「助かります」はビジネスシーンでよく聞かれる表現です。「〜していただけると助かります」と依頼する際や「助かりました」と感謝する際など、毎日のように使っている人も多いのではないでしょうか。しかし、「助かります」は、使う相手に気をつけないと失礼になってしまうこともあるのです。
この記事では、「助かります」を使ってはいけない相手やその理由、言い換えに使える表現を紹介。また、英語や韓国語表現についてもまとめました。
「助かります」の意味は2つ
ビジネスにおいて「助かります」というフレーズは、依頼と感謝の2つの意味で使用されます。
もともと「助かる」という言葉は、「労力や費用などの負担が少なくなること、それによって楽になること」という意味です。
そのため、依頼の場合は「労力が減って楽になるからやってほしい」という意味で「書類の空欄に必要事項を記入後、返送いただけると助かります」などと使われますし、感謝の場合は「労力が減って楽になってありがたい」という意味で「買い出しを手伝っていただけて助かりました」などと使います。
敬語として目上の人には使えない?
「助かります」はビジネスでは頻出の表現ですが、目上の人に使うと失礼にあたってしまいます。
「助かります」は、「助かる」に丁寧語の「ます」がついているため、敬語としては正しい表現です。
しかし、「助かる」のそもそもの意味は「労力や金銭的な負担が減って楽になる」であり、「助かりました」というと、「私のことを楽にさせてほしい(もしくは、楽にしてくれてありがとう)」というニュアンスが含まれてしまいます。
このように、「助かります」は上から目線の表現になってしまうため、上司や取引先に使ってしまうのは不適切です。同僚や自分より立場が下の人に使える表現であることを覚えておきましょう。
「助かります」の言い換え表現は?
「助かります」は目上の人には使えない表現ですので、依頼や感謝の気持ちを伝えたい時は言い換えましょう。「助かります」の2つの意味、依頼と感謝それぞれの言い換え表現を紹介します。
依頼する時・口頭
口頭で目上の人に依頼をする時は、以下の表現に置き換えられます。
- 〜してくださると幸いです
- 〜していただけますか
- 〜をお願いいたします
「幸いです」を使うと「してもらえたら嬉しい」という意味になるため、「助かります」のような上から目線のニュアンスがなく依頼の気持ちを伝えられます。かしこまった場では「幸いでございます」にするとより丁寧です。
また、「していただけますか」だと少し押し付けがましいと感じてしまうようであれば、「していただけたら嬉しいです」とするか、「恐れ入りますが」などのクッション言葉を使うと印象を和らげられます。
<例文>
- 気になる点がございましたら、教えていただければ幸いです。
- お忙しいところ申し訳ありませんが、書類を確認していただけますか。
- 打ち上げの日程について、今週中に返信をお願いいたします。
依頼する時・メール
メールで依頼をする時は、よりかしこまった表現にしてもよいでしょう。
- 幸いに存じます
- 幸甚に存じます
「幸甚(こうじん)」は「この上ない幸せ」という意味です。「幸いです」をより強めた表現となります。
<例文>
- ご検討いただければ幸いに存じます。
- 返信をいただければ幸甚に存じます。
感謝する時
感謝する時には「助かります」の代わりに以下の表現を利用するといいでしょう。ストレートに感謝の気持ちを伝える方法もあります。
- ありがとうございます
- お礼申し上げます
- 感謝申し上げます
- 感謝いたします
「ありがとうございます」が一般的で使いやすいですが、スピーチなどかしこまった場では「お礼申し上げます」の方が向いています。
<例文>
- 荷物を持っていただきありがとうございます。
- この度はお力添えいただき、厚くお礼申し上げます。
- 皆様のおかげで無事プロジェクトが完成したこと、深く感謝いたします。
「助かります」と言われた時の返し方
「助かります」と相手に言われた時はどのように返すべきなのでしょうか。相手に気を使わせないスマートな答え方を、感謝された時、依頼された時に分けて説明します。
依頼された時
依頼されたときには、「了解しました」と答えるのが適切です。
- 承知いたしました
- かしこまりました
- させていただきます
- 喜んでお引き受けさせていただきます
これらの表現なら、丁寧なので上司にも使えます。
ただ単に用事を頼まれた時は「承知いたしました」などで十分ですが、もし依頼内容が自分にとってチャレンジングなものであったり、あるいは喜ばしいものであったりする場合は「微力ながらお受けいたします」「喜んでお引き受けいたします」などとすると、自分の気持ちを相手によりよく伝えられるでしょう。
感謝された時
感謝の意味での「助かります」には、以下のように返すことができます。
- お役に立てて光栄です
- 恐れ入ります
「とんでもございません」も感謝への返答として使えます。しかし、相手の感謝に対して「滅相もないことだ」と謙遜しつつも打ち消してしまう意味合いがあるため、相手によっては自分の感謝を否定されたような気持ちになってしまうこともあります。使用する際は注意しましょう。
「どういたしまして」も同様で、相手に感謝の気持ちを拒否されたと思われ、上から目線で話しているような印象を与えてしまいかねません。ビジネスシーンでは避けたほうが無難でしょう。
「助かります」を英語で表現すると?
