日産自動車がコンパクトカー「ノート」のプレミアムバージョン「ノート オーラ」を発売する。ボディサイズはワイドに、インテリアは豪華に、パワートレインは強力になった新型車だが、ノートとは40万円程度の価格差がある。オーラはお買い得なのか、試乗して考えた。

  • 日産の新型車「ノート オーラ」

    日産の新型車「ノート オーラ」に試乗!

ノートとオーラの違いとは

「オーラ」というサブネームを含め、新型車の存在は以前から明らかになっていたが、今回は満を持しての発表となった。ただし発売は今秋。発表だけ先にしちゃって発売はしばらく後、というのは自動車メーカーが最近よくとる手法だ。発表と発売の2度ニュースにしたいという思惑と、存在を明かすことで消費者が他を買うのを防ぐ意味があると思われる。また、ここのところは半導体の供給遅れにより、スケジュール変更を余儀なくされるケースも増えている。

さて、年始に発売となった新型ノートは、シリーズハイブリッドシステム「e-POWER」と、クラストップレベルの内容をもった運転支援システム「プロパイロット」が実装されたコンパクトカーだ。他社がこのクラスのコンパクトカーにハイブリッドとガソリン車を設定するのに対し、日産は自社の電動戦略に基づいてハイブリッドのみのラインアップとしている。「ハイブリッド」ではなく必ず「e-POWER」と称することで、他社のハイブリッドと一線を画すイメージづくりを行っているのも日産の特徴だ。

新たに登場したノート オーラはノートの上級モデル。まず、デザインが差別化されている。タイヤを外側に張り出し、ボディサイドのパネルもそれに合わせたデザインとした。これにより、ノートに対し全幅は40mm拡大。コンパクトカーにとって幅40mmの違いはけっこう大きく、ひと目で違うフォルムだと気づく。

  • 日産の「ノート」と「ノート オーラ」

    左が「ノート」、右が「ノート オーラ」

ワイドボディはたいていカッコよく見えるものだが、ノート オーラも明らかにノートより迫力がある。そのほか、専用デザインの薄型LEDヘッドランプ(常時点灯するデイタイムランニングランプ付き)や樹脂加飾付きの17インチアルミホイールなども採用している。

  • 日産の「ノート」と「ノート オーラ」

    ワイドボディ化した「ノート オーラ」(右)。車体は3ナンバーサイズとなった

  • 日産の「ノート」と「ノート オーラ」

    樹脂加飾付き17インチアルミホイールは軽量化にも貢献

インテリアもノートより豪華だ。さまざまな表示パターンをもつ12.3インチフル液晶メーターを採用しているほか、本革ステアリングホイール、ツイード表皮と木目調パネルを組み合わせたインパネ、レザーシート、BOSEがノート専用に開発したサウンドシステムを選べるなど、差別化ポイントは多様。内外ともに、一見してノートよりもゴージャスな仕様という印象だ。

  • 日産の新型車「ノート オーラ」

    インテリアも「ノート」より豪華に

見た目のみならず、動力性能もアップした。エンジンやe-POWERシステムそのものはノートと同じだが、最高出力が85kWから100kW(18%アップ)へ、最大トルクが280Nmから300Nm(7%アップ)へと進化した。ノートも100%モーター駆動の特性をいかし、発進を含む加速性能に優れるクルマだが、それでも同じコースで交互に乗り比べると、ノート オーラのほうが全域で力強いのがわかる。内燃機関でいえば、排気量が2割増しになったような印象だ。

オススメは4WD

ノート同様、ノート オーラでもFWDと4WDを選べる。当然、4WDのほうが高価なので、実用車の場合、普段であればほとんど積雪しない地域の人に4WDをオススメすることはないが、ノート オーラに関しては、事情が許せば4WDをオススメしたい。というのもモーター駆動車の場合、発進とともに大きなトルクが発生するため、前2輪よりも前後4輪で駆動したほうが1輪が受け持つトルクが減ってスリップしにくく、効率よくスムーズに加速できるからだ。雨の日などは、特に4WDのありがたみを実感できると思う。

もうひとつ、モーター駆動車では、エンジン駆動車のエンジンブレーキに相当する回生ブレーキが働くが、4WDであれば4輪ともに回生ブレーキが利くため、スムーズに減速しやすく、減速時の車両姿勢も安定させやすい。

  • 日産の新型車「ノート オーラ」

    「AUTECH」と福祉車両を除くと、「ノート」は2WDが202.95万円~218.68万円、4WDが228.8万円~244.53万円。オーラは2WDの「G」が261.03万円、4WDの「G FOUR」が286.88万円。ノートの上級グレード「X」とオーラを比べると、どちらの駆動方式でも価格差は42.35万円となる

今回、テストコースの高速周回路やスラローム路でFWDと4WDを乗り比べてみて、それを如実に感じた。ノート オーラには「スポーツ」「ノーマル」「エコ」の3つの走行モードがあるが、このうち、回生ブレーキを積極的に作動させるスポーツとエコで走行した場合、ステアリングを切り込みながらアクセルペダルを戻して減速する際、FWDだとリアが浮いて後輪の接地感がやや薄まるのに対し、4WDなら減速とともにリアも踏ん張りを増すような感覚を得られ、安心感が高かった。絶対的な動力性能は同じなので速さは同じだし、厳密にいえば4WDのほうが重い分、わずかに遅いはずなのだが、4WDのメリットはデメリットを大きく上回る。

迫力ある外観、豪華な仕立ての内装、上乗せされた動力性能と、ノート オーラは全方位的にノートよりも魅力的なクルマになっていた。唯一不満なのは、ドアを閉める際の「バタン」というやや低級な音。閉め方で目立たないようにはできるが、両手に荷物をもっていることもあるし、自分だけが閉めるわけでもない。上級版をうたうなら、一日に何度も耳にする音に気を使ってほしい。

  • 日産の新型車「ノート オーラ」

    ドアの閉まり音は気になるポイントだ

ノートに対して約40万円の価格アップとのことだが、ノートではオプションの装備がノート オーラでは標準装備となっているなど、細かく装備の違いを検証していくと実質的な価格差はその半額程度に縮まる。e-POWERとプロパイロットというエッセンシャルな魅力はノートにも盛り込まれているので、見比べ、乗り比べたうえで選びたい。