コモディティ自体は取引されるあらゆる商品を指しますが、コモディティ投資、そしてコモディティ化には違う意味合いもあります。
この記事ではコモディティの意味はもちろん、コモディティ投資、コモディティ化によるメリット・デメリットや影響などを、具体例とともに解説します。
コモディティとは
コモディティとはもともと「日用品や生活必需品などの取引されるさまざまな製品」のことです。語源は英語の「Commodity」で「商品や産物、役に立つもの」といった意味を持ちます。
コモディティは「コモディティ投資」など金融用語としても使われる言葉です。例えばエネルギーや貴金属、農産物などを指しており、世界の商品取引所で取引されている商品のことをいいます。
コモディティの単語の意味合いとしては「商品」のみを指しますが、「コモディティ投資」や「コモディティ化」となると意味が異なるため、それぞれ覚えておきましょう。
コモディティ投資とは
コモディティ投資とは「商品取引所で取引されるコモディティ(商品)=銘柄に対する投資」のことです。商品先物取引のことを指す場合もあります。
具体的なコモディティとして、エネルギーはガソリン、灯油、原油、貴金属は金、銀、プラチナ、農産物は小麦、米、とうもろこしなどがあります。
現物を直接購入して保有することもできますが、商品先物市場での投資が一般的です。例えば、投資信託やETF(Exchange Traded Funds;上場投資信託)を利用すれば、現物を保有することなく効率的な投資が可能になります。現物を保有すると盗難や保管場所のリスクが伴うためです。
コモディティ投資のメリット
コモディティ投資の主なメリットを紹介します。
分散投資できる
コモディティ投資は分散投資が可能であることがメリットです。コモディティ商品の価格変動は、商品ごとに天候や在庫などさまざまな要因に影響を受けているため、株式市場とは異なる価格の変動があります。そのため、証券の株式投資と組み合わせることでリスクを分散できるのです。
インフレに強い
また、現金の価値が下落して物の価値が上昇するインフレに強く、インフレによって価格が上がる傾向があるところもメリットです。コモディティ投資を行うことは、価格高騰に対してのリスクヘッジとなり得ます、
コモディティ投資のデメリット
一方で存在する、コモディティ投資の主なデメリットも紹介します。
為替リスクがある
コモディティ投資は、外国資産の商品が多く、外貨建てで決済するのが一般的です。そのため、為替リスクが発生することがデメリットといえます。為替リスクとは、為替相場の変動によって、資産の価値が上下する可能性を意味する言葉です。例えば円高のときは価格が下がり、円安のときは価格が上がるということが生じます。
価格変動が予測しづらい
価格の変動の予想が難しいことも、コモディティのデメリットとなります。コモディティ投資では、商品ごとに価格変動の要因がさまざまで、例えばエネルギーや貴金属は為替レートの影響、農産物は天候の影響を受けやすいなどの傾向にあります。また政治や世界情勢の変動、突然の災害などは事前の予測がしづらいため、価格変動が読みにくいのです。
コモディティ化とは
さてコモディティ化とは、「特定の分野における商品やサービスの品質が拮抗(きっこう)することで、競合との差別化が図れなくなった状態」のことです。市場が画一化している状態を指す場合もあります。
コモディティ化の原因
多くの分野では技術力や品質を向上させることで、競合との差別化を図り、消費者に選ばれる工夫を行ってきました。しかし、現在は情報化社会やグローバル社会の発展により、さまざまな商品やサービスの差異は少なくなっています。
成長した市場では独自性のある商品やサービスを開発しても、すぐに類似の商品やサービスが後追いで販売されてしまうものです。すると、消費者はオリジナルの商品がわからず、全て同じ商品に見えてしまいます。そのような環境で機能や品質が同じような商品ならば、消費者は価格の安い商品を選びやすくなるのです。
コモディティ化した市場は消費者目線になると、手頃な価格で高品質の商品が手に入りやすいため、喜ばしい状況といえます。しかし、企業やメーカー、個人でビジネスをしている側からすると、価格の値下げ合戦に巻き込まれて消耗する可能性がある危険な状態です。
