矢野経済研究所は10月7日、テレワーク関連業務アプリケーション市場に関する調査結果を発表した。これによると、2020年度の国内テレワーク関連業務アプリケーション市場は2019年度と比べて64.6%増の1018億8200万円と推測され、2022年度から2025年度まで年平均成長率(CAGR) 11.2%で成長を続け、2025年度には2085億3500万円に達するという。
同調査におけるテレワーク関連アプリケーション市場とは、在宅勤務やサテライトオフィス勤務、モバイルワーク、ワーケーションなどのテレワークの実施にあたり必要となるITソリューションである、Web会議システム、ビジネスチャットツール、法人向けクラウドストレージ、ワークフローシステム、電子契約サービス、仮想オフィスツール、遠隔健康管理ソリューションの7分野を対象とし、事業者売上高ベースで算出したもの。テレワーク関連業務アプリケーションの導入目的には、テレワーク実施環境の整備に加え、コスト削減や業務の効率化やペーパーレス化などが想定される。
2020年に入り新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中で、感染防止の観点から政府がテレワークを推奨し、テレワークを実施する企業が大きく増加してテレワーク実施環境の整備が進んだことが、2020年度の市場拡大を後押ししたと同社は考える。
仮想オフィスツールは、オンライン上でリアルタイムに双方向のコミュニケーションを行う仕組みを提供する製品であり、インターネット上の仮想空間に擬似的なオフィスを構築する仮想オフィス機能やチャット機能(音声・映像・テキスト)、画面共有機能、入退室ログ機能などを備え、市場は2020年度に本格的に立ち上がったという。同市場規模は、2021年度に2020年度と比べて700.0%増の20億円になると同社は予測する。
テレワークを一定期間実施する中で、コミュニケーションが不足し、孤独感や疎外感を感じる従業員の増加や、組織の一体感の喪失が課題となる企業が増えているとのこと。仮想オフィスツールでは実際のオフィスに近い環境をオンラインで構築できるため、コミュニケーションに課題感を持つユーザー企業を中心に導入が進むと共に新規参入企業も増加しており、市場は活況を見せているとのことだ。2022年度以降も利用企業社数やユーザー数は好調に推移し、2025年度の同市場は180億円に達すると同社は予測する。
同調査では今後のテレワークの見通しとして、コロナ禍の終息または行動制限の緩和により出社中心の体制に回帰する動きが一定程度発生するものの、ワーカーが通勤時間の削減によるワークライフバランスの向上などテレワークのメリットを実感したことや、ユーザー企業がBCP(事業継続)対策や魅力ある職場づくりなどのテレワーク実施の必要性を認識したことで、2025年度頃には2020年度の時点と同程度にテレワークが普及し定着するとの見方に立ち、市場を予測している。
2021年度はコロナ禍の終息が見通せない中で、テレワーク実施環境の構築を目的とした需要が継続すると同社はみており、2021年度のテレワーク関連業務アプリケーション市場規模は、2020年度と比べて30.2%増の1327億円になると予測した。