近年、世界的にノンアルコール飲料を好む人が増えている。健康などを意識してあえて飲まないことを選ぶことを表す「ソバーキュリアス」という言葉も生まれてきた。日本でもコロナ下でさまざまなノンアルコール飲料が登場している。
そこで今回はノンアルコールワイン、それもスパークリングに限定して、カジュアルな缶タイプから本格的なフルボトルまでを飲み比べてみた。なお、厳密にはノンアルコールワインはアルコール0.00%と表記できる0.005%未満のものを指すが、今回はアルコール度数が0.005%~1%未満のワインテイスト飲料も含めている。
また試飲後に気づいたのだが、フルボトル3本は日本における取扱会社こそ違うものの、すべてフランスの同じ生産者だった。とはいえ商品によってブドウの種類や製法が違うため、味わいはそれぞれ個性豊か。早速価格順に紹介していこう。
アシード「スパークリング ワインテイスト」
まずはカジュアルに飲める缶タイプから。アシードは2021年9月にアルコール0.00%のノンアルコール飲料「スパークリング ワインテイスト シャルドネ」「スパークリング ワインテイスト カベルネ・ソーヴィニヨン」を発売した。
シャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンは、それぞれ赤ワイン用、白ワイン用のブドウ品種としておなじみ。原料の3%にその果汁を使っている。
飲んでみると炭酸の刺激が心地よく、シャルドネ(白)は、爽やかな酸味とフルーティな甘さが調和したコクのある美味しさ。カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)は、見た目も味わいも濃厚で、ほどよい酸味がある。カジュアルな味と見た目なので、個人的には天気のいい週末の昼下がりに缶のままグビグビ飲みたい。
「いずれもノンアルコールでありながら本格的なスパークリングワインの風味と飲みごたえにこだわった商品です」とアシードホールディングス 経営企画グループの田中咲さん。ジュース感覚で購入できる手頃な値段も嬉しい。
<アシード「スパークリングワインテイスト」のポイント>
・ワインに使うブドウ品種の果汁を使用
・カジュアルに飲める缶タイプ
・価格がリーズナブル
メルシャン「メルシャンスパークリング アルコールゼロ」
続いては2020年2月発売、メルシャンの「メルシャンスパークリング アルコールゼロ」。こちらもアルコール度数0.00%のノンアルコール飲料。ハーフボトル、かつスクリューキャップなので保管も便利だ。
白は果実の甘さや爽やかさを感じられ、フルーティだが後味はすっきり。一方ロゼはイチゴのような色で、ベリー感のある味や香りがチャーミング。いずれも繊細な泡や味、パッケージの華やかさなどから、ほどよい特別感が感じられる。
「特許登録済みの2つの技術で、ワインのようなボディ感を持ちながら後味に甘さが残らないキレのある爽やかな飲み口に仕上げました」とメルシャン マーケティング部の新井香子さん。
1つめの技術とは、ワインらしさを感じる柑橘香成分を多く含む特殊ブドウ果汁の開発。2つめの技術は果汁のもつ香り成分を強化し、味にふくらみや複雑さをあたえる製法で、これにより口の中で開く香りが戻り香となり、ワインのような風味を生んでいるそう。
客層は30~40代の女性の比率が高く、週末に多く購入される傾向とのこと。なお同社では2021年6月にワインカクテル“サングリア”のノンアルコール飲料「MOCK Bar(モクバル)」も発売しており、こちらも非常に好評だという。
<メルシャン「メルシャンスパークリング アルコールゼロ」のポイント>
・2つの特許技術でワインらしさを表現
・特別感のある華やかな味とパッケージ
・スクリューキャップで保管がラク
モトックス「ピエール・ゼロ ロゼ・スパークリング」
ここからは本格的なフランス産のフルボトル3本を紹介しよう。冒頭に書いたように生産者は共通で、南フランスのドメーヌ・ピエール・シャヴァン。ノンアルコールや低アルコールのワインの名手だ。
まずは華やかなロゼ。酒類専門商社のモトックスが2021年6月より輸入販売している「ピエール・ゼロ ロゼ・スパークリング」。アルコール度数0.1%未満のワインテイスト飲料だ。
飲んでみると、ロゼらしいチェリーのような風味がありつつも、ドライな後味でさっぱり飲める。泡もワインによく溶け込んでおり、エレガントな印象。酸と果実味のバランスがよく、ひと口、また一口とスルスル飲めてしまう。
