が素直に惹かれた方が演じてくださるのはありがたいと感じまたし、整くんが我路くんとの会話を求める感じや唯一同じ考え、同じ考えを持つ2人であるように、僕も実際に瑛太さんにだけは分かってもらえるということがたくさんありますから、本当に良かったです。

■いつもできるアドリブが無理だった

――以前、草ヶ谷大輔プロデューサーにインタビューした際、「菅田将暉さんは本当に憑依型だ。カメラが回ってなくても、例えば『非常口の表示はなんで緑色なんでしょう』と整くんのようなことを言ってらした」と言っていました。整でいたとき、菅田さんご自身はどう感じていたのでしょう。

実は、非常口の表示がなぜ緑色なのかという疑問は、普段から思っていたんですね。そういう意味では、そもそも僕と整くんがちょっと近いところがあったのかなと思います。僕としては、なかなか伝わらないであろう不毛な議論をできた現場ですし、整くんという役の中でいると、みんな整くんがしゃべっているという錯覚を持ってもらえた。その中で問答ができるから、僕としてすごくしゃべりやすい現場だったと思います。ただ、しゃべりすぎて口内炎ができちゃったんですけど(笑)

――多くの問答が整の役の内だと錯覚されたということは、カメラが回ってなくてもああいう口調だったのでしょうか。

口調ですか…どうでしょうね。自分じゃ分かんないですけど、役ってそんな簡単に憑依できるものでもないし、お面をかぶったら整くんになれるみたいなものでもないし…。

逆に今回の作品で、僕はアドリブがほとんどないんですよ。第10話で、ちょっと後ろでアドリブでしゃべってくださいという場面があったんですけど、いつもだったらいくらでもペラペラ口から適当に言葉が出てくるんですね。でも整くんについては、そのアドリブが無理でした。そういう意味で、僕は今回、整くんが憑依してないんですよ。別の言い方をすれば、整くんの発言はアドリブなんかでできるものではないということでもあると思います。