国土交通省の鉄道局総務課危機管理室は、10月31日に発生した京王線車内傷害事件以降の列車内における一連の事件を踏まえ、とりまとめた対策を発表した。この対策を順次実施し、引き続き鉄道のセキュリティ確保に取り組むとしている。
国土交通省は今年8月に小田急線車内傷害事件が発生したことを受け、JR各社や大手民鉄などの鉄道事業者と意見交換を行い、9月24日に今後の対策をとりまとめ、順次実施してきた。その後、10月31日の京王線車内傷害事件をはじめ、乗客の安全を脅かす事件が相次いで発生したことから、新たに浮かび上がった課題を踏まえ、鉄道事業者と意見交換の上、改めて対策をとりまとめた。
対策としては、乗客の安全な避難誘導の徹底、各種非常用設備の表示の共通化、利用者への協力呼びかけ、車内の防犯関係設備の充実、手荷物検査の実施に関する環境整備を挙げている。
乗客の安全な避難誘導を徹底させるため、複数の非常通報装置のボタンが押され、かつ内容が確認できない場合は、緊急事態と認識して安全を確保するため防護無線の発報などにより他の列車の停止を図るとともに、当該列車についても速やかに適切な箇所に停止させることを基本とする。駅停車時にホームドアと列車のドアがずれている場合の対応として、ホームドアと列車のドアの双方を開け、乗客を安全に誘導・救出することを基本とする。
また、非常通報装置に加え、車内の非常用ドアコックやホームドアの取扱い装置についても、路線の特性や装置の機能に応じ、ピクトグラムも活用した表示方法の共通化について検討・実施する。「乗車時に非常通報装置の位置を確認すること」「非常時には躊躇なく非常通報装置のボタンを押すこと」の協力も呼びかける
あわせて車両の新造時や大規模改修時における車内防犯カメラの設置(録画機能のみであるものを含む)、映像や音声により車内の状況を速やかに把握できる方法など(非常通報装置の機能向上など)について、費用面も考慮しつつ、必要な基準の見直しや費用負担のあり方も含め検討を開始するとしている。
手荷物検査に関する環境整備も実施。7月に改正された鉄道運輸規程にもとづき、危険物の持ち込みを防ぐため、必要に応じて手荷物検査を実施することについて旅客などに対し理解と協力を求めるとともに、車内への持込みが禁止されている物品についてのわかりやすい周知を図る。不審者を発見した場合の対処、検査のノウハウの共有、訓練の実施などについて、警察とも連携を図るとのこと。