「浮き足立つ」とは、「不安や恐れを感じて落ち着きがなくなる」という意味の言葉です。「気分が浮かれる」などの意味と誤解されがちなので注意しましょう。
浮き足立つはビジネスシーンでも使われる言葉なので、誤用を避けるためにも正しい意味と例文を覚えておきたいところです。本記事では、浮き足立つの意味や語源、使い方などについて詳しくご紹介します。
「浮き足立つ」の意味
浮き足立つは「恐れや不安で落ち着かなくなる」という意味の言葉です。不安や緊張が大きくなり、その状況から逃げ出したくなる気持ちをさしているため、基本的にはネガティブな意味で使われます。
意味を間違えやすい言葉なので、正しい意味と誤用されやすい理由も知っておきましょう。
楽しみな様子を表す意味で使うのは誤用
浮き足立つは「浮く」という言葉にあるイメージのせいか、「ウキウキした様子」をあらわす言葉として使われることがよくありますが、これは誤用です。
例えば、「久しぶりに彼に会えるので気分が浮き足立つ」と言った場合は、「緊張や不安がいっぱいで逃げ出したい、会いたくない」というマイナスイメージの意味合いになってしまいます。お互いが異なる解釈をしてしまうと思わぬトラブルとなるので気をつけましょう。
嬉しいときは「浮き立つ」を使う
嬉しい気持ちを表現するときには、「久しぶりに彼に会えるので気持ちが浮き立つ」のように「浮き立つ」を使うのが正解です。嬉しくて落ち着かない気分や、上機嫌な様子をあらわすときには「浮き立つ」を使いましょう。
なお、「気分がウキウキして落ち着かないさま」をあらわす言葉には、「浮き立つ」のほかに「浮かれる」や「浮つく」などがあります。
「浮き足立つ」の語源
浮き足立つは、かかとが地についていない「つま先立ち」の状態が語源になっています。「浮き足」という言葉は室町時代から見られますが、「不安で落ち着かない」という意味で使われるようになったのは江戸の後期からです。
つま先立ちの状態はフラフラと安定性に欠けてバランスが取れなくなるため、その様子が「落ち着きのない」という意味に転じたと考えられています。
「浮き足立つ」の使い方・例文
不安や緊張が原因で浮き足立つ状態になるわけですが、「心配や不安があること」を表現するために「心が浮き足立つ」や「気持ちが浮き足立つ」のようにして用いるのが一般的です。「浮き足」単独で使われるケースはほとんどありません。
使い方を間違えないようにするためにも、例文を覚えておきましょう。
浮き足立つの正しい例文
ビジネスシーンでも違和感なく使える例文をご紹介します。
「いよいよプレゼンが迫ってきた。心が浮き足立って集中できない」
「不安で落ち着かない」を意味する正しい使い方をした例文です。実際にプレゼンが近づいてくれば、誰でも心が浮き足立ってしまうのではないでしょうか。
「仕事上のミスを上司に報告することを考えると、気持ちが浮き足立つ」
失敗を上司に報告する際に、緊張して落ち着きがなくなるのは当然のこと。現実にはあまり起きてほしくない出来事ですが、「気持ちが浮き足立ってしまう」のは理解できると思います。
「会社が倒産するという話を聞いて、社員全員が浮き足立っている」
個人の気持ちだけではなく、対象が「社員全員」のようなケースにも使える表現です。会社倒産の話を聞けば、不安や緊張で全員の気持ちが浮き足立つのも無理はありません。
「浮き足立つ」の類語
浮き足立つの類語をご紹介します。
地に足がつかない
「地に足がつかない」は「喜びや緊張で気分が落ち着かない」という意味の言葉です。浮き足立つとほぼ同義ですが、プラスイメージの言葉としても使えます。なお、現在では「地に足がつかない」という言い方が一般的になっていますが、「足が地に着かない」が正しい表現です。
浮腰
「浮腰」は「動揺して落ち着かないこと」を意味する言葉です。力が入っていない不安定な腰の姿勢や状態から「逃げ出そうとしている様子」を意味するようになりました。基本的には「逃げ腰」と同じ意味で使われます。
気もそぞろ
「気もそぞろ」は、「ある事柄に心を奪われて気持ちが落ち着かない様子」を意味する言葉です。「そぞろ」には「そわそわして落ち着かない様子」や「心がそちらに動いていく様子」などの意味があり、古語として徒然草などでも使われています。
「浮き足立つ」の対義語
浮き足立つの対義語をご紹介します。
安定
「安定」は「ものごとが落ち着いて変化がないこと」を意味する言葉です。「気分が安定する」や「気持ちが安定している」などの使い方ができます。
落ち着き
「落ち着き」は「態度や言動が安定していること」を意味する言葉です。「今は落ち着いている状態」や「落ち着き払った人」などと表現されます。
冷静
「冷静」は「感情に左右されず落ち着いていること」を意味する言葉です。緊張して逃げ出したくなるような状況でも落ち着いていられる人は「冷静な人」などと言われます。浮き足立つとは真逆の心境と言えるでしょう。
「浮き足立つ」の英語表現
浮き足立つの英語表現をご紹介します。
become restless
「become restless」は「落ち着きがなくなる」という意味ですが、そのまま浮き足立つと訳せます。気持ちが浮き足立っていることを違和感なく英語で伝えたいときには最適な表現です。なお、「restless」は「落ち着きがない」を意味しています。
get restless
「get restless」には「動揺する」や「落ち着きを失う」といった意味があります。この表現も浮き足立つの訳として使えます。
be ready to run away
「be ready to run away」には、「逃げ腰になる」という意味がありますが、そのまま浮き足立つとして訳しても問題ありません。
「浮き足立つ」を使うときは誤用に注意
浮き足立つは、「不安や恐れを感じて落ち着きがなくなる」という意味の言葉です。マイナスのイメージがある言葉なので、ビジネスシーンでの誤用はとくに注意しましょう。楽しい気分をあらわすときには「浮き立つ」を使います。
誤用しやすい言葉なので、正しい意味だけではなく語源や類語も理解したうえで活用したいもの。浮き足立つの訳としてそのまま使える英語表現もあるので、合わせて覚えてスマートに表現しましょう。