タイトル保持者が4名に、女流新時代の到来

里見香奈女流名人に伊藤沙恵女流三段が挑戦する、第48期岡田美術館杯女流名人戦(主催:報知新聞社)五番勝負第4局が2月24日に関西将棋会館で行われました。結果は114手で伊藤女流三段が勝利、五番勝負のスコアを3勝1敗として女流名人のタイトルを奪取しました。伊藤新女流名人は初の女流タイトル獲得。今期が通算9度目のタイトル挑戦だったので、まさに悲願成就です。

本局は先手の里見女流名人が▲5六歩△3四歩▲5八飛とまず中飛車に振ります。以下の進行は相振り飛車とみえたのですが、その途中で里見女流名人が飛車を2筋に戻し、結果として対抗型の形となります。里見女流名人には入念な研究があったようで、序盤はほとんど時間を使わずに指し進めていきました。

■自然なと金づくりが疑問手に

戦いが始まってからしばらくは若干とはいえ先手ペースだったようです。59手目の局面で▲6三角成と角を切る踏み込みを見せていれば、それが維持できていたかもしれません。実戦の▲2三歩成も飛車取りの先手でと金を作る大きな手のようですが、対して△6二飛と回ったことで後手の飛車にカツが入り、ここからは徐々に後手がリードしていきます。70手目の△2二歩もこの飛車のラインを生かす受けの手筋で、先手の馬の働きを弱くしています。

里見女流名人は9筋からアヤをつけにいきますが、伊藤女流三段の指し手は的確でした。最後は前述の端攻めを逆用する形で伊藤女流三段が里見玉の玉頭を制圧し、ゲームセット。伊藤女流三段にとっては念願の初タイトル獲得です。

■涙の初タイトル

局後に行われた記者会見では、新女流名人が涙を見せつつお母さんや師匠に感謝を述べるシーンもありました。女流棋界はタイトル保持者が4名となり、新たな時代を迎えようとしています。失冠したとはいえ未だ四冠と、タイトルの半数を持つ里見女流四冠が第一人者であることは変わりないですが、続く西山朋佳女流二冠、加藤桃子清麗、伊藤新女流名人がどのような戦いを見せるか。そしてタイトルホルダーを追いかける、若手女流の台頭にも期待したいところです。

悲願の初タイトルを獲得した伊藤新女流名人(写真は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第4局のもの)
悲願の初タイトルを獲得した伊藤新女流名人(写真は第14期マイナビ女子オープン五番勝負第4局のもの)