台湾の複数のメディアが、TSMCのサプライヤからの情報として、同社がソニー、トヨタ、三菱電機の3社と合弁で日本で半導体前工程工場を建設するとのうわさがでていると報じている。

それによると、TSMCと日本企業3社で、総投資額4000億NTドルを折半出資する形で、20~40nmプロセスを採用した月産5万枚規模のファブを日本に建設するが、建設地は熊本とは限らないという。

ソニーはイメージセンサや周辺ロジックチップ、トヨタは車載半導体、三菱電機はパワー半導体をそれぞれ製造委託するというが、3社以外からの製造委託にも応じるという。

ただし、TSMCは中国に進出する際にしても、技術漏洩を恐れて中国側が提案した合弁事業形式ではなく、単独出資で工場を建設しており、日本でも合弁とするとは考えにくいが、もし、日本で合弁プロジェクトが実現したら、TSMCは従来方針を根本的に変更したことになると台湾メディアは分析している。

これに対してTSMCは業界や市場のうわさ話には、従来通り一切コメントしないとしているほか、同社からは、2021年は日本に設置したばかりの3次元IC研究施設(TSMC Japan 3DIC research and development center:TSMC Japan 3DIC RD Center)の立ち上げに注力する時期であることが強調されたとも台湾メディアは伝えている。

TSMCの日本でのファブ建設の動きなどに関しては、2021年5月に一部の新聞が「経済産業省(経産省)主導で、TSMCがソニーと合弁で熊本にファブを設置する構想がある」と報じたが、その内容としては、候補地としても北九州市なども挙がっていると、流動的なものとなっていた。

また、6月にも一部の新聞がTSMCに出入りする複数のサプライヤからの情報として「TSMCが日本にファブ建設の検討を開始した」との記事を掲載したが、今回の件も含め、いずれもTSMCからの正式な発表ではないことに注意が必要である。

そのため、今回のTSMCとソニー・トヨタ・三菱との合弁に関する真偽についても、TSMCからの正式な発表を待つ必要がある。ただしTSMCは現在、米国アリゾナ州での新ファブ建設と運営に注力しており、同社の売上シェアで4%程度の日本に工場を設置するような状況にはないとの見方が台湾業界関係者や台湾メディアの一部にはある。

日本での3D IC研究に向けた人材募集が開始

なお、現在TSMCでは、横浜市内にある同社日本法人オフィス内に「TSMC Japan 3DIC RD Center」を設立し、以下のような職種に関する人材の募集を開始している段階で、9月にはつくば市に移転し、研究業務を始めたいとしている。

  • 材料分析技術者(研究センタ内に分析ラボを立ち上げ、パッケージ材料の物理的・化学的分析、国内ベンダーから納入される材料の検査および納入業者監査、先端製品で使う材料の仕様作成など)
  • アセンブリ・パッケージ集積技術者(CoWoS:Chip-on-Wafer-on-Substrate)、InFOoS(Integrated Fan Out on Substrate)、MCM(Multi-Chip Module)などのチップ集積技術および歩留まり向上および不良解析)
  • 3D IC設計者(横浜みなとみらいにあるTSMCジャパンデザインセンター(JDC)勤務、以下すべて)
  • 3D IC開発者(熱解析、SI(シグナルインテグリティ)解析、PI(パワーインテグリティ)解析)
  • テストチップ設計者/マネージャー