レノボ・ジャパンは5月28日、2025年度の業界・ビジネスを振り返るとともに2026年の展望を語る事業戦略説明会を開催。同社代表取締役社長の檜山太郎氏らが登壇し、プレゼンテーションやパネルディスカッションを通じて“AI時代”の業界分析や想定される課題への方策を説明した。

  • レノボ・ジャパンの檜山太郎社長

    レノボ・ジャパンの檜山太郎代表取締役社長

“PC特需”が過ぎ、事業成長エンジンは一気にAIへ

レノボのグローバル規模における2025/2026年度決算では、売上規模が過去最高となる831億米ドル、全ビジネスセグメントでの大幅成長によって前年比成長率は20%に上ったことが明かされていた。特にAI関連の急成長が目立つのは同社も例外ではないといい、檜山社長は「AI領域の売上は前年度から2倍以上に拡大した」とする。またレノボ・ジャパン単体で見ても、売上は前年度比20%増、利益は前年度比30%増と成長を遂げているといい、「今後も開発への投資を進めながら、日本の産業界に貢献していきたい」との考えを語る。

  • レノボのFY25-26コーポレート業績概要

    レノボのFY25-26コーポレート業績概要(提供:レノボ・ジャパン)

着実な売上拡大を印象付けるレノボ・ジャパンだが、近年その成長を牽引してきたのはPC需要の急拡大だった。国内におけるPC出荷台数の規模は2025年度に1930万台にまで伸長したが、このトレンドは2025年10月のWindows 10のEOS(サポート終了)や政府による「GIGAスクール構想」を背景としたもの。こうした特需を過ぎた2026年度の出荷台数は1330万台に減少すると予測されている。ただこれについて檜山社長は「基本的な捉え方は“市場が元に戻る”というもの」とし、「日本市場では非常に安定したビジネスが展開されており、今後も大きな変化はない見込み」とした。

一方で、これからの成長のキーファクタとして期待を寄せたのがAIシステムに関するビジネスだ。2024年時点で1兆円を超える規模での投資が行われてきた日本のAI市場は、2029年にかけてCAGR(年平均成長率)25.6%という急角度で成長が続くと見込まれ、その投資先も生成AIや音声認識など多岐にわたる。さらにAIシステムの実運用も多くの企業で始まっており、開発投資の費用対効果やAIの効果的な導入に対する検討など、より実践的なAI活用フェーズに入ったといえる。
  • 国内PC出荷台数とAIシステム投資市場の予測

    国内におけるPC出荷台数とAIシステム投資市場の予測(提供:レノボ・ジャパン)

檜山社長が語るレノボのAI戦略「Hybrid AI」

そうした時代の中でレノボがミッションとして掲げるのが、“Smarter AI for All”だ。檜山社長が目指すのは、「すべての個人・企業・学校・団体の方たちにAIの恩恵を届け、さらに実際の成果を上げてもらう」こと。ただ性能を高めるだけでなく、あらゆる人における利用のしやすさやインクルーシブなAI体験の実現にも力を入れていくとする。

同社が推進している戦略のひとつが、「Hybrid AI」である。これは、現代で広く用いられ始めているAIを、個人で利用される“Personal AI”、企業変革に貢献する“Enterprise AI”、そして誰もが気軽に利用できる“Public AI”の3つに分類した上で、それらをセキュアな環境下で自由に行き来しながら最適な効果をもたらすというもの。生活に不可欠なさまざまなデバイスやビジネスPCなどのあらゆる機器をタッチポイントとしつつ、クラウドともシームレスにつながることで、AIの効果を最大化することが目指されている。

  • レノボが推進する「Hybrid AI」

    レノボが推進する「Hybrid AI」とは(提供:レノボ・ジャパン)

調達、電力、コストなど迫る課題への対応が最重要

こうした具体的な方針のもと、急速な拡大を続けるAI開発。檜山社長によれば、AIの“学習”を担うデータセンターなどへの投資は想定通りの急速度で拡大している一方で、成果・効果に直結する“推論”につながる技術開発への投資は、予想されていた規模を大きく上回って拡大しているとのこと。部材の不足によるコスト増大や納期遅れをはじめ、人々のリソース不足も顕著だというが、レノボとしては、顧客のビジネスを遅れさせない、そして加速させていくためにも、日本国内に22か所展開される拠点に加え、グローバル規模で生産拠点やパートナーと密に連携することで、安定した供給体制を継続していくとする。

またデータセンターの拡大によりその影響が大きくなっている“消費電力量の増大”に対しても、対策の要請が高まっている。そうした中で今回レノボが紹介したのが、独自の直接液冷技術「Neptune」。消費電力を格段に抑える温純水での冷却や使用する水資源の削減などの強みを持ちながら、95%もの熱除去効率を発揮することで、最大40%もの消費電力を削減できるとした。

  • 直接液冷技術「Neptune」

    レノボ独自の直接液冷技術「Neptune」の概要(提供:レノボ・ジャパン)

今後も続くであろうAI投資規模の拡大に伴って、同様の速度感で消費電力が増大するとも予想される中、檜山社長は「顧客に製品・サービスを提供する企業として、しっかりと向き合わなくてはならない課題であり、2026年はその対応が重要な時期だと考える」とする。

続けて檜山社長は「非常に大きく時代が動いており、ニーズも変化し続けている中で、日本の産業界ではさまざまな企業がその価値を上げるために努力を続けている。ただその裏側には課題も多い中で、レノボとしてどう貢献していくのかが重要であり、私たちは“Hybrid AI”のような強みを活かして、それを実現できると確信している」と語った。

日立への包括的サービス導入も発表

檜山社長によるプレゼンテーションの後には、檜山社長に加えてレノボ・エンタープライズ・ソリューションズで代表取締役社長を務める張磊(チョウ ライ)氏、レノボ・ジャパン執行役員常務 ソリューション&サービス事業部の山口仁史氏の3名によるパネルディスカッションも展開された。

  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張磊社長

    レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張磊代表取締役社長

  • レノボ・ジャパン執行役員常務の山口仁史氏

    レノボ・ジャパン執行役員常務 ソリューション&サービス事業部の山口仁史氏

その中で山口氏は、説明会当日にレノボ・ジャパンとして発表した、日立製作所グループへのサブスクリプション型サービス「Lenovo TruScale DaaS」導入に触れた。同発表は、グローバル規模で展開する日立グループのPC調達・提供をレノボが一手に引き受けるもので、その規模は最大約17万3000台にも上るとのこと。さらに、AIエコシステムパートナーの増強に関する意欲ものぞかせており、今後もエコシステムを拡大させながら、さらなる強固かつ堅牢なサービス提供体制を築いていく方針を改めて示した。