巷で人気のスパイスカレー。「スパイスの入手や扱いが難しそうだし、自分で作るのはハードルが高そう」なんて思ったりしていませんか? 実は、スーパーで手に入るようなスパイスや具材でも十分美味しいスパイスカレーは作れます。

  • 「基本スパイス」3つでチキンを激旨にする! カレーの深み・奥行きを出す"南場流アレンジ術"とは?

そこで、毎日カレーを食べ続けること15年目、カレーの料理教室にまで通うようになった南場四呂右さんに、シンプルながらスパイスの魅力を感じるレシピを教えてもらいました。

■身近な材料で、体験版・南場流スパイスカレーの基本に挑戦!

まずは気軽にスパイス料理が試せて手軽に作れる軽々レシピで、基本的なスパイスカレー作りを体験してみましょう。体験版なので分量は目安で。ちょっとくらい増減しても大丈夫。切り方もざっくりにしておきましょう。ただ、塩だけは入れ過ぎると引き返せませんので慎重に。後半で味わいに奥行きや広がりを出すためのアレンジ方法もご紹介します。 さあ、いざ!

●材料:分量(2~3人分)

●油:大さじ3
●玉ねぎ:250g程度(大きさによって1~2個)粗みじん切り
●にんにく:7~10g程度(大きさによって2~3片)すりおろしorみじん切り 小さじ1程度
●しょうが:7~10g程度(大きさによって2~3片)すりおろしorみじん切り 小さじ1程度
●塩:小さじ1
●パウダースパイス
ターメリック:小さじ1/2
コリアンダー:小さじ2
レッドチリ:小さじ1/2(七味唐辛子、一味唐辛子でもOK。辛いのは苦手という方はパプリカパウダーに変更。分量は同じ)
●トマト缶:100g(カットトマト缶、ホールトマト缶どちらでもOK)
●鶏もも肉:250g程度(だいたい1枚)一口大 ●水:200ml程度

  • 「パウダースパイスを3種類も用意するのが面倒という方は、体験版としては市販のカレー粉を使っちゃうのもアリです」(南場さん)

●作り方

【1】フライパンで油を熱し、玉ねぎ投入。火加減は、【7】で煮込む前まではずっと中火でOKです。投入時に油がハネますが、こわかったら早めに入れちゃいましょう。最初3分くらいは放置。水分を飛ばすイメージで、少しくらい焦げても大丈夫です。まわりが茶色くなってきたら時々混ぜます。焦げつくのが心配だったら、ちょっとずつ水(分量外)を足し、混ぜる頻度を増やします。ここでの炒め時間は10分くらい。

  • 油の量を多いと感じるとは思いますが、多めの方が玉ねぎを炒める段階で焦げ焦げになるのを防げます。市販のカレールウを使うよりはライトに仕上がるはずです。

【2】にんにく&しょうがと水(分量外で100ml程度)投入。材料投入の度に、水を足して調整します。投入の際に激しくハネるのがこわかったら、いったんトロ火にし、投入してから中火に戻せばOK。水分を飛ばすイメージで全体をよく混ぜます。いい香りが立ってきてやや落ち着くまで2~3分。

  • にんにく、しょうがのチューブはめっちゃ便利でお手軽ですが、個人的には生の方が仕上がりの味がいいと思います。とはいえ、体験版ですので、チューブを使うことで挑戦する意欲が上がるのであればチューブにしましょう。

【3】塩&パウダースパイスと水(分量外で100ml程度)投入。これまた水分を飛ばすイメージで全体をよく混ぜます。いい香りが立ってきてやや落ち着くまで2~3分。

  • ここでスパイスにしっかり火を入れないと、苦みやえぐみが残ってしまうので要注意。油が100度以上になることでスパイスに火が通り、香りが最大限に引き出されます。

【4】トマト缶と水(分量外で100ml程度)投入。またまた水分を飛ばすイメージで全体をよく混ぜます。ペースト感が出てくるまで2~3分。フライパンにちょっと焦げついている部分があったら、トマトの酸でキレイに回収するチャンスです。

  • トマト缶の代わりに生のトマトでももちろん大丈夫。その場合はざく切りにして150g~200gくらい入れましょう。水分が多いので、生トマト投入後は加熱時間をちょっと長くします。

