最近の自動販売機は目覚ましい進化を遂げている。

いや、進化というよりは変化というべきか……いや、変化というよりも変化球というべきか……。とにかく、珍しい自販機が増えており、例えば冷凍ラーメンやカキフライを買える自販機まで登場しているらしい。しかし、中でもひときわ異彩を放っているのがコレだろう。

  • SNSで話題の最新自動販売機とは

「馬刺し専用自販機」である。

SNSなどでにわかに話題になっているようだが、その存在を知ったときは、正直、「よりによって、なぜ馬刺しを自販機で売る必要があるんだ? 」と疑問に思った。一方で、考えれば考えるほど惹かれている自分がいるのも事実である。

ということで、居ても立ってもいられず馬刺しの自販機へ急行。さぁ、その魅力を存分に堪能させてくれい!

千葉で「馬刺し専用自販機」とご対面

馬刺しの自販機が設置されているのは、千葉県松戸市松飛台の一角。ほかにも新鎌ヶ谷駅前や市川市など、計4カ所に馬刺し専用自販機が設置されているらしい。

  • 千葉県松戸市松飛台の一角にひっそりと……

本当にあった……! なぜかちょっとドキドキしてきたし、なんか嬉しいぞ。さぁ、もっと近寄ってみよう。

  • 近づいてみる

いや、わかってたけど、わかっていたことなんだけど……

  • !!

すごい、本当に馬刺しが売っている……!

当然だけど、冷凍状態で売っているようだ。どれどれ、どんなラインナップなのかな。

なるほど。計11個のボタンがあるが、被っているものも多い。

整理すると、「厳選馬さし」「やわらか馬さし」「馬さし2品盛り(人気盛り)」「馬さし2品盛(特選盛り)」「赤身馬さし」の全5種類となっているようだ。

詳細を見てみると……

・「厳選馬さし」(モモ50g 700円)
・「やわらか馬さし」(ロース50g 800円)
・「馬さし2品盛り(人気盛り)」(赤身50g+たてがみ20g 1200円)
・「馬さし2品盛り(特選盛り)」(赤身50g+バラ20g 1300円)
・「赤身馬さし」(赤身200g 1500円)

いずれも「会津の辛味噌」という調味料が付いているらしい。ちなみに、会津は熊本に次いで全国2位の馬刺し大国で、辛味噌で楽しむのが会津流だと言われている。

悩むこと数分、とりあえず“イチオシ”のマークが付いていた「厳選馬さし」と、高級感の漂う「馬さし2品盛り(特選盛り)」に決定。

さぁ、いよいよ自販機をポチる瞬間が訪れた。買うぞ買うぞー!

  • ポチッ。

  • ゴトンッ。

おおっ、こんな感じで出てくるのか! 冷凍なのでヒンヤリと冷たく、パックで丁寧に包装されている。ひとつめを取り出すと、それを察知してか、続いてふたつめのパックがゴトンッ! と落ちてきた。

  • 馬刺し入手成功

ということで、無事、自販機で馬刺しを入手することに成功。ちなみに、滞在時間約10分の間に、筆者以外にも2組が自販機を利用していた。なかなかの人気っぷりである。そのうち1組はネットの情報を見て、わざわざ都内から足を運んできたそうだ。ふむ、同志である。

パックの注意書きを見ると、馬刺しは1時間以内に持ち帰り、その日のうちに食べきるといいらしい。ではアドバイスに従い、急いで帰路につこう!

自販機で買った馬刺しのお味はいかに

帰宅後は冷蔵庫で約1時間かけてゆっくり解凍。刺し身はカット済みなので、まな板と包丁を使うこともないのは嬉しい。ちなみに、銀色の小袋が例の会津の辛味噌である。

  • 冷蔵庫で1時間かけて解凍

ではさっそく、「厳選馬さし」(モモ50g)からいただこう。

  • 「厳選馬さし」(モモ50g)

おお~。身はツヤツヤしていて、見るからに新鮮で美味しそう。馬の肉は「桜肉」とも言われるが、なるほど、まさに言い得て妙な美しいピンク色である。

まずは会津の辛味噌につけて、いただきます。

  • まずは付属の会津の辛味噌で

うわっ、ウッッッッッッッッマ! ダサいオヤジギャグではなく、本当にウマい。

身はとてもやわらかくて肉厚。食べてみて初めてわかったが、1枚がかなり大きい! 舌触りもとてもなめらかだ。間違いなく新鮮で、臭みのようなものは一切ナシ。

産地が日本ではなく、カナダやアルゼンチン、メキシコと書かれていたので、あまり過度な期待を持たないようにしていたのだが……これはウマい。会津の辛味噌はピリッと辛く、ニンニクがよく効いていてこちらも美味。馬刺しによ~く合う。

続いては醤油とおろしニンニク、万能ねぎというオーソドックススタイルで。

  • お次は醤油とおろしニンニク、万能ねぎで

こちらももちろん、最高。馬刺しの強いウマ味と、ニンニクの効いた醤油がとてもよく合う。いや~、これは会津の辛味噌と甲乙付け難い(甲乙を付ける必要もないのだが)。そして、動物の肉でありながら、脂が少ないせいか、魚の刺身に近い感覚で、さっぱりと食べられる。50gと言わず、100gでも200gでも飽きずにイケそうだ!

では、続いて「馬さし2品盛り(特選盛り)」(赤身50g+バラ20g)を食べてみよう。

  • 「馬さし2品盛り(特選盛り)」(赤身50g+バラ20g)

先ほどの赤身肉と打って変わり、バラ肉は脂身が上品な輝きを放っている。まるで高級焼肉店が出す黒毛和牛の特上カルビのようなキラキラ具合ではないか。さっそくいただこう。

  • 脂身が美しいバラ肉

ウマい……半端じゃなくウマい! 肉質は柔らかく、脂身の部分も深い味わいと甘みがあり、舌のうえでゆっくりとろけていく。こちらもとにかく新鮮で、クセのようなものが驚くほど少ない。しかし、しっかりとウマみは感じられる。会津の辛味噌もにんにく醤油もよく合う。

ちなみに、馬肉は他の動物の肉と比べて、酸化しにくい「不飽和脂肪酸」の割合が多く、体脂肪が増えにくい肉だと言われている。もちろん、脂身の食べ過ぎは良くないのだろうが……これくらいなら全然余裕だろう。ということで、バラもあっという間に完食。

  • 赤身のお味は……?

こちらの赤身も最高にウマい。最初に食べた赤身の馬刺しより色がハッキリと赤みがかっているが、部位は同じモモなので、味としては大きな違いは感じず。産地が違うのかもしれない。製造元に確認を試みたが、現在は多忙を極めているようで、詳細はわからなかったのだが、ただただウマいのは間違いない。

しかし、まさか自販機で馬刺しを買う日が来るとは想像もしていなかった。そもそも、自宅で馬刺しを食べたのも初めてである。逆に言えば、自販機がなければ今後も自宅で馬刺しを楽しむ機会に恵まれなかった可能性もある。

そう考えると、この自販機こそが、日本の食卓に馬刺しを根付かせるキッカケとなるかもしれないし、実際、もし家の近所にあればかなり頻繁に利用するに違いない。おかずに1品足したいときや、急な来客があったとき、そして、高タンパク。低カロリーだから夜中に小腹が空いたときなんかもいいだろう。

24時間いつでも馬刺しが買えるこの自販機、全国に拡散希望!