長期化する新型コロナなどの影響により、仕事や生活でストレスや悩むなどを感じている人が多いようです。

そこで、2021年12月に『丁寧道 ストレスから自由になれる最高メソッド』(祥伝社)を上梓し、日々楽しく幸福感を得ながら、仕事やプライベートを充実させている書道家の武田双雲さんに話を伺いました。

後編の今回のテーマは、「逆境を乗り越える方法」や「やりたいコトを引き寄せるコツ」についてです。

逆境を通じて、新たな世界が広がった

――前回の記事でも話されていましたが、双雲さんも昔は悩むことも多かったようですね。

双雲さん: そうですね。会社員の頃は、通勤電車でよく体調を崩していましたし、書道家になってからも、病気になったり、厳しく批判されたりして、一時期は書道家を辞めようかと思ったこともありました。

――今の双雲さんからは想像もつかないですが……。

双雲さん: 書道が嫌だというよりも、怖かったんです。批判は、何を言われるか分からないし、病気は原因不明だし。結局、病名は胆のう炎と分かったのですが、しばらくはずっと悩んでいましたね。

――その後、どうされたんですか?

双雲さん: 仕事量をどんどん減らして、暇をつくっていきました。それで空いた時間を使って、今までできていなかったことをやりましたね。例えば、海外で個展を開いたり、病気になった時にはオーガニックレストランをオープンしたり。

実は、それまで飛行機恐怖症だったので、海外に行ったことがなかったんですが、時間もできたし、オファーも来るので、5年かけて恐怖症を克服し、積極的に海外にも飛び出するようにしました。すると、いろんな出会いや刺激があり、いつの間にはアメリカに移住しようと考えるまでなりました(笑)。

――逆境を通じて、世界が広がっている感じですね。

双雲さん: そうかもしれません。トラウマや恐怖体験など自分が萎縮してしまう時期が何度かあるのですが、その度にこれまでとは全く違うことにチャレンジしました。意外とその方が、新たな経験ができて、楽しいんですよね。それに飛行機恐怖症が克服できたりして、いい結果につながっていると思います。

それこそ、「お前は書道家じゃない。ただの大道芸人だ」と、非難された時などは、その言葉がキッカケで本来の書道だけでなく、カラフルな色を使った作品も創るようになりました。

最初は半信半疑だったんですが、やってみると喜んでくれる人が多くて、驚いています(笑)。

一つに執着せずに、思い切って新たな世界に飛び込む

――今の作風になったのは、そういう経緯があったんですね。でも長年やってきたスタイルを変えるのは、非常に勇気がいることだと思いますが……。

双雲さん: それは、「人と勝負したくない」という僕のポリシーからだと思います。批判に対して真っ向勝負を挑んでも、喧嘩になるのが見えていますし、勝負にこだわって勝ったところで調子に乗って、嫌なやつになりそうだし。どちらにしても、人と戦うのは、あまり好きになれくて。

それなら、批判されたことを素直に受け止め、「書道以外のことをやればいい」という発想で、今のスタイルにたどり着きました。

最近もClubhouseにもハマったんですけど、未知の世界は、みんなゼロからスタートするので、みんなで成長している感じがして、とても手応えがあります。こうして、いろんな世界に触れて感じるのは、一つの狭い世界で生きている方が、行き詰まった時につらいように思います。きっかけがあれば、思い切って新たな世界に飛び込んでみることをオススメですね。

感謝することで、敵がいなくなる

――新たな世界に飛び込む以外に、双雲さんが実践されていることはありますか?

双雲さん: 「感謝」ですかね。今、うまくいっているのは、周りに「感謝」をしていることも要因の1つだと思います。

胆のう炎を発症した頃に、「感謝」の効用に気付いたんです。「感謝」をして嫌な顔をする人はいないし、疲れないし、お金もかからない。それに副作用もないじゃないですか。最強だなと思ったんです。そのことに気付いてから、いろんなものに感謝をするようになりました。

――言われてみれば、そうですね。

双雲さん: それに不思議なことに、「ありがとう」という言葉を口にすると、相手のやってくれた理由などが見えてきます。

例えば、「ライターさんに今回の取材、どうもありがとうございます」と手を合わせて感謝をすれば、頭の中に「話を聞いてもらった」「書籍を紹介してもらった」「新たな気付きを与えてもらった」など、数々の理由が見えてくるので、心から相手にも感謝を伝えられます。実はこれって、「丁寧道」でもあるんです。

「丁寧道」を行うことで、なりたい現実が叶えられる

――「感謝」が「丁寧導」につながってくることで、効用はあるのでしょうか?

双雲さん: 本でも紹介していますが、丁寧道によって、あなたのなりたい現実を作ることができます。

人間の体は、さまざまな原子から構成されていますよね。その原子には質量があるためエネルギーを秘めています。そして、このエネルギーは、振動による波の形で人などに伝播していきます。そして、あなたの発した波動(エネルギー)と共鳴するエネルギーが引き寄せられて、あなたの現実を形作っているのです。

そこで大切になるのが、丁寧な所作なのです。毎日イライラしている人が「感謝する」と言っても、なかなかできませんよね。だからこそ、所作を変える。神社に参って、手を合わせて、祈っている時は、イライラする気持ちがなぜか消えているはずです。

そんなふうにして、日常の生活に丁寧な所作(丁寧道)を落とし込んでいきます。このように行動を変えることで、認知や気持ちも変わっていくんだと思います。

丁寧道にも通ずる感謝することから日常を変えてみると、なりたい現実が近づいてきます。

取材協力:武田双雲(たけだ・そううん)

1975年熊本生まれ。就職から約3年後に書道家として独立。独自の創作活動で注目を集め、映画やNHK大河ドラマをはじめ、数多くの題字、ロゴを手がける。近年は、文化庁の文化交流使への任命、オーガニック食材を使った店舗のプロデュース、現代アーティストとしての創作や個展開催など、活動の幅をさらに広げている。