2022年、RIZINナンバーシリーズは浪速で開幕する。3月20日、丸善インテックアリーナ大阪『RIZIN.34』。トリを務めるのは、実力急上昇中の気鋭ファイター萩原京平(SMOKER GYM)だ。

  • 昨年大晦日、鈴木博昭(右)を判定で破り連勝を果たした萩原京平(写真:RIZIN FF)

地元で元DEEP王者・弥益ドミネーター聡志(team SOS)を迎え撃つ。昨秋に朝倉未来に完敗するも、その後に2連勝した萩原は、どこまで強くなっているのか? 試合巧者、総合力を備えたドミネーターを相手に、いかなる闘いを見せるのか?

■静かなる挑発合戦

「ドミネーター選手と試合をしたいと1年ほど前から言ってきました。それが今回、実現することを嬉しく思います。この1年で自分はさらに強くなっているので、まったく負ける気がしません。地元大阪のファンの前で思いっきりぶっ飛ばして(ドミネーターを)サラリーマン業に専念させてあげます。
当日までに最高のコンディションを作って、試合を圧倒的にドミネート(支配)しようと思います。このカードをぜひ、メインでお願いします」(萩原京平)

「萩原選手には、RIZINフェザー級のトップクラスに成長し勢いがあるという印象を持っています。そんな彼から『闘いたい』と言ってもらえるのは光栄なこと。
ただ、振り返ってみると1年ほど前は、朝倉(未来)選手と対戦する足掛かりに『丁度いい相手』として対戦要求をされました。その後、私が(ブラックパンサー・)ベイノア選手に苦戦すると『ドミネーターには興味がなくなった』と言われ、朝倉選手にこっ酷くやられた後にまた『ドミネーターとやらせろ』と。そのアピールには誠意が感じられず、イラッとしている部分もあります。3月20日は彼にとって、忘れたくても忘れられない日にしてやろうかと思っています。
(隣に座るRIZIN榊原信行CEOに視線を向けて)このカードがメインで大丈夫ですか?」(弥益ドミネーター聡志)

先月、都内で開かれた『RIZIN.34』対戦カード発表記者会見で、ふたりはともに静かな口調ながら辛辣に挑発し合った。この注目の一戦は、もちろんメインエベントで行われる。

  • 対戦発表記者会見後のフェイスオフ。萩原京平(右)と弥益ドミネーター聡志は静かに睨み合った(写真:RIZIN FF)

■異なるバックボーン

萩原京平は、どこまで強くなっているのか?
これが、今回の試合のテーマだ。
萩原がRIZINに初参戦したのは、一昨年8月開催の『RIZIN.22』。この大会で白川陸斗(トライフォース赤坂)にTKO勝利を収めるも、翌9月の『RIZIN.24』で芦田崇宏(BRAVE)にアームロックを決められ敗れる。それでも、その後に連勝し昨年10月『RIZIN LANDMARK vol.1』で念願の朝倉未来戦に漕ぎ着けた。
しかし、グラウンドの展開に持ち込まれ何もできず朝倉に完敗。激しく落ち込むも、そこから再起し萩原は現在2連勝中だ。
「朝倉未来にリベンジしたい。あの時よりも確実に強くなっている。そのことを次の試合で見せつける」
そう彼は意気込んでいる。

相手のドミネーターは、普段は食品会社に勤務するエリートサラリーマン。それまでほとんど運動経験がなかったにもかかわらず、筑波大学在学中に格闘技を始めた。
アマチュアでキャリアを積んだ後、2013年6月にプロデビュー。初期は黒星も目立ったが8戦目から8連勝。その間の2018年秋に、萩原が敗れている芦田崇宏に勝利しDEEPフェザー級のベルトを腰に巻いている。一昨年大晦日には、朝倉未来にKO負けを喫すも、その後に復活を遂げた。総合力で勝負に挑むオールラウンダーで戦績は12勝(9KO&一本)6敗。仕事を終えた後、夜遅くまでジムで汗を流す「いぶし銀」のサラリーマン戦士だ。

■「萩原優位」と見るが…

さて、試合展開はどうなるのか。
打撃力で勝るのは萩原。パンチをクリーンヒットさせれば一気に勝負を決めることができる。だが、スクランブル状態になり展開がグラウンドに持ち込まれたならば、ドミネーターが強さを発揮しよう。

見所は、萩原が序盤から果敢に打撃を繰り出し攻め切れるかどうか、グラウンドの展開になった場合、スタンドに戻す対処ができるか否かだ。
マッチメイクの意図を考えれば主役は萩原だが、イージーな闘いにはならないだろう。大方の予想は「萩原優位」。しかし、萩原はプラン通りに試合を進められないと行き詰る傾向にある。ドミネーターが総力戦に誘い込めたならば闘い模様は混沌としよう。
私の予想は勢いを買って「6-4で萩原優位」。それでも、展開次第で何が起こっても不思議ではない。勝負論のある闘い、館内にはRIZINナンバーシリーズ開幕戦に相応しい緊張感が醸されよう。

クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)、朝倉未来、斎藤裕(パラエストラ小岩)、そして王者の牛久絢太郎(K-Clann)…彼らを中心にヒートアップするRIZINフェザー級戦線。今年後半に『フェザー級GPトーナメント』が開催されれば、その熱はさらに増そう。そこに萩原京平は加わっていけるのか? それとも静かに闘志を燃やすドミネーターが一泡吹かせるのか?

「アンダーグラウンド・エンペラー」と「エリートサラリーマン」の異色対決。RIZINフェザー級トップ戦線に乗り込む権利をかけての闘いは見逃せない。

  • 上記の3試合を含め、『RIZIN.34』では全17試合(総合格闘技9試合、キックボクシング8試合)が行われる(提供:RIZIN FF)

文/近藤隆夫