化粧品メーカーにも関わらず、ダチョウを国内最大級の飼育羽数320羽も飼っている企業がある。その理由はダチョウから摂れるオイルの効果の高さと、SDGs的な観点によるものだ。

  • ダチョウが320羽!

SDGsな「オーストリッチオイル化粧品」とは?

SPEEDIA(スピ―ディア)は筑波山のふもとにある茨城県石岡市の自社牧場で320羽ものダチョウを飼育している。そもそも化粧品メーカーとしてダチョウに目をつけたきっかけは栄養価の高さとSDGsの観点からだった。

近年、このまま世界人口が増え続けると2050年ごろにはタンパク質の需要と供給のバランスが崩れる「タンパク質クライシス」現象が起きると欧米を中心に議論が沸騰している。にも関わらず現代の食生活におけるタンパク質摂取は食肉への依存度が高く、今後新興国のGDPが拡大して食生活が向上するとさらに肉消費量が増えることになると言われている。

そんな状況に対し、牛などの飼育で必要な穀物の量よりも少量で育成が可能、かつニオイが少なく静かで、感染症などの問題が少ないダチョウの可能性に目をつけたと代表の辻氏は話す。メタンガスの放出の極めて少ない点でも環境に優しく、さらに最近話題になっているアニマルウエルフェアの観点からも問題のない飼育方法がとれる。こうして、2017年に40羽から飼育がスタートした。

ダチョウから生まれたオイルの魅力

2018年から化粧品開発を始め3年の月日をかけ、ダチョウから摂れるオーストリッチオイルを「SPEEDIAグラマラスブースターオイル」(50ml/1万5,400円)と「SPEEDIAグラマラスエイジングクリーム」(1万6,500円)へと商品化し、2021年3月より販売。

  • (左から)「SPEEDIAグラマラスエイジングクリーム」(1万6,500円)、「SPEEDIAグラマラスブースターオイル」(50mL/1万5,400円)

そもそもは血管のバリア機能の研究者から、オーストリッチオイルが血管の内皮細胞のバリア機能を高める可能性がある事が報告されたことをヒントに、皮膚の細胞でも同様にオーストリッチオイルがバリア機能を高めるかもしれないと発想、培養した皮膚モデルや本物のヒトの皮膚を使って、様々な実験を行ってみたという。その結果、オーストリッチオイルは、皮膚細胞のバリア機能を高めるだけでなく、共存する美容成分の浸透を促進することがわかったのだ。

こうして生まれた機能性「オーストリッチオイル」は、人の皮脂の組成に近く、馬油などの動物性オイルやオリーブ、ホホバなどの植物性オイルと比べ浸透力に優れ、古くにはクレオパトラも愛用していたと言われている。その優れた浸透力を最も効果的に発揮するのが、グラマラスブースターオイルだ。洗顔後に化粧水の前に使用することで、化粧水の美容効果をぐんと高めることが、使用テストの画像解析でも示されている。

ダチョウを余すことなく利用するSDGsの観点

さらに同社で飼育しているダチョウは化粧品としてだけでなく、その資源を余すことなく利用することで環境にも配慮した商品提供を目指している。

脂は前述のように化粧品としてオーストリッチオイルに、食肉となる部分は冷凍・真空パックにして茨城県内や東京都内の飲食店に販売している。オーストリッチは高タンパク・低カロリーで鉄分などの栄養価が高いのが魅力だ。さらにガラや血液、頭・腸も商品化に向けて研究を行っているという。

環境にも優しく、そしてエイジングケアにも効果が期待できるオーストリッチオイル。環境問題への意識が高まる中、今後より一層注目が高まるのではないだろうか。