自己都合で退職する場合、失業保険はきちんともらえるのか心配になりますよね。実際、離職前に通算12カ月以上雇用保険に加入してれば、失業保険を受け取ることができます。
本記事では、自己都合退職の際の失業保険の金額や申請方法、必要な書類などを解説します。
失業保険とは
失業保険とは会社を退職する際に一定の要件を満たしていれば失業保険から受け取れる失業手当のことです。公的保険制度の一種で、正式には「雇用保険」と呼びます。失業中に生活費の不安を減らしながら新しい仕事を探せるよう整備された手当です。
会社の退職には「自己都合退職」と「会社都合退職」がありますが、退職の種類によって失業保険の受け取りには大きく違いがあります。
会社都合退職とは
会社都合退職とは会社側に何らかの原因・理由があり、結果としてそこで働いていた人が退職に至ってしまうことを指します。
- 会社の業績悪化に伴うリストラ
- 事業所や工場の廃止や閉鎖による解雇
これらが会社都合退職の具体例です。
自己都合退職とは
一方の自己都合退職とは、読んで字のごとく「自分の都合による退職」を指す言葉です。
- 転職
- 結婚
- 介護
- 病気
これらが自己都合退職の代表的な例です。
会社都合退職と自己都合退職では、失業保険を受けられる条件が大きく異なります。ここからは、自己都合退職における失業手当はどのくらいの期間にわたり、いくらもらえるのかなどをみていきましょう。
失業手当(保険)をもらえる条件
失業手当は、すべての人が受け取れるものではありません。受け取るには一定の基準を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入していた時期が12カ月以上ある
- 失業状態にあること
- 再就職する意思があること
上記の基準を満たしていれば失業手当を受け取れます。
ただし、「退職後すぐに転職をすることが決まっている」「病気や妊娠・出産などですぐに就職できない」といったケースでは手当を受け取れません。
失業手当(保険)はいつから受け取れる?
自己都合退職をして上記の基準を満たせば失業手当を受け取れます。ただし、失業してから7日間は待機期間があるうえ、最低2カ月の給付制限期間があるため、失業直後にもらえるわけではありません。
なお、この給付制限期間があるのは「正当な理由」がない自己都合退職のみです。「仕事を全うできないけがを負った」「急に親の介護が必要となり、家庭事情が一変した」といった退職がやむをえないと客観的に認められる理由がある自己都合退職のケースでは、給付制限がありません。
失業手当(保険)の金額はいくら?
失業手当の受け取り金額には一定の基準がありますが、自己都合退職のケースでは一日あたり退職前の約5割~8割程度が支給されます。
具体的な金額は、退職前の半年間の総額や退職時期の年齢にもよります。退職前の月給が30万円だったと仮定し、年齢別に具体的にいくらもらえるのかをまとめてみました。
【月給30万円のケース】
退職日の年齢 | 一日あたりの支給額 | 1カ月あたりの支給額 |
---|---|---|
29歳以下 | 5,924円 | 165,872円 |
30歳以上44歳以下 | 5,924円 | 165,872円 |
45歳以上59歳以下 | 5,924円 | 165,872円 |
60歳以上64歳未満 | 4,900円 | 137,200円 |
このケースでは60歳を境に、一日あたりに支給される金額が1,000円以上も下がってしまいます。その理由は、失業手当の計算方法によるものです。
失業手当(保険)の計算方法
では具体的な失業手当の計算方法をみていきましょう。
失業手当の受給額は「基本手当日額×給付日数」によって決定します。基本手当日額とは一日あたりの失業手当の給付額のことです。
一日あたりの失業手当は、以下の計算方法で算出できます。
【一日あたりの失業手当】
一日あたりの賃金額×0.5~0.8
そして、一日あたりの賃金額は以下の計算式で算出できます。
【一日あたりの賃金額】
退職前6カ月の給料の合計÷180
これを踏まえた一日あたりの失業手当の給付額は、以下の計算式で判明します。
(退職前6カ月の賃金合計÷180)×所定の給付率(0.5~0.8)
受け取れる失業手当(保険)の上限
失業手当の支給額の計算方法をご紹介しましたが、一日に受け取れる額(基本手当日額)には上限があります。
- 30歳未満:6,760円
- 30歳以上45歳未満:7,510円
- 45歳以上60歳未満:8,265円
- 60歳以上65歳未満:7,096円
雇用保険では離職者の退職前の賃金に基づき、失業手当の基本手当日額が決定します。この金額は上限と下限が設けられており、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減に伴い都度変更があります。直近では2021年8月1日に上記の額に変更となりました。
年齢によって上限金額は異なるため、自分の場合はいくらになるか計算してみるのもいいでしょう。
失業手当(保険)がもらえる期間
自己都合退職のケースで失業手当が受け取れる期間は90~150日です。60日の差があるのは、雇用保険の加入期間によって失業手当を受け取れる期間が異なるためです。
雇用期間による給付日数は以下のとおりです。
- 半年以上1年未満:給付なし(受け取れない)
- 1年以上10年未満:90日
- 10年以上20年未満:120日
- 20年以上:150日
自己都合退職の場合は退職する前の2年間で、雇用保険に加入していた期間が12カ月以上ないと失業手当を受け取れないため、自分の状態は把握しておくようにしてください。
失業手当(保険)を受給するまでの流れ
自己都合退職をした際に失業手当を受け取る場合の流れをご紹介します。実際に失業してからすぐ対応しなければ、給付制限期間の2カ月が過ぎた後も受給できていない……という可能性が出てきます。流れをしっかりと把握しておきましょう。
(1)離職証明書の確認と離職票の受領
退職し、そのあとに就職先が決まっていなければ、離職証明書と離職票の2つの書類が発行されます。会社から書類を受け取ったら、内容に問題ないかを確認してサインもしくは捺印します。
会社は本人が退職してから10日以内にハローワークへ書類を提出し、受理されれば「雇用保険被保険者離職票」が会社に発行され、退職者へ渡されます。雇用保険被保険者離職票は失業手当を受け取るのに必要な書類になるため、受け取った後は大事に保管するようにしましょう。
(2)ハローワークで失業手当の申請
雇用保険被保険者離職票を受け取った後はハローワークの失業手当窓口に行きます。窓口では、失業手当を受け取る資格があるかを確認されるため、下記を持っていくようにしてください。
- 雇用保険被保険者離職票
- 身分証明書
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードや通知票)
- 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
- 本人名義の普通預金口座がわかるもの
- 印鑑
(3)雇用保険受給者説明会に参加
雇用保険受給者説明会という会に参加します。主に失業手当を受け取る資格がある人が参加するもので、講習に参加すると「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取れます。
失業認定日に求職活動の報告
失業手当は、再就職の意思がなければ受け取れません。そのため、週1回はハローワークに行き、求職活動をしていることを報告しなければなりません。
失業手当を受給
失業の認定を受けたのち、所定の期間を経て失業手当が口座に振り込まれます。これで一通りの失業手当を受け取るための対応は完了です。
失業保険はそもそも仕事をやめた人に対して、国より一定の間支給されるお金のことで、正式な表現だと、雇用保険の「基本手当」とよびます。自己都合で会社を退職し、再就職していない状態であれば、失業保険を受け取ることができますが、申請の対応や、再就職をする意思表示をしなければなりません。
そんななか、自己都合退職の給付制限は2020年から最短2カ月に短縮されたため、以前よりも早く受け取れるようになりました。失業手当を受け取る手順や準備しておくものを理解しておくことでスムーズに対処できるようになりますので、失業保険を利用しようと考えている人は準備しておきましょう。