【5】鶏もも肉投入。これまで作ってきたペーストと肉をよく混ぜます。鶏もも肉のまわりが全体的に白くなるまで2~3分。

  • 鶏もも肉の皮が苦手な人は皮を取り除いて使いましょう。

【6】肉がひたひたになるくらいまでの分量の水(フライパンの形状等にもよるけど200ml程度)投入。混ぜながら煮立つまで2~3分。

【7】煮立ったら弱火にして、途中で何度か混ぜながら煮ます。ポコポコ煮立つくらいの弱火で10分くらい煮ていると表面に分離した油が浮いてきます。それが完成の目印。

  • 「分離した油って何?」と思う人もいるかもしれませんが、表面に透明な水たまりができる感じです。実物を眺めていれば「あ、出てきた」とわかると思います。

【8】火を止めて味見をし、適宜お好みで塩(分量外)を加えます。この時に「スパイス感が足りない?」と思っても、きっと塩が足りないだけ。スパイスは足さない方が無難です。塩をほんの少し足してよく混ぜて味見……をくり返すと、「ここか!」っていうバランスに出会えるはずです。

  • スパイスカレー完成! 白米に合います。

■ちょっとしたアレンジで奥行きのある味に! スパイスカレー沼へようこそ!

上記はスパイスカレー自作体験のための基本的なレシピです。玉ねぎとトマトと鶏肉の味わいをスパイスの香りでブーストさせておいしく食べるイメージですが、味わいの深みや広がり、奥行きという点では少々物足りないかもしれません。お好みで次のようなアレンジを組み合わせることで、楽しみながら自分らしいスパイスカレーを探求していきましょう。

●スパイスアレンジ

◎「コリアンダーパウダー小さじ2」を「クミンパウダー小さじ2」に置き換えることで香りの違いが感じられます。もしくは「クミンパウダー小さじ1&コリアンダーパウダー小さじ1」に置き換えると、より複合的で豊かな香りのカレーになります。

◎「レッドチリ小さじ1/2」を「レッドチリ小さじ1/4&ブラックペッパー小さじ1/4」に置き換えると辛さに深みが出ます。

◎【3】でカルダモンパウダーを小さじ1/2くらい足すとオシャレカフェ風 (個人的な見解です)になります。

◎盛り付けの最後に少量のスパイスをふりかけることでお手軽にアクセントをつけることができます。ただし、どんなスパイスでもOKとは言えません。乾燥バジル or 粗挽きブラックペッパーだったら、いい感じになると思います。

◎白飯ではなく黄色いターメリックライスで視覚的に演出。米2合にターメリックパウダーを小さじ1/4程度と塩をひとつまみ入れて炊けば完成。ターメリックは入れ過ぎると独特の香りが立ち過ぎてしまうので、けっこう少なめで大丈夫です。炊く時の水加減はいつも通りでいいですが、硬めのご飯が好きな方は少し水を減らしても問題ないと思います。

◎スパイスをじっくり油で熱することで、油に香りを移す「テンパリング」を活用。パウダースパイスだと焦げてしまいかねませんが、ホールスパイスなら難易度が下がります。カレー作りの最初の段階でテンパリングをし、その油でタマネギ等々を炒め始めることで、奥行きのある香りづけが可能になります。

クミン、チリ、シナモン、カルダモン、クローブなどは最初の段階でのテンパリングに適していると思います。炒めたり煮込んだりしていくと、香りは飛んだり奥まってしまったりしますから、調理の最後の段階でテンパリングする方法もあります。この場合は別のフライパンでテンパリングし、提供直前にカレーに追加。ジュワーっとはねますので注意しつつ、そのジュワーも楽しんでください。

●かくし味的追加アレンジ

◎【4】の「トマト缶:100g」を「トマト缶50g、プレーンヨーグルト50g」に置き換えると酸味が豊かになるのとミルク感が加わります。

◎【6】で水と同時にかつお節を入れると出汁感が複雑になって広がります。

●こってりアレンジ

◎【6】で水と同時にバターや生クリームを足すとこってりします。ただし【7】で油が分離しづらくなる可能性があります。

●東南アジア風アレンジ

◎【6】で水ではなくココナッツミルクを入れます。

◎【6】で水と同時にナンプラーをちょろっと入れます。ナンプラー以外にもイカの塩辛や柚子胡椒もアリ。組み合わせるのもアリです。このアレンジの場合は、【3】で塩を少なめにしておいた方がいいかも。

●オシャレアレンジ

◎【6】で水と野菜フルーツミックスジュース(無加糖のもの)を半々くらいにするとフルーティーになります。

●野菜追加アレンジ

◎【4】と【5】の間に野菜を入れるのもアリです。お馴染みのニンジン、ジャガイモのほか、ナスとかブロッコリーとかキノコ類とかもOK。鶏肉の出汁感以外に野菜の風味も加わります。火の入り具合が難しかったら、素揚げしてから入れるのもいいでしょう。

  • 「スパイスカレーは基本的には食材と油と塩とスパイスと水だけで作ることができます。それぞれの切り方とか分量とか順番とか温度とか時間とかで、仕上がり(香りや食感や味)が決まる。特にスパイスカレーは、使う食材とスパイスの配合(種類や比率)の関係もポイントのひとつです」 (南場さん)