目まぐるしい天候の変化や仕事のストレスなどで寝苦しい夜が続き、身体に不調をきたす現代人は少なくない。快適な眠りは元気の源。快眠を得るには身体面でどのようなアプローチが有効なのか。

  • 寝つきが悪い人もこれでぐっすり! “グリグリマッサージ”で自律神経を整える / パーソナルトレーナー・柴雅仁

治療とセルフケアの運動を組み合わせた最新のパーソナルトレーニングで注目される柴雅仁先生が、身体の緊張のゆるめ方や、自律神経のバランスを整える方法を紹介する。

■“グリグリマッサージ”で緊張した身体をほぐす

寝つきが悪い、眠りが浅いのは、身体の緊張が抜けていないからです。身体が緊張状態になりがちなのは自律神経の「交感神経」の作用で、交感神経が強く働くと脳が興奮しすぎて、なかなか眠りに入れず、寝ても夢ばかり見て疲れがとれません。

人間の身体には、リラックスを促す「副交感神経」が、夜になると優位になり、自然と安眠に導くリズムが備わっていますが、交感神経が刺激されたままだと、この切り替えがうまくいかないのです。

現代人は日常的にスマホを使いますし、ほとんどの仕事にはパソコンワークがつきものです。特に最近ではテレワークが浸透したため、パソコンに向かう時間がさらに増えた、あるいはオンとオフの切り替えがうまくできない、といった人も多いでしょう。

眠りに就く直前までスマホやパソコンを触っていると、交感神経がなかなかオフにならず、脳は興奮したままです。

脳の興奮を鎮めるのに直接的な方法は、スマホ画面などから直に刺激を受ける目やその周辺、おでこや側頭部の緊張をゆるめてあげることです。

目は、眼窩のラインに沿って、前頭骨をぐっと引き上げ、こぶしでグリグリ押すとすっきりします。耳を引っ張るのも効果的です。

  • 眼窩のラインに沿って、前頭骨をこぶしでグリグリ押して緊張をほぐす

  • 側頭部をほぐすのも興奮を鎮めるのに効果的

■効果的な呼吸法は、頭頂部から空気を入れるイメージで

緊張をゆるめるにあたり、大事なのは呼吸法です。ゆっくりと深呼吸すると、副交感神経が優位になり身体がリラックスします。

基本は腹式呼吸で、このとき舌先を上の歯ぐきの裏側にあてて鼻呼吸をすると、横隔膜が動きやすくなり深い呼吸ができるようになります。

これだけでも効果的ですが、身体の中に意識を向けるとさらにいいでしょう。つむじの少し前あたりに「百会(ひゃくえ)」というツボがあります。

ここを触り、意識の中で百会から空気をいれるつもりで息を吸い、またすーっと抜くイメージで吐いてください。

  • 頭頂の百会を触り、意識の中で百会から空気をいれるつもりで呼吸する

百会がある頭頂部の後頭前頭筋は、頭の前から上を通って後頭部まであり、そこからさらに自律神経が通る背骨とも繋がっています。

脳が興奮しているのは頭の前側(前頭葉)なので、百会を通して頭の少し後ろのほうに脳の意識が向くことにより、前側の興奮がおさまることがあります。背骨に沿った部分も自然と意識されるので、自律神経が整います。

■快眠はもちろんパフォーマンス向上にも効くリセット法

最高の睡眠には、寝入りばなの約90分、夢も見ない深い眠りを得ることが大事だと言われています。睡眠のリズムが整い、朝、快適に目覚められます。

そのためには、就寝前にできるだけリラックスすること。マッサージや腹式呼吸のほかにも、ゆっくりとお風呂に浸かるなど、自分なりのリラックス法を見つけてください。

私が最近とりいれているのは「瞑想」です。実は、コロナ禍によりインターネットを使う機会が増えたことで、一時はかなり体調を崩しました。夜、ライトを煌々とつけてオンラインで実演すると、そのあとマッサージとストレッチだけでは興奮がおさまらないのです。

自律神経を整えようとリラクゼーションの観点から瞑想をはじめたところ、これが利きました。今ではマッサージ、ストレッチ、瞑想の「3つのセット」でリラックスモードに入っています。

姿勢はまず、上半身がしっかり座骨に乗るようにあぐらを組みます。肩甲骨が開くよう脇を締める感覚を意識しながら、みぞおちの力を抜いて肩を下げる。その状態でヒーリング音楽なんかを聴きながら、身体をほぐしたり、目を閉じて頭頂部を意識した深い呼吸を10分ほど続けると、気持ちがすっと落ち着くのがわかります。

自分がリセットされる感覚は清々しく、生まれ変わったようです。仕事のパフォーマンスも上がるので、睡眠前はもちろん、疲れたとき、イライラしたときにもおすすめです。