無理なく心地よく、自分らしく暮らす。長年、芸能界やファッション界で活躍し、幅広い年代の女性から支持されている辺見えみりさん。初の著書『重ねる時間』では、辺見さんのステキな暮らしぶりがふんだんに紹介されている。部屋づくりに頭を悩ますZ世代に、小物選びのポイントから限られたスペースを心地よく彩るコツまで、辺見さんの思いを語ってもらった。

  • 辺見えみりの"部屋づくり"。ときめく空間づくりは「自分を知る」から

■好きになれるモノを、丁寧に選ぶ

私がはじめてひとり暮らしをしたのは19歳の頃。小さなキッチンつきのワンルームで、最初はミニサイズの冷蔵庫にベッド、座椅子くらいしかありませんでした。

少しずつお部屋の様子を整えていくなかで、影響を受けたのは当時の現場マネージャーです。とてもお洒落な女の子で、たまに遊びにいく彼女の部屋も「この人らしいな」と感じる空間でした。

たとえばパンを切る木製のカッティングボードがさりげなくキッチンに置かれていたり、コップひとつ、お皿ひとつとっても彼女らしいセンスにあふれていたり。どれも決して高級なものではないけれど、自分の世界観を大事にして暮らしを楽しんでいる様子がとてもステキでした。

そんな彼女にいろいろと教わりながら、自分の出せるお金の範囲内で計画的にインテリア小物を買い足していきました。もっとも一緒に買い物しても、彼女と同じモノを選ぶわけではありません。

ただ、センスのいい人のモノ選びを参考にしているうちに、なんとなく「私だったらこっちかな」とわかるようになるんですね。そうやって自然と自分のキャラクターにあった小物を選ぶようになっていったと思います。

彼女のモノ選びで最も参考になったのは、「とりあえず買う」という、間に合わせの買い物を決してしなかったことです。自分にとって理想のお部屋を叶えることは、お金の問題もあるし、年齢とともに生活スタイルやインテリアの趣味も変わるから簡単ではありません。

でもどんなにささやかな小物でも、彼女は目についたものを適当に買うのではなく、じっくりと吟味していました。本当に一番好きと思えるのか、長く愛用できるのか、モノ選びにすべて意味があったのですね。

居心地のいい空間とは、自分の「好き」を集めた結果です。今はお値段もリーズナブルで、可愛い雑貨屋さんがたくさんあるので、まずはお気に入りの小物を揃えるところから始めてみてはいかがでしょう。

■一生モノの家具がもたらす贅沢な時間

「好き」を集めて暮らすうちに、どこにお金をかけるべきかがわかってきます。いまの私は、長く使う家具については本当によいモノを、お掃除などに使う消耗品は100円ショップをフル活用。

心地いいお部屋はきれいであることが前提なので、掃除用のウエットシートをあちこちに置き、埃が目についたらちょこちょこ拭いています。揚げ物の始末が楽な油吸収パッドなど、普通のスーパーにはない優れモノも見つけて愛用しています。

100円ショップは侮れませんよ(笑)。たくさん使う消耗品はおもに100円ショップで調達しています。

一方の家具は、最初から高価なモノを買うのは難しいかもしれません。お金もそうだし、家具の好みは世代によってかならず変わるので。でも時々、「絶対にこれは揺るぎなく好きだな」と思うモノに出会うことがあります。

私にとってそれは丸い形の貝殻がたくさん吊り下がっているシャンデリアでした。20代の終わりでしたが、一目惚れするとともに、これから40代、50代になっても、私が選ぶお部屋にきっと合うだろうと確信したのです。当時の私にはかなり高額でしたが、一生モノだからとがんばって購入しました。

振り返ると「絶対に欲しい」と思ったのは、そのシャンデリアが彩る光景に魅かれたからだと思います。リビングでお友だちとお喋りしていると、窓からそよ風が入り、シェルシャンデリアがシャラーンと心地いい音色を奏でる。

それは私にとってとても贅沢な時間です。いまは私の娘もシャンデリアの音がすると、「すごく気持ちいいね」と言ってくれて、母娘で心地いい時間を過ごしています。

  • 20代後半に一目ぼれして購入したシェルシャンデリア。風の音が心地よい一生もののインテリアのひとつ Ⓒ猪原悠(TRON)

■部屋には、自分がどんな人間かが現れる

シェルシャンデリアを「ずっと好きでいれる」と感じたのは、たぶん20代の後半になって自分のことが少しずつわかりかけていたからです。なにが好きで、どんなことが嫌いかといった感覚は、生きていくなかで磨かれるもの。

一つひとつの出会いや経験を通して、自分がときめくコトやモノ、共感できる考え方、あるいは許せないことは何なのか。そうした気づきを得ることがすごく大事かなと思います。

もちろん私も、若い頃からそんな風に考えていたわけではありません。家具や小物もすぐに飽きてしまったり、やっぱり合わないなと感じたり、たくさん失敗してきました。

でもそんな失敗も含めて、次第に「自分はこう」と方向性が固まってくるので、年を重ねるにつれ、生きるのがどんどん楽になりますよ。もっと早くに気づいていたら、もっと今みたいな暮らしができていたのに、と思わないでもないけど。

だから、「こんな食器を置いてあんな家具を揃えたらステキな部屋になる」なんて、私がアドバイスするのも違うし、そもそも薄ぺっらい(笑)。その人のお部屋には、これまでどう生活して、これからどんな風に暮らしたいのか、つまりは「自分がどんな人間か」ということがおのずと現れます。

自分をよく知ることが、心地いい部屋づくりに繋がると感じています。