コロナ禍になり、企業のあり方が大きく変わろうとしている。オンライン会議、テレワークなど、新たな働き方も浸透してきた。この時代、ビジネスパーソンはどのようなマインドで人や仕事と向き合っていけば良いのだろうか。

本稿では、社内のコミュニケーションにおいて気を付けていること、またこれからの時代に求められるリーダー像などを、スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役の村瀬亮氏に伺った模様をお伝えする。

  • スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役の村瀬亮氏に話を聞いた

■前編はこちら:「良好な人間関係の構築が、オンライン化を成功させるカギ」スノーピークビジネスソリューションズ 村瀬氏に聞くIT×コミュニケーション

「CP(CommunicationPhilosophy)」という共通認識

メンバー間のコミュニケーションにおいて、大事なこととは? その問いに対して村瀬氏は、「一言で言うなら、”気付く力”です」と切り出した。

「立場や役割が違うと、仲間同士でもしばしば対立してしまうことがありますよね。なぜそうなるのかに皆が気付き、主張ではなく議論ができるチームにしていく。私たちの会社では、そのためのコミュニケーションの基本姿勢を掲げています」。それが「CP (CommunicationPhilosophy)」だという。

スノーピークビジネスソリューションズ社が提唱する「CP(CommunicationPhilosophy)」は、顧客やメンバーと円滑なコミュニケーションを実現するうえで基本となる考え方だ。「対立は、お互いの利害が一致しないときに起こるもの」と定義し、まずは互いの問題や状況などの背景を理解したうえで、それぞれの考えや意見を真ん中(=場)に出す。そしてそこの中から、お互いの将来や目的のために最適なものを一緒に選択し、最終的に同じ方向に向かって進むというフローだ。

  • スノーピークビジネスソリューションズのコミュニケーションの根幹を成す「CP(CommunicationPhilosophy)」の考え方

この考え方は「相手は自分とは違う人生を歩んでおり、違う24時間365日を過ごしている」という認識がベースになっている。「その人を理解して、尊重する。相手がどんな人か、まずはじっくり耳を傾けて聞くことが重要です」と村瀬氏は語る。

「例えばシステム開発の現場で、営業は顧客の要望を早く叶えて提供したいが、開発はバグが無いように何度もテストをしながら丁寧に作りたい、と意見が対立することもあるでしょう。こういった時、各自が抱えている問題を一旦並べて、どれを優先するか話し合います」。 プロジェクトの成功のために最適な選択を両者で一緒に決めていく。

「互いの背景や意見を理解したうえで選択すると、その後も一緒の方向に進んでいくことができます。失敗しても『やっぱりこっちの選択のほうが良いかな?』と振り返る議論もできるでしょう」。

  • 岡崎本社の1Fは「Camping Office osoto Okazaki」として営業している。近隣のビジネスパーソンがコワーキング・シェアオフィスとして使うことができるという

「全員がこの考え方に気付いているかどうかで、チームの雰囲気は全く異なります。弊社ではお互いの主張が白熱したとき『それはCPに沿ってる?』と、誰ともなく言い出せる土壌ができている。互いに同じ目的に向かうので、対立が起きないんですね。世の中には、この考え方ができるともっと良くなることがたくさんあるのかな……とも思います」。

  • Camping Office osoto Hitoyoshiにて。テントのなか、和やかな雰囲気で会議ができる(画像提供:スノーピークビジネスソリューションズ)

これからの時代に必要なリーダーとは?