「スパークリングの持つ泡の口内をリフレッシュさせる力と、白と赤の良い部分を併せ持つ”ロゼ”であることにより、旬のお野菜、魚介類、中華料理など幅広いお料理とのマッチングが期待できます」とモトックス マーケティング部の竹下広樹さん。食事との相性の良さが評価され、コロナ禍のレストランで採用が加速したそうだ。
ちなみにこの商品は、一度ワインとして造ったものからアルコール分を取り除く「脱アルコール法」のなかでも、「スピニング・コーン・カラム」という香りの成分を損ないにくい方法を採用しているのが特徴。分離された香気成分をいったん水蒸気で熱して、液体から気体にして回収し、その後冷却して取り出しているそうだ。
「ピエール・ゼロ」シリーズはほかに、白・赤・白のスパークリングも展開。過去には白と赤がノーベル賞晩餐会のドリンクにも選ばれているほか、白のスパークリングは日本のミシュラン星付きレストランでも採用されている。
<モトックス「ピエール・ゼロ ロゼ・スパークリング」のポイント>
・食事に合わせやすいドライな辛口
・香りを残す「スピニング・コーン・カラム」製法を採用
・ノーベル賞晩餐会にも採用されたシリーズ
白鶴酒造「レ・ココット シャルドネ」
白鶴酒造では2020年11月から「レ・ココット シャルドネ」を販売。シャルドネ100%のワインからアルコールを除去し、シャルドネジュースをブレンドしたアルコール度数0.1%未満のワインテイスト飲料だ。ココットはフランス語で折り紙の意味。ラベルには蝶の折り紙のモチーフが描かれ、おしゃれな雰囲気だ。
泡はそこまで強くないが繊細。リンゴや桃のような香りがあり、飲むとしっかりした酸味を感じる。フレッシュながら芳醇なコクも感じるバランスのとれた味は、どんな料理にも合わせられそう。万能な辛口の1本だ。
白鶴酒造は日本酒メーカーだが、「1977年からワインの輸入販売をしています。以前よりノンアルコールワインを探していたところ、素晴らしい味わいの商品に出会いました」と白鶴酒造マーケティング本部の齋藤廣太さん。2021年には同じシリーズのロゼ「レ・ココット ロゼ」も発売している。
<白鶴酒造「レ・ココット シャルドネ」のポイント>
・シャルドネ100%ドライな辛口
・幅広い料理と相性がよい万能な1本
・フランス産らしいおしゃれなパッケージ
エノテカ「ジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネ」
ワイン専門商社エノテカでは、なんと3年もの月日をかけて、ドメーヌ・ピエール・シャヴァンと新商品を共同開発。2021年7月に「ジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネ」として発売した。アルコール度数0.1%未満のワインテイスト飲料だ。
ユニークなのがその製法。一般的な脱アルコール法ではなく、低温で管理することでそもそも発酵が始まらないようにする「非発酵法」を採用している。原材料にはオーガニック栽培のシャルドネを使用しているのもこだわり。保存料・亜硫酸塩・化学製品は不使用だ。
「ブドウを破砕後、ジュースに果皮や種を漬け込むことでシャルドネの香りを最大限引き出しています。またシャルドネ由来の天然酵母や高品質なオークを使用することで、発酵工程を行わないにも関わらず、限りなくシャンパーニュを意識した香りと味わいを実現しました」とエノテカ 商品部 広報室の佐野昭子さん。
驚いたのは泡。発酵していないので炭酸を後から注入しているが、きめ細かでクリーミーな泡が長く立ち上り、まさにシャンパンの趣。青リンゴや洋ナシのような爽やかな香りに加えて、白い花のようなフローラルさ、木樽のようなニュアンスも。柑橘を思わせるフレッシュな酸味や酵母の旨みがあり、複雑ながらバランスの良い1本だ。
発売に先駆け、国際的なワイン専門誌が主催するコンテスト「ジルベール・エ・ガイヤール インターナショナル・チャレンジ」で金賞を受賞している。
<エノテカ「ジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネ」のポイント>
・シャンパーニュ風味を目指した本格派
・オーガニックなど原料にこだわり
・国際コンテストで金賞の高評価
まもなくホリデーシーズン。飲めない人はもちろん、飲める人も、この冬は選択肢のひとつにノンアルコールスパークリングワインを加えてみては?