「飛翔」という言葉は、年賀状や色紙、何かの名称などで、しばしば目にする機会がある言葉のひとつです。「飛ぶ」「翔る(かける)」と、どちらも羽が元になっている文字であることから、何となくの意味は想像できるかもしれません。しかし、「翔」は名前ではよく使われる漢字ではあるものの常用漢字ではないことから、「飛翔」の正確な意味を知らない人も多いでしょう。

この記事では、「飛翔」の意味や使い方を紹介します。また「飛翔」の類義語や、英語表現についてもまとめました。

  • 「飛翔」の意味や使い方

    「飛翔」の意味や使い方などを紹介します

「飛翔」の意味や使い方

「飛翔(ひしょう)」とは、空高く飛びめぐることを意味する言葉です。もともとは昆虫や鳥などの動物が大気中を飛ぶことをあらわしていましたが、現在では飛行機や物体が飛ぶときや、気持ちなどをあらわす場合にも使われています。

「飛翔」の成り立ち

「飛翔」は、「飛ぶ」と「翔る(かける)」という2種類の漢字から成り立っています。

「飛ぶ」とは羽を広げて飛んでいる鳥の姿からできた漢字で、意味は「空中を移動することや飛行する」です。「翔る」には「羽」という漢字が含まれていることから想像できるように、「鳥や飛行機などが、空高く飛ぶこと」などを意味しています。

つまり「飛翔」は、2種類の似た意味を持つ漢字を組み合わせて成り立っている熟語です。

「飛翔」を使った言葉

「飛翔」が含まれる言葉として代表的なのが「飛翔体」です。空中を飛んで移動する物体をあらわしています。

ニュースなどで他の国から発射されたロケットのような物体を指して、「飛翔体」と表現しているのを聞いたことがある人も多いでしょう。

A国から弾道ミサイルと思われる飛翔体が発射されました

  • 「飛翔」の意味や使い方

    「飛翔」は動物や物体が飛んで移動することを意味しています

「飛翔」の使い方と使用シーン

「飛翔」は本来、鳥などの動物が空を飛んで移動する際に使われる言葉ですが、使用の幅が広がっており、さまざまなシーンで使うことができます。実際にどのようなシーンで使われているのか、確認していきましょう。

飛んでいく様子をあらわす場合

「飛翔」を使うのに最も適しているのは、鳥や虫などが飛んでいく様子をあらわすときです。鳥が翼を広げて飛ぶ様子や、昆虫が羽を使って飛ぶことなど、羽がある動物が飛んでいく場合、「飛翔」が使われます。

<使用例>

  • 蜜蜂が花からさっと飛翔していった。
  • 翼を広げた鷹が飛翔するさまは見事であった。
  • 代表的な飛翔動物は、鳥と昆虫だ。

色紙に一言書く

「飛翔」は、スローガンを掲げる場合や、色紙へ一言添える場合などに「鳥が羽ばたくように活躍したい」などの意味を込めて使われることも多いです。また、企業や団体、モニュメントなどの名称に使われることもあります。

たとえば、2018年には有名な棋士が新年の抱負として「飛翔」を用い、その後「飛翔」が印字されたグッズが販売されたこともありました。スポーツ選手の好きな言葉に選ばれることも多く、色紙へ一言添える際によく見かける言葉のひとつです。

年賀状

「飛翔」は、企業が年賀状に添えるスローガンなどにもよく用いられます。鶴など縁起がいいとされる鳥が飛翔するイラストや、「飛翔」と書いた筆文字などがデザインされた年賀状はごくごく一般的です。

また、新年の挨拶として「飛翔の年にしたい」などと用いられることもありますが、「飛躍」との混同が疑われる使い方もあります。完全に間違いという訳ではありませんが、意味を理解した上で使うようにしましょう。

  • 「飛翔」の使い方と使用シーン

    「飛翔」の意味を理解して使いましょう

「飛翔」の類語・言い換え表現

動物が羽ばたく様子をあらわす「飛翔」は、似た意味を持つ言葉がいくつかあります。どんな言葉があるのか、見ていきましょう。

飛躍

「飛躍」は、「飛び上がることや跳躍すること」などの意味がある言葉です。そこから意味の幅が広がっており、「発展して大活躍すること」「段階を踏まずに、急に移動すること」など、幅広く使われています。

「飛ぶ」を意味する点では「飛翔」の類義語といえますが、どちらかというと「ジャンプ」に意味が近いです。

天高く舞う

「天高く舞う」とは、「羽や翼で空を飛ぶこと」をあらわす言い回しです。「飛翔」のもともとの意味と同じであり、類義語として言い換えができます。

同じような言い回しは多く、下記のような言葉でも言い換え可能です。

  • 天駆ける・天翔る(あまかける)
  • 羽ばたく
  • 空高く飛ぶ

「飛行」の意味

「飛行」とは「空中を飛んでいくこと」をあらわす熟語です。もともとは仏教用語で、神通力のあらわれとして空中を自在に駆け巡ることを意味する言葉でした。現在は飛行機などの物体や鳥などの動物が空中を飛ぶ場合に使われ、「飛翔」とほぼ同じ意味として用いられています。

  • 「飛翔」の類義語には何がある?

    「飛翔」の類義語とのニュアンスを理解して使い分けましょう

「飛翔」の英語表現

「飛翔」はいくつかの英語表現で言い換えできますが、何が飛ぶのかによって用いるべき言葉が異なります。「飛翔」の代表的な英語表現を紹介しますので、比較しながら見ていきましょう。

flying

「flying」とは、動詞「fly」が変化した名詞・形容詞で、「空を飛ぶ」「飛行する」「空中に浮かぶ」などの意味があります。他の名詞と組み合わせることで、「飛翔」の意味として使える言葉です。

  • flying robot(飛翔ロボット)
  • flying object(飛翔物体)
  • flying animal(飛翔動物)

動物・物体問わず使えますので、覚えておくと便利です。

jumping

「jumping」には、「跳ぶ」「跳び上がる」「跳躍する」などの意味があります。「jumping toy(飛翔玩具)」のように、比較的小さいものが大きく飛ぶ場合に使われることが多いです。

missile

飛んでいるミサイルをさして「飛翔体」と表現するため、「飛翔体」の英語表現として「missile」を用いるのが適切な場合があります。「missile」とは「ミサイルや飛び道具」などの意味を持つ名詞です。

  • missile guidance system(飛翔体誘導システム)
  • flight method of missile(飛翔体の飛翔方法)

使い方は限定されていますが、ニュースなどでは使用頻度が高い単語です。

in the sky

「in the sky」を直訳すると、「空にある」「空にいる」などです。そのため、鳥など飛べるものが空にいる場合などに「飛翔」を「in the sky」と表現します。

また、不思議の国のアリスの一節にある「Like a tea-tray in the sky.」という言葉は、「お盆のように飛翔している」などと訳されることがあります。

  • 「飛翔」の英語表現

    「飛翔」の英語表現は「flying」以外にもある

「飛翔」をさまざまな場面で活用しよう

「飛翔」は、空高く飛びめぐることや空中を飛ぶことを意味する言葉です。「羽」が元になった漢字が2つ使われており、もともとは昆虫や鳥などの羽を持つ動物が飛ぶ様子をあらわす言葉でした。しかし、現在では意味が派生して年賀状や何かのスローガンなどでも使われるようになっています。

「飛翔」は、これから大きく飛躍したい人にかける言葉や、年賀状の添え言葉などで使いやすい前向きな意味を持つ縁起言葉ですので、ぜひ覚えておきましょう。