TSMCのMark Liu董事長(=会長、元CEO)は3月30日、台湾半導体産業協会(TSIA)理事長としてTSIAの年度大会に出席し、「世界的な半導体不足が生じたのは、不確定要素が増えてオーバーブッキング(重複発注)が増えているためで、特に28nmなどの成熟プロセスは、需要よりも全世界の生産能力の方が上回っている」と述べたと、複数の台湾メディアが報じている。

また、「最近、世界中の誰もが半導体不足の問題を懸念し、台湾で製造されている半導体に限って不足が起きているようにとらえる向きがあるが、実際には、今日の半導体不足は世界中のどこの工場でも起こっている問題であり、世界が台湾を誤解しないことを願っている」とも述べ、現在の半導体不足には以下のような3つの理由が主だってあるとしている。

  1. 新型コロナウィルス感染症の世界的な感染爆発により、不安が増したサプライチェーンの各所で在庫の蓄積がもたらされた。
  2. 不確実な要因の増大により、顧客がオーバーブッキング(重複発注)するようになった。特に米中貿易戦争によりサプライチェーンと市場シェアがシフトしたり、米中間の緊張により一部のサプライチェーンの移転が難しくなっている。サプライチェーンはより多くの不確実性に直面し、多重発注が常態化しているため、需要が多いように見えるが、実際の市場の需要より生産能力の方が大きいのが実情であり、単純に生産能力を増やせば問題が解決するわけではない。
  3. 新型コロナの流行によりデジタルトランスフォーメーションが加速し、在宅勤務などの仕事や生活パターンの変化により、半導体の需要が増加している。

特に、28nmプロセス品は不足しているように言われているが、実際には、世界の生産能力は依然として需要を上回っているという。

なお、TSMCでは、生産能力割り当てと実際の需要への対応に関して、全体的な分析を通じて、どの業界が最も緊急対応を必要とし、どの業界が在庫を減らしている可能性があるかを把握するために最善を尽くしているという。

また、今後の半導体需要については、5Gや人工知能(AI)の活用により、長期的な増加が見込めることから、TSMCでも顧客の需要の増加に対応することを目的に、先端プロセスのみならず成熟プロセスの生産能力の増強も進めていくとしている。