東武鉄道は24日、復元作業を進めている蒸気機関車C11形123号機を公開し、組み上がった蒸気機関車に初めて火入れを行う「火入れ式」を執り行った。同機の復元により、東武鉄道の蒸気機関車は同一形式による3機体制となる。

  • 東武鉄道が蒸気機関車C11形123号機の車体をお披露目

復元された蒸気機関車は、1947(昭和22)年に滋賀県の江若鉄道が発注し、日本車輌製造にて製造された。江若鉄道で客車を牽引した後、北海道へ渡り、1957(昭和32)年から雄別炭礦鉄道、1970(昭和45)年から釧路開発埠頭で貨物列車を牽引。1975(昭和50)年に廃車となり、日本鉄道保存協会にて静態保存されていたという。

この蒸気機関車を東武博物館が譲り受け、動態保存および技術力の向上を目的とした復元に着手。2018年11月に北海道江別市から東武鉄道の南栗橋車両管区SL検修庫へ輸送され、2019年1月から復元作業を開始した。当初は2020年冬の完成をめざしていたが、修繕や新規に部品を作製する箇所が想定より多く、加えて新型コロナウイルス感染症の影響もあり、復元行程が遅れたことから2021年冬に変更。今年7月にボイラ載せ、11月に車体降ろしを行い、組み上がった車体のお披露目と「火入れ式」の日を迎えることとなった。

2018年、南栗橋到着時の同機は「C111」のプレートを掲げていたが、2020年11月に車両番号をC11形123号機と発表。埃が積もり、錆が浮き出るなど、傷みの激しかった車体も、復元作業を経て新品同然に生まれ変わった。新たに「C11 123」のプレートを掲出し、「SL大樹」のヘッドマークも取り付けた。車体を組み上げた状態でお披露目となったが、まだ完成しておらず、今後も復元作業が続くとのこと。走行試験などを経て、2022年春の運行開始をめざすと説明があった。

  • C11形123号機のお披露目に続き、「火入れ式」が執り行われた

  • 東武鉄道の根津社長による「点火之儀」も。「火入れ式」の後、出席者らによる記念撮影が行われた

車体お披露目に続き、神事として蒸気機関車の火室に点火し、石炭を投げ入れ、今後の安全等を祈願する「火入れ式」が執り行われた。東武鉄道取締役社長、根津嘉澄氏による「点火之儀」、下今市機関区長による「投炭之儀」の後、根津社長が挨拶。「C11形123号機の復元完了で、当社の保有するSLは3両となり、より安定したSL運行ができるだけでなく、3重連運転など複数機体制を活用した運行形態も可能になります。同一形式の3重連運転が実現すれば、昭和47(1972)年まで国鉄伯備線で行われたD51形の3重連運転以来、約50年ぶりと聞いています」と述べた。

現在、日光・鬼怒川エリアで観光列車「SL大樹」を牽引する蒸気機関車はC11形207号機とC11形325号機の2機。C11形123号機が加わり、3機体制となることで、中間検査や全般検査といった長期検査時でも2運用運転が可能になり、年間を通じて安定輸送を提供できる。将来的には、複数機体制のポテンシャルをフル活用した他線区での運転も検討するとのこと。「日光・鬼怒川エリア以外でも、SLを使った観光振興を考えています。中でも会津方面への乗入れについて、引き続き努力していく所存です」と根津社長は語った。

  • 蒸気機関車C11形123号機の外観