住宅を購入しローンを組んだ場合、国の制度である住宅ローン控除(減税)を利用すれば、所得税の納付額が軽減され、家計における可処分所得(税控除後の収入)の増加につながります。しかし、住宅ローン控除の対象となるローンの種類や住宅には一定の条件があります。今回は「住宅ローンの適用条件」について説明します。
住宅ローン控除(減税)の対象となるローンの種類
住宅ローン控除(減税)の対象となるローンと所得条件については、下記の項目をすべて満たす必要があります(※1)。
- 適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 自己居住用の住宅とその敷地取得のための借り入れであること
- ローンの返済期間が10年以上あり、割賦方式で返済されるものであること
- ローンの借入先は下記のどれかであること(※2)
・銀行・農協・信用金庫・信用組合等の金融機関
・住宅金融支援機構
・地方公共団体
・各種公務員共済組合
・勤務先(市場金利を換算して定められた0.2% 以上の金利、2016年12月31日以前に居住用とした場合は1% 以上)
※親族や知人などの個人、親族や自身が役員となっている企業からの借入金は対象となりません
住宅ローン控除(減税)の対象となる住宅
住宅ローン控除の対象となる住宅には、以下の条件があります。
購入する住宅が新築の場合
- 新築または住宅取得後6カ月以内に入居し、控除適用を受ける年の12月31日まで居住し、住民票を移していること
- 登記上の住宅の床面積が50平方メートル以上あり、自己の居住用部分の床面積が建物の2分の1以上であること (戸建ては各階の床面積の合計、マンションの場合は専有部分の床面積で判断します)
- 生計を一にしている親族等からの購入や贈与でないこと
購入する住宅が中古住宅の場合
新築の適用条件にプラスして、次の条件に当てはまることが必要です(※3)。
- 住宅の築年数が一定年数以下であること(木造の場合は20年以下、耐火建築物の場合は25年以下)
※ただし、下記の条件のどれかを満たしている場合は、築年数の条件はありません
・住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得していること
・耐震基準適合証明書を取得していること
・既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
住宅ローン控除(減税)のポイントと注意点
住宅ローン控除(減税)のポイント
住宅ローン控除を利用する際に大切なポイントについても覚えておきましょう。
- 適用条件や添付書類について確認する
特に、「住宅の床面積」については確認の際のポイントがあります。税制上の床面積は売買契約書ではなく登記簿に記載されている数値となります。登記簿上の床面積は、戸建て住宅の場合は壁心、マンションなどの共同住宅の場合は内法で測定します。
売買契約書では条件を満たしていても登記簿上では条件を満たさない場合があるので、必ず登記簿を確認しましょう(※4)。
- どのくらい得になるのかシミュレーションしてみる
見積もり計算の際に、住宅ローンの返済額を一緒に計算することが可能です。
住宅ローン控除(減税)の注意点
下記の項目について当てはまる場合は注意が必要です。
- 居住した年とその前後2年間を合わせた計5年間に前の住宅で「特定居住用財産の買い換え特例」や「3,000万円特別控除」を使っている場合、住宅ローン控除は受けられません(※5)
- 「特定居住用財産の買い換え」などの場合、譲渡損失の損益通算および繰越控除との併用は可能です。しかし、この制度を利用した場合、その適用を受ける年の所得税額によっては住宅ローン控除(減税)の利用が不可となる可能性があります(所得税額が0円となる場合など)(※6)(※7)
- 夫婦それぞれの名義で住宅ローンを組んだ場合、住宅ローン控除も夫婦で利用することができます。ただし、メリットだけでなくリスクもありますので事前に借り入れした金融機関等に確認しましょう
「すまい給付金」と住宅ローン控除(減税)との違いは?
「すまい給付金」は、消費税率の引き上げによって増えてしまう住宅購入者の負担を緩和する目的で導入されました(※8)。
住宅ローン控除との違いは、「住宅ローン控除」が支払っている所得税から控除するため収入が低いほど減税効果が小さくなるのに対して、「すまい給付金」は収入額によって給付額が変わるため収入が低いほど給付基礎額は大きくなる点です。
すまい給付金についての詳細は、国土交通省の「すまい給付金サイト」等に掲載されています。
また、すまい給付金と住宅ローン控除は基本的に併用可能です。ただし、それぞれ申請条件や添付書類、申請方法が異なるので申請する際には確認しましょう(※9)(※10)。
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住宅ローンを利用する際には、住宅ローンの借入額と返済額を決定し、手続き方法や必要書類等の説明を受けることになりますが、住宅ローン控除についての知識も必要になります。
しかし、これらの内容はわかりづらい点が多く、頭を悩ませることもあるかもしれません。解決策として、金融機関等で主催している住宅ローンに関する説明会や相談会への参加があります。また、住宅ローンに詳しいFP(ファイナンシャル・プランナー)等の専門家に相談することもひとつの方法です。
参照 :
(※1)国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
(※2)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
(※3)国税庁「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
(※4)国税庁「床面積の判定」
(※5)三井のリハウス「マイホームを売ったときの5つの特例」
(※6)国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
(※7)りそなグループ「住宅ローン控除(減税)制度の概要と計算方法、手続きの流れを徹底解説」
(※8)東レ建設「「住宅ローン減税」と「すまい給付金」」
(※9)国土交通省「申請方法と受領方法(概要)」
(※10)国土交通省「住宅ローン減税の申請方法」