再エネ(再生可能エネルギー)事業を展開するLooopが、2022年4月に導入が予定されている「FIP制度」に合わせ新サービスを開始する。このほど記者発表会を開催した。

  • Looop代表取締役社長の中村創一郎氏と再エネ事業本部EPC事業部の千葉恵治氏

再エネ業界は「FIP制度」で新たなステージへ

同社は、東日本大震災被災地へのボランティア活動をきっかけに創業。エネルギーフリー社会を目指し、太陽光などの再エネ事業を展開している。再エネ電気を「創る」「コントロールする」「届ける」といった一連の事業を一気通貫で行っており、2021年11月時点での契約実績は約35万件。これは独立系発電事業者では1位、全体でも9位の実績となっている。

2021年6月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では再エネ導入目標が上方修正されており、今後も再エネ導入を鈍化させることなく推し進めることが求められる。金融機関によるグリーンファイナンス(温暖化対策や再エネなど環境分野に特化した資金調達のための債権や借入)も活発化している。

同社代表取締役社長の中村創一郎氏は「再エネを広めるにあたって、さまざまな課題を解決できるサービスを作っていきたい。今回の新サービスもその一助となればと考えている」と話し、「今までは政府に保証されたFIT制度の中でやっていたものが、(FIP導入によって)事業者の工夫次第でより差別化できる新しいステージに入った」とした。

「FIP制度」とは?

FIP制度では、卸電力取引市場や相対取引で再エネを市場に供給した際、一定の補助が交付される。売電価格が固定だったこれまでの「FIT制度」に比べ、市場価格に応じで収入が変動するため、市場価格が高い時間帯に売電することで投資インセンティブを得ることができるようになる。国の意向として、市場価格が高い時間に売電できるよう、事業者の工夫が求められている制度といえる。

  • 「FIT制度」と「FIP制度」(出典: 資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに! 「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3))

これにより、市場価格を踏まえた発電シフトなどにより他電源の調達コストを抑制するなどして、国民負担の抑制にもつながるという。市場安定のためには、FIP制度による価格変動リスクをどこで吸収するかが大きなポイントとなる。

このようにFIP制度は事業者の工夫によって再エネ事業の自立化を図るものとなっている。「売電収入の予測が立てにくい」「発電量予測などインバランスへの対応が必要になる」などの理由から発電所建設に躊躇する事業者が増加する恐れもある。

同社では、再エネ発電事業者をサポートする仕組みを構築。FIP移行後に求められる"創意工夫"を同社が引き受け、再エネ発電事業者の導入ハードルを下げ、業界全体として再エネ導入を拡大するのが狙いだ。

新サービス「Looop FIT プレミアム」

このような状況を受けて、同社が展開する新サービスは「Looop FIT プレミアム」。特徴として、FITのように固定価格で同社が発電した電力を買い取り、FIP基準価格やFIT認定価格よりも高値で固定価格買取を実現するという。

  • 固定価格買取のイメージ図

固定価格となることでFIP移行後もFIT制度下と同様に予見性の高い収支計算が可能となるため、銀行からの投資や融資を受けやすくなると考えられるそうだ。FIPの導入により新たに発電計画をしなおす必要があるが、この高い専門性が必要となる発電計画も同社が代行。インバランスリスクを負う。

顧客としては、新規にFIP申請を考えている場合や、FIP認定を受けている売電前の発電所からのFIP移行、売電開始済みFIT発電所からのFIP移行などを想定。同社としては、FIPをFITに変換するサービスを展開することで発電所建設をより促進し、そのEPC受注を狙っていく。買い取った電力は小売り事業の安定化に貢献させる見込み。

FIP制度の導入より、電力業界のシステムには大きな変化が訪れる。「今回の新サービスは、その変化に戸惑う事業者に伴走するような形で寄り添うものとなる。再エネ業界全体の拡大を推進し、エネルギーフリー社会の実現に向けた着実な一歩としていきたい」と同社。