「企業がフェアに挑戦できる未来をつくる」そう語るのは、株式投資型クラウドファンディング・FUNDINNO(ファンディーノ)を運営する日本クラウドキャピタル・代表取締役COOの大浦学氏。FUNDINNOの登場によって、ベンチャー・スタートアップ企業への投資は、どのように変化していくのでしょうか。

今回は前回に続き、大浦氏に起業のきっかけやビジョン、FUNDINNOの可能性について、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が対談を行いました。

  • 株式投資型クラウドファンディング・FUNDINNO(ファンディーノ)が資金調達の世界を変える【後編】

投機性だけではない、FUNDINNOで投資する魅力

井上一生氏(以下、井上)――FUNDINNO(ファンディーノ)は、一般の人でもベンチャー・スタートアップ企業に投資ができるわけですが、どのような人が投資しているのでしょうか。

大浦学氏(以下、大浦)――2021年2月現在、約5万7,000人の方が投資家としてFUNDINNOを利用してくださっています。年齢は30~50代で、投資信託や株式投資、不動産投資など何らかの投資経験者が多く、職業は経営者やドクターなどの方が多いです。投資家として登録する際には審査があります。

ベンチャーキャピタルの場合、投資する目的は「どれくらい儲かるか」という投機性が主な目的なのですが、FUNDINNOで投資をする方々ではそれは2番目で、1番は「ベンチャー・スタートアップ企業の成長を楽しみたい」という気持ちの方が多いですね。投機性で判断されていた世界から、「共感」へと投資家の想いも変化しています。損得だけではなく、ベンチャー・スタートアップ企業の成長という夢も買っている感覚です。

投資家のなかには現役の経営者の方もいらっしゃいますから、「なんなら経営も手伝う」という姿勢の方もいらっしゃいます。これまでは、「起業家と投資家」という従属感があったのですが、もっとフラットでフェアな関係になっていくと感じています。

井上――それはとても良い起業家と投資家の関係性ですね。

大浦――そうですね。一般的に、非上場会社であるベンチャー・スタートアップ企業への投資はハイリスクなわけですが、倒産などのリスクを洗い出して投資家に開示し、投資家にはそれを理解して頂いたうえで投資してもらいます。掲載するベンチャー・スタートアップ企業の審査はもちろん行いますし、弊社としても審査を重要視していますので、起業家と投資家の双方にとってフェアな環境を整えていきたいですね。

  • (左)日本クラウドキャピタル・代表取締役COO 大浦学氏、(右)SAKURA United Solution 代表・井上一生氏

プロの金融機関でも判断できない市場判断をFUNDINNOで

井上――FUNDINNOのサイトを見てみると、いろいろなベンチャー・スタートアップ企業を見つけることができて、見ているだけでも楽しいですね。サイトを見ていて、グリーンシートという市場を思い出しました。どんなベンチャー・スタートアップ企業にFUNDINNOを活用してもらいたいですか?

大浦――資金調達ラウンドには、「シード」「アーリー」「シリーズA(エクスパンション)」「シリーズB(グロース)」「シリーズC(レイター)」とありますが、まだシード(種)の段階でもFUNDINNOを活用できる可能性があります。

例えば、「デモ版プロダクトがマーケットに受け入れられるか」という市場判断をFUNDINNOで試すことも可能です。商品やサービスを開発する際、何らかの「社会課題を解決したい」という気持ちがきっかけになっていると思います。そこに共感性があるかどうかという市場判断は、「出資を受けられるかどうか」という投資判断とニアリーイコールです。

FUNDINNOで資金調達してみて出資を受けられたということは、市場ニーズがあるであろうという仮説になります。それは、プロの金融機関でも判断が難しいことです。少なくとも経営経験のある投資家が投資すると判断しているわけですから、市場でも商品やサービスを受け入れられる可能性が高いということになります。

井上――なるほど、テストマーケティング的にFUNDINNOを活用することもできるわけですね。

大浦――そうですね。「地方でスポーツを盛り上げたい」という想いから町興しプロジェクトが立ち上がった例もあります。町興しは共感を得られないとできませんから、プロジェクトのファンをつくり、ファンとともに共創していくことで町興しプロジェクトが地方創生にもつながっていくと思います。その資金調達にもFUNDINNOを活用していただけますね。

東証だけが市場ではない「セカンダリーマーケット」の可能性

井上――FUNDINNOは、起業家にとっても投資家にとってもさまざまな可能性を秘めたサービスだと改めて感じました。FUNDINNOを活用することで、もっと挑戦できるベンチャー・スタートアップ企業が増えていきますね。

大浦――ありがとうございます。投資家間で株式を売買するセカンダリーマーケットという出口戦略を一般の投資家の方々に提供したいと考えています。「IPOの手前」という出口ですね。M&Aをするにしても時間がかかりますし、マザーズに上場するにしても7年ほどはかかるとされています。つまり、「7年塩漬け前提」ということですから、それでは一部の投資家しか投資できません。

また、IPOのハードルは年々上がっていますから結構なスケール感がないとIPOもできない。ですが、2~3倍を目指せる企業はあるわけです。マザーズ上場は目指せないまでも、セカンダリーマーケットで出口を描ける。そんな風に、もっと挑戦できるベンチャー・スタートアップ企業が増える環境をつくりたいですね。

井上――企業の可能性が広がりますし、資金が入ることで成長する企業も増えますね。

大浦――そうなるのが理想ですね。私たちは、「入口と成長、出口の戦略がある」とお伝えしています。FUNDINNOは入口、成長、出口を一貫して支援します。資金調達は入口です。成長の段階も、もちろん支援します。そして、M&AやIPOではない出口を設計して支援します。投資家が得た利益は、さらにまた別の会社に投資されるというエコシステム(循環システム)を構築し、ベンチャー・スタートアップ企業がより資金調達しやすい世界、成長しやすい世界をつくっていきたいですね。

井上――まさに、株式会社という仕組みの原点ですね。私たち会計事務所は、資金調達のご相談をお客様からよく聞く立場です。起業前からのご相談もありますし、さらなる成長のための資金調達もあります。会計事務所ができる資金調達の支援というと、一般的には銀行や信金からの資金調達ですが、FUNDINNOを活用できる企業もあるかもしれません。

資金調達の選択肢のひとつとしてFUNDINNOがあるわけですから、ぜひパートナーとしてアライアンスを組ませてください。会計事務所が企業のグロースを手伝うことが今後はさらに重要になると私は考えています。ただ申告書をつくれば良いだけの時代は、とっくに終わっていますから。

大浦――ぜひ宜しくお願い致します。我々自体もベンチャー・スタートアップ企業です。なかなか挑戦する会社に出会う機会が少ないですから、井上さんのような士業の方々との連携は重要です。どこでも行きますので、地方の企業さんにもぜひFUNDINNOを活用していただきたいです。

井上――ぜひ一緒に、ベンチャー・スタートアップ企業を応援しましょう。