長引くコロナ禍による新型コロナウイルス感染症患者の数を減らすべく政府は2020年4月7日、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を東京や神奈川などの7都府県に対して発出しました。2021年1月には2回目の緊急事態宣言を発出し、さらに同年2月には改正新型コロナ特措法に基づいた「まん延防止等重点措置」(まん防)を新設。4月5日には大阪府と兵庫県、宮城県で同措置が国内で初めて適用されました。
私たちの日常会話においても、「緊急事態宣言中はできるだけ家にいよう」「まん防の対象エリアだから外食は極力控えたいね」といった具合に緊急事態宣言とまん延防止等重点措置というフレーズがよく聞かれるようになってきました。
ただし、「この2つの違いを具体的に説明してください」と聞かれたら、答えに窮する人も少なくないことでしょう。そこで本記事では「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」(まん防)の違いをわかりやすく紹介します。
まん延防止等重点措置(まん防)と緊急事態宣言の違い
緊急事態宣言とまん延防止等重点措置(まん防)の主な違いを下記の表にまとめました。
緊急事態宣言 | まん延防止等重点措置 | |
---|---|---|
発出の目安 | ステージ4(感染爆発)相当 | ステージ3(感染急増)相当 |
期間 | 2年以内(トータルで1年を超えない範囲で延長可) | 6カ月以内(何回でも延長可) |
対象地域 | 都道府県単位 | 知事が指定する都道府県内の一部地域 |
対応可能な内容 | 「時短」「休業」ともに要請と命令が可能 | 「時短」のみ要請と命令が可能 |
命令違反をした際の罰則 | 30万円以下の過料 | 20万円以下の過料 |
国会報告 | 発令や期間延長などの際の報告を法律で義務づけ | 「速やかに報告すること」を要請(法的拘束力はなし) |
続いて、各項目をこまかくみていきましょう。
発出の目安
発出は、政府の新型コロナ対策分科会が提示した4段階の「ステージ」指標を基準としており、いずれも首相が行います。緊急事態宣言は最も高いステージ4が、まん延防止等重点措置はその前段階のステージ3に相当する段階が発出の目安となります。ちなみにステージ2は「感染漸増」、ステージ1は「感染散発」です。
期間
緊急事態宣言は2年以内ですが、合計1年を超えない範囲であれば複数回の延長が可能です。まん延防止等重点措置は何回でも延長ができますが、1回あたりの期間は半年(6カ月)以内です。
対象地域
緊急事態宣言は対象地域が都道府県単位です。まん延防止等重点措置はより小回りがきいたフレキシブルな対策が取れるよう、対象エリアをさらに小さく設定。都道府県内の特定の市区町村などに限定して適用できます。
対応可能な内容
緊急事態宣言では飲食店などに対し、「時短営業」および「休業」にかかる要請と命令ができます。また、国民に対する外出自粛も要請できます。緊急事態宣言よりステージが1つ前の段階であるまん延防止等重点措置は、「時短営業」に関してのみ要請と命令が可能です。
命令違反をした際の罰則
2021年2月に成立した改正特措法案は、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が適用されている最中において、「正当な理由なく」命令に応じなかった事業者に対して罰則を設けるよう定められています。
緊急事態宣言における命令違反は30万円以下、まん延防止等重点措置における命令違反は20万円以下の過料がそれぞれ科されます。
国会報告
緊急事態宣言は「発出」「期間延長」「区域の変更」などがあった際に国会に報告することが法律によって義務付けられています。まん延防止等重点措置は「国会に速やかに報告する」趣旨の付帯決議がなされているものの、付帯決議には法的拘束力がないため必ずしも報告する必要はありません。
医療従事者を中心に、国内でも新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が始まりました。国内での接種が承認・実施されているファイザー社のワクチンの有効性は海外での臨床試験では95%で、現時点で1億4,400万回分のワクチンがファイザー社から日本へと供給予定となっています。
まだ当面はコロナ禍が続くでしょうが、その「ゴール」がぼんやりながら見えてきました。気兼ねなく外食や旅行に行けるかつての日常が戻ってくるまで今しばらくステイホームを励行し、感染予防を実践していきましょう。