クランクアップの場では「もっといい芝居ができたんじゃないか」といつも悔し泣きしてしまうと話す彼女に、ストイックですねと声をかけると「全然ストイックじゃないです。本当にうまくできなかっただけ」と笑顔で否定された。まさにその回答こそストイック。どこまでも純粋に“女優”を全うしている23歳、それが水谷果穂だ。
このたび水谷が地上波初主演を務めるのは、きょう11日に放送されるABCテレビ制作ドラマ『禍話』(23:00~23:55※放送後TVer、GYAO!、YouTubeで配信)。インターネットで最も怖い怪談と呼ばれ、累計90万回再生を超えるネットラジオ(ツイキャス)をドラマ化したもので、怪談話と現実世界が入り組む展開により視聴者に“最恐体験”を届ける。水谷が演じるのは、怖い話を生配信するネットラジオの聞き手役で雑誌ライターの加藤よしの。ドラマ『イチケイのカラス』(21年 フジテレビ系)での一ノ瀬糸子役の好演も記憶に新しい水谷に、入野自由との共演、女優という仕事の魅力、同じ事務所に所属する同世代の女優・福原遥や大友花恋との関係について聞いた。
――映画『ホラーの天使』(16年)など、過去にもホラー作品に出演経験のある水谷さんですが、怖いという感情はありますか。
ホラー作品は好きです。苦手というより楽しめるタイプ。でも、台本を夜に読むと何かが寄って来そうな気がして、明るい時間に読むようにしました。
――悲鳴を上げるシーンもありますが、ホラー作品ならではの難しさを教えてください。
「怖がる」というお芝居です。怖い話を聞いたり、恐ろしい現象が起こったりしたとき、実際に目の前で起きていないことを想像で膨らませながら演じることが難しかったです。
――「怖がる」お芝居にも挑んだ「加藤よしの」役を演じるうえで心がけたことはありますか。
入野自由さん演じる「かぁなっき」さんとのシーンが多いので、テンポのいい掛け合いを目指しました。3日間の撮影でいいコンビネーションを生み出すのは難しいかなと不安でしたが、最初から違和感なく2人の空気を作ることができました。入野さんが壁を作らない方だったので、私も身構えることなく自然な演技ができたんだと思います。
――入野さんがいい雰囲気を作ってくださったんですね。
私は共演者の方と仲良くなるのに時間がかかってしまうほうなのですが、今回は珍しいことに初日から気まずい時間がなかった(笑)。入野さんのお人柄のおかげです。
――今年はドラマ『イチケイのカラス』に出演されていましたが、インスタグラムでは「私にしては珍しい、笑顔でのクランクアップ」と仰っていました。クランクアップは、笑顔で終わらないことが多いんでしょうか。
女優のお仕事を始めて8年くらいになりますが、クランクアップのうち8割くらいは泣いていました。ですが、ここ最近は急にメンタルが強くなったのか、泣かないことが増えてきた。これまでは「うまくできなかった」という気持ちが大きくて、帰り道にマネージャーさんの前で泣いてしまうことが多かったんです。今でも「完璧にやりきった!」とまで思えることはないですが、少しずつ自分のなかで達成感を得られるようになっているんだと思います。
――これまでは悔しいという思いが大きかった、と。ストイックですね。
打ち上げのあいさつでは「本当にありがとうございます」という感謝から泣いてしまうことが多いのですが、クランクアップのときは悔し泣きです。ストイックではなくて、本当にうまくできなかっただけなんです。