そのため商品やサービスの価格以外で差別化できるポイントを見極めて、新たな戦略を実現させることでコモディティ化を避けることが推奨されます。
コモディティ化の問題点
コモディティ化の問題点は品質や機能による競合との差別化が行えないことです。差別化を行えないことで起こる問題を解説します。
商品で特化できない
コモディティ化した市場において、特化した商品を開発するのは難しくなっています。成熟した市場では素材やノウハウが手に入りやすいため、まねされにくい独自性の高い商品やサービスを作るには、他社とは異なる独自の視点が必要です。
高度経済成長期の日本は高い技術力を持った企業を中心に、世界に対しても戦えていました。しかし、現在は「低コスト・大量生産」が主流となり、低価格でなおかつ品質もよい商品が海外からも大量に入ってきます。結果的に商品で特化することが難しいい状態なのです。
商品の価値が著しく下落する
商品で特化することが難しい場合に、安易に低価格路線を目指すと、市場や商品の価値が極端に低くなる可能性もあります。
価格を下げると利益率も下がります。そして、価格競争が始まり、価格が安止まりしてしまうのです。時にはデフレを引き起こしてしまい、企業や市場の成長速度も下がる負のスパイラルに陥ります。
コモディティ化による影響
コモディティ化した市場では消費者以外の立場にも悪い影響が生まれます。具体的に解説していきましょう。
よい商品を作るだけでは勝てない
高品質の商品を作っただけではコモディティ化した市場では競合に勝てません。現代は情報の入手が容易になったため、技術やビジネスモデルの模倣は簡単です。
模倣を避けるためには情報リテラシーを高めるなどして情報に対する感度を上げ、時には特許権の申請を行い、知的財産権を確保する必要があります。
人のスキルもコモディティ化する
コモディティ化は一部の商品やサービスだけの話ではありません。個人のスキルや経験もコモディティ化しており、かつては希少だった人材が埋もれていく時期が来ています。
理由としては専門的なスキルや珍しい経験を体得するコストが低くなっているためです。インターネットやSNSでは、世界中でノウハウや学習する手順が公開されており、場合によっては無料でそれらの恩恵を受けられます。
コモディティ化のスピードは減速しない
さまざまな市場の成熟とインターネットの普及により、商品もスキルもコモディティ化しやすくなっています。小規模または個人でビジネスを新たに始める人には模倣しやすい状況は追い風ともいえますが、長期的にビジネスを続ける上ではコモディティ化をいかに避けるかは大きな課題です。
コモディティ化はますます加速していくことが予想されます。価格競争に巻き込まれないためにも、対策をしていきましょう。
コモディティ化の対策
今後ますます進んでいくコモディティ化に対して、できることはないのでしょうか。コモディティ化から逃れるための対策を解説します。
商品の考え方や切り口を変える
新たな機能を持つ商品の開発や既存商品の内容を改善しても、いずれは競合に模倣されて差がなくなってしまいます。
そこで、「よい商品」の考え方を変えてみましょう。機能や価格以外にも、販路や宣伝方法、コンセプト、見せ方など、さまざまな角度から「何がよい商品なのか」を考えていきます。
商品の機能やビジネスモデルとは異なり、考え方や切り口は競合も模倣しにくい部分です。
コンセプトを確立する
商品の機能強化も大切ですが、商品コンセプトやブランディングを明確にしましょう。開発された背後にあるストーリーや商品を通して顧客にしてほしい行動などを具体的に示します。
コンセプトを確立することで商品の付加価値となり、模倣が難しいオリジナリティーを訴求できるのです。顧客目線を忘れずに、アプローチの方法を変えていくことがコモディティ化からの脱却につながります。
コモディティの意味や仕組みを正しく理解し、ビジネスに生かそう
コモディティの基本の意味や、コモディティ投資、そしてコモディティ化について解説しました。
コモディティは商品という意味を持ちますが、コモディティ投資となると、貴金属や小麦、原油などの商品銘柄に対する投資のこと、あるいは商品先物取引のことを指します。
またコモディティ化となると、特定の分野で拮抗した商品が競合との差別化を図れなくなった状態のことをいいます。それぞれの意味をしっかり理解しておきましょう。