市場調査およびコンサルティング会社の富士キメラ総研は、スマートフォン(スマホ)におけるカメラの高機能化、自動車分野をはじめとするセンシング需要の増加により拡大しているCMOSイメージング&センシング関連の2020年におけるデバイス・材料・装置およびアプリケーション市場の調査結果を発表した。

光学ユニット市場については、モバイル機器や自動車がけん引役として期待されるとする。スマホ市場は端末需要は横ばいだが、多眼化により1台あたりの搭載数の増加が予想される。一方の自動車は新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に市場が縮小する品目が多くみられるが、今後は自動運転関連を中心にセンシング用途の需要が伸びることが期待されるとする。

半導体の市場としてはエリアイメージセンサが最も大きく、スマホ向けの需要が増加し続けている。安価なセンサの採用が一部ではみられるが、カメラの高機能化が続くことで、今後も安定した市場拡大が予想される。

また、光学部品では、光学レンズがスマホの多眼化に加え、搭載レンズ枚数の増加に伴って需要が伸びているほか、監視カメラ向けも好調だとする。ちなみにスマホ向けにはプラスチックレンズが、監視カメラ向けにはガラスレンズが主に採用されているという。

光学関連材料では、レンズ用樹脂材料が拡大しているという。需要の急増で一部で供給がひっ迫しており、生産能力の増強が進められている。一方、光学ガラスは交換レンズ向けが減少しており、監視カメラ向けが堅調なものの、安価なガラスの採用が多く市場を押し上げるまでには至っていない。

そのほか、光学関連装置市場は、スマホ向けがけん引役となっており、撮像用に加え、センシング用途の増加により、さらなる拡大が期待されるとしている。

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ADAS/自動運転に必須の車載カメラモジュール

ADASや自動運転において車両周辺の情報収集に必須の車載カメラモジュール。サラウンドビューの採用でビューイングカメラの搭載数が増加していること、ならびに日米欧にてAEB(先進緊急ブレーキシステム)の搭載義務化に伴いフロント車載カメラ搭載率の上昇が市場拡大をけん引している。2020年は自動車の生産台数が減少した結果、当該市場も縮小するとみられるが、2021年は自動車市場が回復することが期待されるため、当該市場も再び成長へと転じ、今後も継続的な成長が予想されている。

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また、同じくカメラを用いるドライブレコーダは、世界的にニーズが増加しているが、搭載していなくても運転には支障がないことから、採用に対する優先順位は低く、購入が後回しにされやすい傾向にあり、自動車市場全体が落ち込んだ2020年は市場が縮小するとみられる。

ただし、地域別に見るとさまざまで、日本では道路交通法の改正によるあおり運転の厳罰化などで関心が高まっている一方、欧米はプライバシー保護の観点から搭載への抵抗感を持つ層も多いものの、北米では安全意識の高まりもあり普及が進みつつある。また中国は、低価格製品を展開するメーカーが数多く存在しており、インターネットを通じた販売が好調だという。

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5G時代で市場拡大が期待されるToFセンサ

距離を検出することが可能なToFセンサ市場は、主にスマホでの搭載が期待されているが、現状ではコストが従来ソリューションに比べ高いため、一部機種に留まっている。しかし、今後は5Gの普及拡大に伴い、深度情報を活用した撮影機能やゲーム、ナビゲーションなどの新サービス創出により、搭載率が上昇し、市場も併せて拡大していくことが期待されるとする。

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コロナ禍で急成長する遠赤外カメラ

遠赤外(8~14μm)を受光領域とするLWIRの赤外カメラは、新型コロナウイルス感染症の流行により、建物への入退出時の体表面温度検査などで採用が急速に増えており、2020年は大幅な市場拡大が予想されている。

監視カメラメーカーなどが顔認証の入退出管理システムとセットで提供し、需要を獲得した一方で、赤外カメラ専属メーカーは額部分の認識技術や複数人同時認識などのニーズに応えることができず、特需の恩恵を受けられなかったとみられる。

2021年以降は需要が落ち着くとみられるが、2019年よりやや高い水準で緩やかな拡大が予想されており、その背景には北米での軍事用途や監視向け、住宅などの建造物の非破壊検査やプラント工場の検査など幅広い用途での採用が挙げられている。また、欧州ではナイトビジョンシステムや自動運転システム向けでの需要が期待されるという。

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