同じ仕事のチームでも、メンバーの背景や環境、考え方はみな異なるだろう。コロナ禍で状況が変わる今、これからの時代に求められるリーダー像についても聞いた。

「互いをリスペクトする雰囲気を持つ、そんなチームを作れるリーダーが求められるのではないでしょうか。AIやロボットが進化しても、働いている人は生身の人間です。だからこそ、メンバーをイキイキ・ワクワクさせるチームマネジメントが必要になるはずです」。そのためには、対話が重要だと村瀬氏は語る。

「リーダーは一方通行にならず、対話を通してメンバーの考えに寄り添い、時には修正のアドバイスをすることも必要です。自発的に行動できるメンバーと、互いをリスペクトする雰囲気を作れるリーダー、さらにそれを受け止める企業風土があれば、新しい時代の変化にも対応して、進化し続けていけるのではないでしょうか」。

ここで村瀬氏は「ときには、リーダーがふざけることも大事だと思います」と笑った。「会議中に『ちょっと熱くなりすぎたぞ』と感じたら、冗談を言ってメンバーに肩の力を抜き、リラックスしてもらいます。深刻になりすぎても何も生まれないので、リーダーの自分から積極的にふざけています(笑)」。

  • 本社のエントランスには「パーマカルチャ―ガーデン」という園芸コーナーがあり、野菜やハーブを育てたり、ポンプで井戸の水を汲むなど自然の循環が体験できた。オフィスのあちこちに、同社の遊び心が感じられる

目指す経営者像は?

スノーピークビジネスソリューションズを率いる村瀬氏が、これから目指す経営者像はどのような姿だろうか。

「対話をベースにした、良好な人間関係で溢れる世界をつくっていきたいですね」。そのためには自然の力を使うこと、地球との対話が必要だという。

「自分たちにとっての都合のよさを優先するのではなく、ひとり一人が互いをリスペクトして、あらゆる人や自然とつながる。そうして課題をクリアしていけば、その延長線上に地球環境の保全や持続可能な世界があると考えています」そんな未来に向け、見本となれるチームを自分たちで作っていきたい、と期待を寄せる。

  • osotoでは、キャンプ用のテーブルを囲んでの会議も頻繁に行われているようだ。写真は、イミテーションの焚き火にLEDライトの炎がゆらめく様子

最初のアクションを起こしてみて!

マイナビニュース読者には、若手のビジネスパーソンも多い。これからの働き方を模索する彼ら彼女らの世代に向けたアドバイスを聞いた。

「『何か成果を残さないといけない』と焦って思い詰めるよりも、笑顔で元気よく、前向きな姿勢でいてください。まだ成果を出すのが難しい段階なら、まずは素直に働き方や考え方を吸収してほしいですね。その姿勢は周囲の人を幸せにしますし、経営者の目線でも『頑張っているな』とホッとします。ワクワクして、笑って前向きな姿でいれば、その先で必ず成功するはず。でも、どうしてもワクワクできない会社だったなら、転職を考えたほうがいいかもしれません(笑)」。

  • 若手社員にエールを送った

また最後に村瀬氏は、「どんなに小さい事でも、アクションを起こしてみてください」とメッセージを寄せた。

「どんなことでも『最初のアクションを起こせるかどうか』、第1歩を踏み出すことが重要だと考えています。私がいまこの仕事をしているのも、様々なことをやってみた結果です。この記事を読んだ方も、読んで終わりにせず、『なるほど』と思ったことがあれば小さくてもアクションを起こしてみてはどうでしょうか。SNSでシェアしたり友人に話したり、まずは何か行動してほしいですね」。

「これは私が講演するときにも冗談半分で言うことですが……」と前置いて、村瀬氏はこう語る。「何ができるだろうかと迷ったら、スノーピークのキャンプ用のチェアを1個買ってみてください(笑)」。

アウトドアチェアを持って、自宅でリビング以外の場所に座ってみたり、外に出てみたら、ちょっと視点が変わりそうだ。そんな小さなきっかけが、未来の第一歩に繋がるのかもしれない。

■前編はこちら:「良好な人間関係の構築が、オンライン化を成功させるカギ」スノーピークビジネスソリューションズ 村瀬氏に聞くIT×コミュニケーション

  • 時おり冗談も交え、これからの時代の企業のありかた、リーダー像、若手社員の働きかたなどを明るく語った村瀬氏

写真:カワベ ミサキ