高機能なアウトドアブランドのウェアを「街着」として使うのが珍しくないです。そして、その流れはウェアだけでなく靴にも当てはまる気がします。
スイスから生まれたランニングシューズの「On」。同社はさまざまなランナー向けにシューズを展開していますが、実は「街履き」用に使う人も多いようです。先ごろ、2022春夏モデルが発売されたので、担当者に話を伺ってきました。
小さい差異が履き心地を変える
マーケティングを担当する、亀関宏紀さんが最初に紹介してくれたのが「Cloud 5(クラウドファイブ)」(1万5,180円)です。このシューズは同社のアイコン的な位置付けで、顔となる代表的なモデル。
今回のアップデートでは、初めて製品名にナンバーが振られています。
「前モデルと違うのがミッドソールの厚みです。これでクッション性やサポート性が向上しています。もう一つが『つま先周りの幅』を広げたこと。ワイドモデルという程ではないですが、少しゆとりを持たせたので履いた時に、より快適性を維持できるようになっています」
筆者には、見た目でまったく分かりませんでしたが(笑)、前モデルと履き比べたところ、確かにフィット感が違いました。この小さい差異が、靴を選ぶ際には意外と大きいと思うのは筆者だけでしょうか?
ところで、ここでふと疑問が。この幅を広げたのは、いわゆる「アジアンフィット」? そこも聞いてみました。
「今回のアップデートは全世界共通で、アジア向けではありません。元々ランニングモデルの本シューズですが、その快適性から普段使いする人も多かったのです。そこでよりライフスタイルでの使い勝手を良くするためにアップデートしたといえます」
もちろん、ランニングシューズなので走ることにも使えます。ですが、ユーザーが「街履き」として愛用し、同社がその声に応えた、という位置付けだそうです。ちなみに、日本も含め、全世界でみてもこのモデルが一番「売れている」と話します。
なお、今回は「Cloud 5 Waterproof(クラウドファイブウォータープルーフ)」(1万7,380円)という完全防水・防風素材を使用したモデルも用意されています。
また、両モデルともアッパーのポリエステル素材の92%以上、シューズ全体の44%以上にリサイクル素材を使用しています。昨今は、多くのアパレルメーカーが「環境負荷の軽減」を踏まえたサステナブルを意識し、この辺りは「当たり前」になってきた印象ですね。
実は世代が違う!?
今回のアップデートですが、実は商品名にナンバーが振られています。これはOnとしては初めてのことなんです。ナイキのエアジョーダンなどで見慣れていますが、意外ですよね? ここでちょっとした裏事情を聞きました。
実はこのクラウドファイブ、厳密には第四世代のモデルだそう! 「『Cloud4』ではないのか?」という声が社内でも出たそうです。そりゃあ、そうでしょう。ところが……。
「『クラウドフォー』だと、『フォー=for』と勘違いする人がいるかもしれない、というのが社内向けの説明でした。そしてもう一つがアジアの一部では『4→死』という縁起の悪い数字だから、ということです(笑)」
まさかのホテルの部屋番号と同じ理由とは! 逆に言えば、それだけ、同社の製品が日本で支持されており、ユーザーの数を無視できない、という裏付けなのでしょうね。なお、このナンバリングは他のモデルも含め、今後も継続するそうです。
ランニングはブランドの「コア」
亀関さんに話を伺い、改めて思ったのは本モデルが「どんな時でも履ける」シューズだということです。ランニングシューズとして生まれた原点は残しつつ、その使いやすさと機能性がユーザーに支持されて街中でも活躍しているのでしょう。
実際、雨が降ると同社の社員は判で押したかのように「ウォータープルーフモデルを履いて出社する」そうですし、筆者も、取材で訪れたイベント会場などで、黒の同モデルを履いたスタッフさんたちを何度も見かけています。
そんな話をしたところ、「モデルさんが着用したカタログなどの写真もいいですが、やはり実際に街中や職場など、現場でOnのシューズを履くユーザーさんを見るのが一番嬉しいですね」と顔をほころばせる亀関さんでした。
なお、同社にとってランニングがブランドとして「コア」なのは変わらず、春夏モデルでも、ランニングウェアも幾つか登場します。
例えば、「軽さ」を求めたウインドブレーカーは、シースルーのポリエステル素材を使った機能性がポイント。そのうえで、キーカラーとして黄緑を使うなど春を意識した仕上がりとなっていました。
この後もトレイルランニングシューズからトレラン用ウェアなども控えているほか、4月には原宿のキャットストリートにアジア初の直営店「オン トーキョー(On Tokyo)」がオープン。
ニューヨークに次ぐ2つ目の店舗となるので、今後、さらに発信される情報が「濃くなり」そうな予感です。