• (C)フジテレビ

これまでのディレクターとしての経験が生きた部分を聞くと、「徹底して調べているところですかね。世の中にある事実を面白がるのが好きなので、分からないことを納得してもらわなきゃいけないと思って作りました」と回答。

「例えば、ティッシュペーパーの1枚ずつ出てくる仕組みを取材したときも、日本中の製紙会社や協会に聞いても分からなかったので、海外に電話をかけました。でも『分からない』と言われて。その後、何度もやり取りを続け、『頼むから、分からないのであれば“分からない”という答えをください』と粘り、最終的に、ひとつの答えにたどり着きました」といい、「ディレクターの腕は20代と変わらないのですが、自分の面白がっていることにどれだけ執着するか、どれだけ頑張れるかが大事だと思っています」と腕が鳴った。 これまで担当してきた『トリビアの泉』や『さまぁ~ずの神ギ問』のように、「調べもの番組は楽しいです」という塩谷氏。「知識のない人間だから、知った時に面白いと強く思うのかもしれません。この番組では僕らが調べられることは調べたけれど、もし放送を見て『いや違うよ』とか『それは私のことです』とか言ってくれる人が出てきたら、また面白くないですか? 番組と関係なく知りたいし、『実は…』という続編を作りたくなりますね」と、納得への探究心は止まらない。

  • 『名もなき天才あざます』演出の塩谷亮氏

■20年以上のテレビ経験をベースに新たなチャレンジ

この番組を最後に共同テレビへ出向となるが、これまでを振り返って印象に残る番組を聞くと、「全部ですね。うまくいったもの、いっていないものはもちろんありますが、すべて『これでいい』と思って放送していますから。でも、印象に残っているものをあえてあげるとすれば、『トリビア』で検証した“おならの臭いをいかに分散させるか”VTRとか(笑)、事実をくだらなく紹介するのは最高に楽しかったですね」と挙げてくれた。

ほかにも、「『エチカの鏡 ココロにキクTV』では、家族のきずなや強い思い、世の中のいろいろな方の心に触れたのも面白かったし、『アイドリング!!!』では、芸能界で頑張ろうとしている若い女性たちがどうやったら他と違って面白く見えるのか、を考えるのも楽しかったです。『オモクリ監督~O-Creator’s TV show~』では、いろいろな優秀な芸人さんの頭の中をのぞけたり、一緒に作ったりするのも、最高に楽しかったです」と、充実のフジテレビ人生を送ってきた。

「20年以上もディレクターをやり続けさせてもらえているのが、一番幸せですよ。入社当時はバラエティ番組制作の部署を希望していませんでしたが、会社は見抜いていたのかもしれませんね(笑)。たまに演出兼プロデューサーを務めたこともありますが、お金の話をするのが苦手で…。会議でスタッフに『予算が限られているから、セーブしましょう』という話をしなくてはいけない時に、その言葉を言いたくなさすぎて、途中で退席して、トイレで“おえーっ”と吐いてしまったこともあるくらいなんです。ですから、やはりディレクターとして、ものを作っているのが一番面白いです」

今回の出向については「会社から『現場やっていていいよ』と言われたのと同じだと思っているので、そんな幸せなことはないですよね」と受け止め、「時代が変わり多メディア化している中で、フジテレビだけではなく他局の作品、配信、YouTubeなど作っていいわけじゃないですか。テレビで20年以上やって、これからもやり続けるけれど、その経験をベースにしながら新しいことにチャレンジできるというのは、ワクワクしています」と、制作者としてさらなる意欲を見せている。

●塩谷亮
1976年生まれ 東京都出身。慶應義塾大学卒後、98年フジテレビジョン入社。代表的な作品は『トリビアの泉』『アイドリング!!!』『笑っていいとも!』『オモクリ監督』『さまぁ~ずの神ギ問』など。『名もなき天才あざます』を担当し、共同テレビジョンに出向。