ビジネスなどで英語を使うのであれば、「助かります」をどのように表現するのか知っておきたいですよね。ここでは、「助かります」の依頼と感謝、それぞれの意味での英語表現を紹介します。
依頼する時
依頼の「助かります」を英語にしたい場合は、「もしあなたが〜していただけたら私は助かります」という表現の「I would appreciate (help) if you ~」という表現を使うといいでしょう。
<例文>
- We would appreciate it if you could take a moment to fill out the survey.(お手数ですが、アンケートにご協力いただけると助かります)
- We would help it if you could sign and return this form to us. (ご署名の上、ご返送いただけますと幸いです)
感謝する時
感謝の気持ちを表す際の「助かります」については、「Thank you (for~)」「I appreciate」などがあります。普段の同僚などとのやり取りでは「Thank you」、よりかしこまった場などの場合に「I appreciate」が適しています。
「Thank you」というと日本語では軽く感じますが、very muchをつけて丁寧さを強調すれば、目上の人に対して使用しても失礼には当たりません。
<例文>
- Thank you for visiting our store. (この度はご来店いただきありがとうございます)
- I appreciate coming to pick me up in your car. (車で迎えに来てくれたことに感謝します)
「助かります」を韓国語で表現すると?
「助かります」の韓国語表現を紹介します。こちらも英語同様、依頼と感謝によって表現の仕方が変わるので覚えておきましょう。
依頼する時
依頼する際の「〜してくださると助かります」は以下の通りです。
- 주시면 고맙겠다. (〜していただければ幸いです)
- 도움이 됩니다. (助かります・役に立ちます)
「주시면」は「〜してください」、「고맙겠다」が「ありがたい」という意味です。とても丁寧な依頼の表現となりますので、日本語のニュアンスとしては「〜していただければ幸いです」に近いものとなります。
また、直訳の「도움이 됩니다」は、「도움이」が「助かる・役に立つ」という動詞、「됩니다」が「です・ます」に相当する丁寧な表現となります。
<例文>
- 변경 사항이있는 경우는 일주일 전에 알려 주시면 감사하겠습니다. (変更点がある場合は、一週間前までにお知らせいただけると幸いです)
- 질문의 건에 대해서는 다음주 중에는 가르쳐 주시면 도움이 됩니다. (質問の件につきましては、来週中に教えていただければ助かります)
感謝する時
感謝を示す際の「助かります」については、以下の韓国語を使うといいでしょう。
- 고맙습니다. (ありがとうございます)
- 감사하겠습니다. (ありがとうございます)
「고맙습니다」は、「감사하겠습니다」よりカジュアルな表現になります。メールや目上の人に対しては、「감사하겠습니다」を使用するようにしましょう。
<例文>
- 내 일을 도와 주셔서 고맙습니다. (私の仕事を手伝ってくれて助かりました)
- 오늘은 이야기 할 수있는 기회를 마련해 주셔서 감사하겠습니다. (今日はお話しする機会を設けていただきありがとうございます)
「助かります」を言い換えて感謝の気持ちを伝えよう
仕事を進める上でお互いに協力することが不可欠です。相手に何かしてもらった際に「助かります」を使って感謝の気持ちを表現できます。
しかし、「助ける」とはそもそも目下の人が目上の人に助力することであり、上司など、目上の人に「助かります」といってしまうと失礼な印象を与えてしまいます。そのため、「ありがとうございます」「幸いです」などに置き換えて、自分の感謝の気持ちや敬意を適切に言葉にするようにしましょう。