あらゆる作品で圧倒的な演技力と存在感を放ち、日本を代表する俳優へと進化し続けてきた山田孝之。Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』では、“放送禁止のパイオニア”として時代の寵児となった村西とおるをエネルギッシュに演じ、見る者を驚かせた。近年は監督やプロデュース業にも乗り出すなど、ますます活躍の場を広げている彼だが、すべての原動力の源は、日本の役者、スタッフに感じている“誇り”。『全裸監督』を通して「『日本のスタッフ、キャストのみんな、自信を持って大丈夫だよ。世界でも通用するみたいだよ』という再確認ができた」と明かす山田が、シーズン2の見どころをはじめ、未来への意欲までを熱く語った。

  • 山田孝之

2019年8月に全世界独占配信されるや否や、キャスト陣の渾身の熱演と痛快なストーリーで一大旋風を巻き起こした『全裸監督』。シーズン2では、バブルが崩壊する1990年台代を舞台に、アダルトビデオ界の頂点に立った村西の次なる冒険と転落を描き出す。

とんでもなくチャレンジングかつ、パワフルなドラマシリーズだ。山田は「シーズン1を撮っているときは、『これを観た97パーセントの人は、“ふざけるな”と言うかもしれない。でも3パーセントくらいの人が、熱狂的なファンになってくれるかもしれない」と思っていたそう。結果、多くの人々に興奮とともに受け止められ「みんな、こういったものも面白がってくれるんだ。それならばシーズン2もしっかりと面白いものを作らなければ」と奮起したという。

今回の村西は、急激な時代のうねりとともに、どん底へと落ちていく。シーズン2の印象について、山田は「シーズン1のサクセスストーリーを面白いと言ってくれた人たちが、転落していくさまを楽しんでくれるのかな、という不安は少しありました」と吐露。「でも、それも落ち方次第。落ち方が面白ければ、観てくれると思った」と自信をのぞかせる。

早口で一気にまくしたてる姿も強烈で、周囲の人々は村西のカリスマ性に惹かれていくが、「シーズン2おいて、彼の魅力を感じた瞬間はあるか?」と聞いてみると、山田は「『全裸監督』の村西は、“終わっているな”と思いますよ。ひどいですよ」と笑いつつ、「死にたくなったら下を見ろ、俺がいる」という村西の言葉が、強く心に残っていると話す。

「きっと、どん底に落ちてしまった人に対して『どんな言葉をかけていいかわからない』という人がほとんどですよね。でもそこで、『死にたくなったら下を見ろ、俺がいる。俺ほど苦しくないだろう、まだ希望はあるから生きなさい』ということを村西は言っているわけです。これは、本当にすごい言葉。実はとても、愛がある人なのではと思ってしまう。こう思ってしまう僕も、村西に騙されているのかも」とにっこり。「この名言については、シーズン1をやる前から知っていました。シーズン2にはこの言葉が出てくるんですが、脚本をもらったときに『どういう言い方をしたらいいんだろう』と思った」とプレッシャーを感じながらも、「現場に行ったら、スッとあの感じが出てきましたね」と語る。

また、これまでは村西に「共感するところはないと思っていた」という山田だが、今回ある共通点を見つけたとも。「もちろん僕は村西よりもっと冷静だとも思いますし、一人ではなにもできないと感じていますから、周りに相談したりもします。でも今回、村西が『生きていればいいよ』と言います。これは、僕も同じ考えです」

■リスキーな作品ではあるが「今やるべきだと感じた」

観ているこちらにも、本シリーズにこもる熱がビシビシと伝わってくる。『全裸監督』の現場にある、特別な熱気とはどのようなものなのだろうか。山田は「村西はアンチヒーローだし、共感できる人ではありません。こんなひどい人を主人公にしたドラマを作るわけですから(笑)、これはもう全力でやるしかない。『この主人公はクソ野郎だけれど、面白い。ひどいけれど、観てしまう』『なんだかすごいものを観てしまった』というものにするしかない。そういった気持ち、熱量は、みんなが持っていたと思います」と述懐。

地上波では放送できないようなセンセーショナルな内容となり、その中で“ひどい人”を演じるとなると、リスクを感じることもあったのでは……と想像するが、山田は「でも結局、なにをやっても批判をする人はいるわけで」と思いを巡らせる。

「毎回、10パーセントの人に批判されるとします。そういった批判される確率が、今回は90パーセントになるかもしれない。もしそうだとしても、いいじゃないかと思ったんです。僕はこれを面白いと思っているし、今やるべきだと感じた。もしそれで『この人とは今後の仕事はできません!』というクライアントがいたとしても、それは仕方ないなと。でもみなさん、とても寛大で。『全裸監督』に出たから、もうお付き合いをやめます! という人は、今のところいないんですよ」と楽しそうに話す。