誕生50周年を迎えた東ハトの大ヒット商品「キャラメルコーン」。現在、そんな時代を超えて愛されるキャラメルコーンの開発を担当しているのが、東ハトの商品開発第一課 前田雅也氏だ。飽くなき挑戦と斬新なアイデアを生み出す原動力、そして前田氏の仕事にかける思いを聞いていきたい。
50周年を迎えた東ハト「キャラメルコーン」
東ハトの人気商品「キャラメルコーン」は2021年で誕生50周年を迎えた。その歴史は1971年にアメリカのポップコーンに着目し、当時日本になかった甘いスナック菓子の開発をスタートさせたことに始まる。
味を連想しやすい「キャラメルコーン」という名称で発売されたこの商品は、またたくまに大ヒット。他に類似する商品もなく、甘いスナック菓子というジャンルにおいて現在も市場を独占するロングセラー商品となっている。
そんなキャラメルコーンのターニングポイントと言えるのが、2003年のパッケージ変更だ。この時誕生したのが、現在はすっかりおなじみとなった「キャラメルコーンくん」。それまで利用されていた、中身が見えているような写真を配したデザインを生かしつつも、親しみを感じられるキャラクターが生まれた。
「大好きなキャラメルコーンに関わりたい」から東ハトへ転職
世代を超えて愛されるロングセラー商品「キャラメルコーン」。現在、その開発を担当しているのが、商品開発第一課で係長を務める前田雅也氏だ。
前職では食品会社等に対してプロモーションやデザインを提案する仕事をしていたが、メーカーでモノづくりに携わりたいという思いから転職を決意したという。
そして、子供のころから一番好きなお菓子だったキャラメルコーンを作っている東ハトに応募し、見事に採用を勝ち取った。入社後は、まずそれまでのキャリアから広報・広告宣伝課に配属。その後、かねてより希望していた現在の商品開発第一課へと転属になったそうだ。
試行錯誤が続けられた新レギュラー商品
キャラメルコーンといえば赤いパッケージのキャラメル味が大定番。だが2020年、新たに2つの商品がレギュラーの仲間入りを果たした。それが、アーモンドの絶妙な香ばしさが加わった「アーモンドキャラメルコーン」と、焦がしキャラメルのほろ苦さが大人に人気の「ビターキャラメルコーン」だ。前田氏は、この2商品の開発がこれまででもっとも大変な仕事だったと話す。
「さまざまなフレーバーを展開してきたキャラメルコーンですが、定番のキャラメル味ほど定着する商品は作れなかったのです。では、どのような味なら定着するのか。さんざん議論を重ねましたが、結局残るのはキャラメル味でした。みなさんはキャラメル味が好きで、キャラメルコーンを買っているわけですからね。そこで『なら、違うキャラメル味を作ろう』と発想を変えて、ようやく誕生したのが『アーモンドキャラメルコーン』『ビターキャラメルコーン』です」
定期的に発売される斬新なフレーバーも話題に上ることが多い。過去にはクリームソーダ味やラムネ味、練乳いちご味など特徴のある商品が展開されている。現在は50周年記念商品として「果実のキャラメルコーン・メロン味/パイン味」が期間限定で展開されている。こちらは旬の果実そのものの味を再現したという、東ハトの自信作だ。
前田氏は「開発やマーケティングには『いろいろなことをやりたい』という人間が多いので、商品のアイデアはとにかくみんなでひねり出します。ひらめきと市場性のバランスが悩ましいところですが……」と話しつつ、自身のアイデアの源泉について語ってくれた。
「自分の中にないアイデアは決して出てこないので、普段の生活やこれまでの経験から引っ張り出すことが多いように思います。常に商品のことが頭の片隅にありますね。例えばテレビを見ていても、『これ使えそうだな』とか『こういう狙いだろうな』と無意識に考えてしまいます。『やりなさい』と指示されたらできないかもしれませんが、『好きだから自然にそうしている』というところはあると思います」
そんな前田氏が「仕事をする上で一番うれしい瞬間」と語るのは、関わった商品を実際に店頭で手に取り、購入してもらった時だという。
「そういう時は本当にうれしくて、握手して『ありがとうございますっ!!』と言いたいくらいの気持ちです。でも実際にやるわけにはいかないので、ニヤニヤしながら陰でその様子を見てます(笑)。もちろん、数字として売り上げは普段からチェックしてるんですよ。でもやっぱり、実際に売り場で買っている人を見るときに一番喜びを感じますね」
前田氏の「仕事の流儀」と若い方へのアドバイス
先人からキャラメルコーンというブランドを受け継ぎながらも、新しい商品へのチャレンジを欠かさない前田氏。ここで、同氏の仕事の流儀を伺ってみたい。
「大げさなことは何もないと思います。『本気になること、以上。』ですね。本気で何かをやろうと思うと必然的に色々なことを考えますし、色々なことが見えてきます。また仕事仲間や取引先にもその思いは伝わります。そして相手に『本気だな』と感じてもらえたら、本気で応えてもらえます。それに、仕事のモチベーションも保てますよね」
そして、自身が仕事を行う上で心がけていることを踏まえ、若いビジネスパーソンに次のような言葉を送る。
「僕が心がけていることは『常に考え続けること』、これに尽きると思います。世の中には正解かわからないことがとても多くて、僕自身もよく迷っています。考え続けてももちろん絶対の正解はありませんが、以前はわからなかったことがわかるようになります。若い方には、昨日から今日になって、1ミリでも自分が前進したと思えるなら、成果が出ていなくても考え続けてほしいですね。自分を信じて続けたら、一年後、二年後に自分は変化していて、それが成果に繋がっていると思います」
50年後にもキャラメルコーンを引き継ぎ愛され続けるように
50年の歴史があるキャラメルコーンのファン層は厚く、その味は数世代にわたって親しまれている。東ハトのWebページでは現在、50周年を記念した「うたエルコーン」キャンペーンも行われており、東京スカパラダイスオーケストラが懐かしの曲をリメイクした「うたエルコーン スペシャルムービー」や、拡張現実を用いてキャラメルコーンくんと一緒に踊れる「ARフィルター」、そして「ダンス動画投稿キャンペーン」なども行われている。
50周年ということで、キャラメルコーンの開発という重責を担う前田氏には並々ならぬ思いがあることだろう。最後に、前田氏にこれからの抱負とファンへのメッセージをいただいた。
「キャラメルコーンは50年もの長い間続いているブランドです。大先輩が生み出し、磨き続けてきてくれたもので、いま我々が商売をやっていけています。これをさらに磨き続け、50年後の後輩たちにも引き継いでもらわなければなりません。そのためにも、50年の間キャラメルコーンを支えてくれた東ハトのファンの方々に喜んでもらえる仕事をしなければいけない、そのための商品づくりをしなければならないと常々思っています。東ハトのお菓子をこれからもよろしくお願いいたします」