今は街頭だけでなく、インターネットでも募金活動が行われています。さて、このような募金活動を見かけてお金を出した場合、「募金する」ということはありませんか。
じつは「募金」の本来の意味からすると、この「募金する」という言葉は間違った使い方になります。ではどのように表現すればいいのでしょうか。本記事では「募金」という言葉について、意味や使い方、類語、英語表現などを紹介しながら深堀りしていきます。
募金とは、お金を募(つの)り集めること
募金の「募」は「つのる」と読みます。広い範囲に呼びかけながら集める行為を指し、つまり「募金」とは一般からお金を集めること、また集まったお金のことを指します。
本来は主催する側が使う言葉
繰り返しになりますが、募金とはお金を集めること。つまり「募金活動を行う」などのように、主催者側が使う言葉です。
しかし現在では、「街頭で募金してきた」などのように、お金を差し出す側が使うケースも頻繁にあります。あまりに一般的になっているため、辞書によってはこのような使い方も誤りとはせず認めているものもあります。
正しく表現するなら「お金を寄付する」
「募金する」も間違いとはされていませんが、あえて正しく表現するなら「お金を寄付する」が妥当でしょう。しかし「寄付」という言葉が少し大げさにとらえられることから、一般的には多くの人が「募金する」と表現しています。
「寄付」を「寄附」と表記する場合もありますが、意味は同じです。
「募金を募る」は重ね言葉
「募金を募る」は、こうして書いてみると「頭痛が痛い」のような重ね言葉であることが分かります。「募金」自体に「お金を募る」という意味があるからです。
正しく言い換えるとしたら、以下のような表現があります。
・募金活動を行う
・街頭で寄付金を募る
募金活動の目的
かつて募金といえば、街頭での呼びかけや店頭の募金箱の設置などが一般的でしたが、今はインターネットからも気軽にお金を募ることができるようになりました。
募金の目的は活動団体によってさまざまです。以下に、その一例を紹介します。
募金名称 | 目的 |
赤い羽根共同募金 | 福祉活動や災害支援 |
緑の羽根募金 | 植樹や間伐等の森林整備、森林環境教育、海外の緑化支援 |
ユニセフ | 子どもの命と権利を守る活動 |
パープルリボン | 女性に対する暴力根絶 |
ピンクリボン | 乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の啓蒙 |
オレンジリボン | 児童虐待防止 |
募金の類語・対義語について
募金の類語と対義語は、「募金」という言葉をどう捉えるかによって異なります。
つまり以下に挙げる言葉の数々は、募金の意味を本来の「お金を集めること」として捉える場合には対義語となり、一般的に使われる「お金を差し出すこと」と捉える場合には類語となります。
寄金(ききん)
「寄金」とは「お金を寄付すること、またはそのお金のこと」を指します。
・先月の災害時には多くの寄金が集まった
同じ読みに「基金(ききん)」がありますが、これは「経済活動を行うときに基礎となる財産」を指す言葉です。同じ読みですが意味は異なるので注意しましょう。
寄付・寄附(きふ)
「寄付(寄附)」とは公共事業やお寺、神社などに、金品を贈ることです。災害が起こったときなどの寄付(寄附)金は、支援活動を行っている団体に集められて役立てられます。
・ふるさと納税で集められた寄付金は、環境保全や産業の振興などに使われる
・寄付は、こちらから強要すべきものではない
寄贈(きぞう)
「寄贈」とは学校や図書館など公共性の高い場所へ、物品をおくり与えることです。
・学校に新しいピアノが寄贈された
・ささやかながら新たな什器を寄贈させていただきます
投資(とうし)
「投資」とは資金を事業や不動産、証券などに投下することです。利益を得ることが目的ですが、子供や若者の将来を見込んで育てるために金銭を使うことという意味でも使います。
・新しい事業に投資をする
・子供を立派に育てるために、投資は惜しまない
拠金(きょきん)
「拠金(醵金)」とはある目的のためにお金を出し合うこと、またはそのお金のことを指します。英語では「contribution」と言い、マーケティングコントリビューション(マーケティングが貢献した売り上げの比率)のようにビジネスの指標とされる場合もあります。
・事業再建のために拠金をする
義援(ぎえん)
「義援」とは、慈善や被災者の救済などを目的としてお金や物品を差し出すことを言います。実際に集まったお金は「義援金」と呼び、日本赤十字社などに寄せられた義援金は公平に、被災地および被災者へ配分されます。
・災害義援金が受け付けられている
・義援金は被災者に公平に割り振られる
募金の英語表現
募金の英語表現を紹介する前に、アメリカでの募金事情に簡単に触れておきましょう。
アメリカでは募金活動が盛ん
アメリカでは寄付をする活動が盛んで、ハリウッドスターや大企業のトップなどを筆頭に、寄付を積極的に行う傾向があります。 2016年時点における年間個人寄付の総額は、日本が7,700億円あまりなのに対してアメリカは約30兆円超と、約4倍に迫る開きがあります。
この理由には、アメリカという国が移民たちがお金を出し合い、作り上げたコミュニティからなっているとする考え方もあります。
それでは募金の英語表現を見ていきましょう。
fund-raising/a collection(募金)
「fund」には基金や資金、「raise」にはお金を調達する、集めるなどの意味があります。本来の「お金を集めること、そのお金」という意味の募金は「fund-raising」や「a collection」などが使われます。
「お金を差し出す」という意味では後述の「donate(寄付する)」が使われます。
・fund-raising for funger.(飢餓のための募金)
・We make a collection for his study.(彼の研究のために私たちは寄付金を募った)
a fund-raising campaign(募金運動)
募金活動は「a fund-raising campaign」と表現されます。
・We will have a fund-raising campaign on the street tomorrow.(私たちは明日、街頭で募金運動をする予定だ)
funding(資金提供)
「funding」は財政的な支援や、事業への資金調達などを指します。募金に近い意味ですが、寄付というよりは利益を生むことが目的とされます。
・This project recieved some funding.(このプロジェクトはいくらかの資金提供を受けた)
・We decided to freeze funding.(我々は資金供給を凍結することを決めた)
donate(寄付する)
「donate」は、慈善団体や公共機関などにお金や洋服、食品などを寄付することを指します。名詞「donation」は、「blood donation(献血)」や、療養中の患者に自分の髪の毛を送る「hair donation」などの言葉に使われます。
・I donated long hair.(長い髪の毛を寄付しました)
・I donated blood to the Red Cross for the patient.(患者さんのために赤十字に献血しました)
contribute(寄付)
「contribute」は一般の会社や基金に寄付をする場合に使われます。ほかにも「寄与する(貢献する)」の意味もあります。
・He contributed a lot to this great work.(彼はこの素晴らしい仕事に多大な寄付をしました)
・Insufficient forest maintenance contributes to the occurrence of flood damage.(森林の手入れ不足は、水害の一因ともなっている)
募金は本来「お金を集める」という意味
募金は、「ある目的のためにお金を募(つの)る」という意味の言葉です。もともとは募る側が使う言葉ですが、現在は「募金してきた」などのようにお金を差し出す側が使うことも一般的になりました。
「100円を募金した」も間違いではありませんが、別の表現に置き換えるなら「100円を寄付した」となります。