2022年11月、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園に開業する「ジブリパーク」。27日、大村秀章愛知県知事やスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー、ジブリパーク監督・宮崎吾朗氏らがメディア発表会に登壇。それぞれがジブリパークにかける想いについて語った。
開園日は2022年11月1日
第1部では、大村知事と鈴木プロデューサーが登壇。これまでの経緯や開園日の発表、スタジオジブリが制作した愛知県観光動画「風になって、遊ぼう。」の発表が行われた。
まずジブリパーク計画の経緯について大村知事は、「2005年、自然の叡智をテーマにこの地で愛知万博を開催しました。その理念は『人・いきもの・地球への愛』でありました。この『愛』は、ジブリ作品にも一貫して流れてきたものでもあります。この公園で、ジブリ作品の世界観を表現することによって、愛知万博の理念と成果を将来にわたって継承していくことを目指し、このジブリパークを整備することとなりました」と説明。
そして、これまで未発表だった第1期開園日について、3つのエリア(「青春の丘」、「ジブリの大倉庫」、「どんどこ森」)を11月1日にオープンすると発表した。残る2つのエリア(「もののけの里」、「魔女の谷」)は、第1期からおおむね1年後に開園する。
「来場者のみなさまには、映画の主人公になったつもりで楽しんでいただける施設となっています」(大村知事)
鈴木P「宮崎駿は『吾郎にまかせる』と言い切った」
大村知事とともに登壇した鈴木プロデューサーは、「前回、僕がここへ来たのは2020年11月なんですが、実はその時、宮崎駿も一緒にお忍びで来ていたんです。宮崎駿という人は、人がなにかやろうという時、黙って見ていられないんですね。息子であろうがそれは気になります。だから簡単に言うと、“監視”に来たんです。それで、少しでも突っ込めるところがあったら、文句を言ってやろうと」と、宮崎駿監督とこの場所を訪れたときのことを語った。
「そんな感じで当日来たんですけど、まず圧倒されたのが、ここの広さ。そしてそれだけじゃなく、当日雨が降っていたんですが、その雨がなんとも言えない雰囲気の良さを出していたんです。雨の中を歩くことがまったく苦痛じゃなかった」(鈴木P)
息子の構想に文句を言うために訪れたという宮崎駿監督だが、鈴木プロデューサーも驚く言葉を口にしたという。
「そんな中で宮崎駿が、『決めた。これは吾郎に任せる。俺が口を出すことじゃない』と言い切ったんです。これはすべてに口を出す宮崎駿にとっては、非常に珍しいことです」(鈴木P)
それから1年と2カ月、再びこの地を訪れてどのように感じたのか。
「これまでは吾郎くんからの報告や『いわゆるテーマパークではない。公園であることから外れてはいけない。でも楽しめる場所にしたい』という彼の精神を聞きながらも、『絵に描いた餅じゃないのか。実現できるのかどうか』という気持ちも実はありました。しかし、今日実際に見た感想として、よかったです。手前味噌ですが、なんかよかったです」とパークの完成に大きな期待を寄せた。
普段、映画づくりなどにおいては、シナリオからすべて付き添って進めるという鈴木プロデューサー。しかし、ジブリパークについては宮崎吾郎監督にすべて一任しているという。
「知事に頼まれてやろうと決め、ジブリの中の誰がやるかと考えた時、思いついたのは1人、宮崎吾郎しかいなかった。結果、まだ完成してはいないんですが、今日一端を見て『この仕事を吾郎くんに任せてよかった』と思えました」(鈴木P)
現在工事中のパーク内部については、「ジブリの大倉庫に、ジブリ美術館の精神が生きている。ジブリ美術館の発展形をその中に見て、僕は手ごたえを感じた。この仕事を受けてよかったと本当に思えました。今日はっきり申し上げることができます。ぜひ期待をしてください」と絶賛。
最後に、「『吾郎に任せる』と言った宮崎駿は、ある日アトリエを訪ねると、こっそりジブリパークの自分の構想を考えていたんです。本当に性格が悪いですね(笑)」と後日談を語った。
宮崎監督「公園の隙間をジブリが埋めていくように」
第2部にはジブリパークの監督である宮崎吾郎氏と岡村徹也プロデューサーが登壇。
宮崎監督は、鈴木プロデューサーからこのジブリパークの監督を頼まれた時の心境について、「2013年9月に宮崎駿監督が長編引退宣言をして、2014年末にスタジオジブリが解散となったタイミングで、仕事を必要としていたんですよね」
と、ぶっちゃけトークを展開しながらも、「ジブリ作品を将来にわたって残していくため、なにか作りたいという話はずっとしていました」と話す。
「実は愛知県さんから声掛けをいただく以前にも、テーマパークの話をいただいたことは何度かありました。しかしいろいろとご提案をいただく中で、人工的なファンタジーのテーマパークが、果たしてジブリ作品に合うのか。現実世界をテーマにした作品も多い中で、例えば『耳をすませば』だったら聖蹟桜ヶ丘の街をそのまま再現してしまうのか。それはナンセンスだと思ったんです」(宮崎監督)
そんな宮崎監督の想いと、愛・地球博公園を利用する今回の構想がマッチしたという。
「地元出身の岡村さんの子どもの頃の話を聞くとよく分かるんですが、ここは万博の以前からずっと公園として親しまれてきた場所です。僕たちがジブリパークを作ることで、地元の人の記憶が壊れるようなことがないよう、公園の中で未利用の場所や利用しなくなった場所を活用することで、ジブリが隙間を埋めていけるといいなと思っています」と構想に込めた想いを語った。
(c)2022 Studio Ghibli