「自重する」「自重」は、ビジネスシーンの他、最近ではネットスラングとしても活用されているため、身近な言葉と感じる人も多いでしょう。しかし「自重」には2つの読み方があり、意味も複数あるため、それぞれの意味を正しく理解する必要があります。
本記事では「自重する」「自重」の意味はもちろん、使い方と例文、言い換えや英語表現について紹介します。
「自重する」の意味と読み方とは
早速、「自重する」や「自重」の意味や読み方を見ていきましょう。
そもそも「自重」には読み方が2通りあり、読み方で意味に違いがある
「自重」は「じちょう」と「じじゅう」の2通りの読み方を持ち、それぞれ意味が異なります。
「自重する」と動詞の形で使う場合は、「じちょうする」と読みます。
自重する・自重(じちょう)の意味
さらに、「自重」を「じちょう」と読む場合には、下記の2つの意味があります。
- 自分のことを重んじて自尊することや、健康に注意し大切にすること
- 間違いを起こさないように軽々しい言動を控える、慎重な言動をとること
自分を価値あるものとして大切にするという意味から、軽はずみな行動を取ってこれ以上自分の価値を失わないように気を付ける、という意味につながったと考えられます。
「自重する」と動詞の形で使う場合は、主に「間違いを起こさないように軽々しい言動を控える、慎重な言動をとる」という意味で使われます。
自重(じじゅう)の意味
さて「自重」を「じじゅう」と読む場合は、「それ自体の重さ」という意味を表します。
人間や動物、機械などの重量を指す表現ですが、車両や船舶・構造物などに対しては、「自重1t、積載量1.5tの自動車」のように付属物や積載物を除いた本体の重さを表します。
フィットネス関連では、ウェイト器具を使わずに自分の体重のみを負荷にして行う筋力トレーニングを指す際に使われる用語です。
「自重する」など、「自重」の使い方と例文
「自重(じちょう)」には前述のように、「間違いを起こさないように軽々しい言動を控える、慎重な言動をとること」という戒めに加え、「自分を大切にする」という意味もあり、ビジネスシーンでは状況に応じて多様な形で使われます。
また「自重(じじゅう)」は「それ自体の重さ」という意味で、トレーニングの際などにも使われます。
ここではシーンに合わせて正しく使えるよう、よく見聞きするフレーズとともに、それぞれの使い方や例文を紹介します。
「自重する」の使い方と例文(軽々しい言動を控える意味の「自重」)
「自重する」は、「自分の言動を慎んで、軽々しいことをしない」というのが基本の意味です。
「飲み会の席で調子に乗りすぎてしまったので、しばらくお酒は自重することに決めた」のように、出過ぎた言動を慎むような場合に用いられます。また、「夢の実現に向けて、お金の無駄遣いは自重する」のように、自分の行動に気を付ける際も使用可能です。
他にも、他者に対して言動を控えめにすることをアドバイスする際に「それはやりすぎなので自重した方がいいよ」のようにも使えます。
なお最近ではインターネット上でのやりとりで、「自重せよ!」「自重(しろ)ww」といった表現を見掛けることもあります。これは軽々しい言動をしないように制止する意味の他、行き過ぎた言動を楽しみ、ガヤついている際にも用いるようです。
「自重を求める」の使い方と例文(軽々しい言動を控える意味の「自重」)
目に余る言動を取っている相手に対して、控えてほしいときや慎んでほしい場合に用いられるフレーズです。
「安全を過信している人々に自重を求めたい」「部下に自重を求める」など、慎重になって、軽々しい言動を控えるように伝える際に使います。
「ご自重ください」の使い方と例文(自分を大切にする意味の「自重」)
自分を価値あるものとして重んじることから、自分の身体や尊厳を大切にするという意味で用いられるフレーズです。
なお、この表現は「ご自愛ください」とも言い換えられます。「お忙しいことと存じますが、どうぞご自重ください」のように、手紙の結びの挨拶などで、相手を気遣った一文として使えます。
ちなみに「自重」に既に「身体を大切にする」という意味が含まれていることから、「お身体ご自重ください」は二重表現になるため間違いです。
「自重トレーニング」の使い方と例文(それ自体の重さという意味の「自重」)
「じじゅうトレーニング」と読み、自分の体重のみを負荷とするトレーニングのことです。「自重筋トレ」とも呼ばれ、腕立て伏せや懸垂、逆立ち、スクワットなどが該当します。
ダンベルやバーベルなど、特別な器具を使わずに自分の体重で行えるため、お金や手間がかからず取り組みやすいというメリットがあります。
「自重する」の類語・言い換え表現と、意味の違い
「自重する」の類語についても紹介します。少しずつニュアンスが異なるため、違いを理解して使い分けられるようにしましょう。
自粛する
「自粛」は「じしゅく」と読み、他者からの評価を基準にして、自らの意思で言動を慎むこと、という意味です。
「不祥事によって活動を自粛する」のように、行動を差し控えることを表します。社会的な行為を抑制する場合に使われ、個人的な意味ではあまり使われません。
自分の行動や態度を慎む点は「自重する」と共通ですが、「自重する」が個人的な理由で慎重に行動するのに対して、「自粛する」は社会的な基準で行動を抑制するという違いがあります。
自制する
「自制」は「じせい」と読み、自分の欲望や欲求を抑えること、という意味です。「食欲を自制する」「自制心が弱い」のように、個人の内面的な意思を強調する際に使われます。
個人的な事柄に対して使うのは「自重する」と共通ですが、「自重する」が行動や言動を控えるようにするのに対して、「自制する」は感情や欲望を抑える点に違いがあります。
「自重する」の英語表現
「自重する」を英語で表す場合は、「気を付ける」という意味の「watch oneself」や、「軽はずみな行動を慎むこと」を表す「prudent」を使うことが可能です。
「You'd better watch yourself when you are drinking.(君はお酒の席では自重した方がいい)」「We must be more prudent.(私たちはもっと自重しないといけない)」のように使います。
「自重する」「自重」の読み方と意味を理解し、正しく使い分けよう
「自重(じちょう)」には「間違いを起こさないよう慎重な言動をとること」と「自分を大切にすること」という2つの意味があり、ビジネスシーンでよく使用されます。
「自重する」と動詞の形で使う場合は、主に「間違いを起こさないよう慎重な言動をとる」という意味で使われます。
また「じじゅう」と読む場合は、「それ自体の重さ」という意味で使われます。
このように「自重」は読み方やシーンによって意味が異なるため、どの意味で使われているのかを見極めるようにしましょう。
また「自重する」を他者の言動に対して用いる場合は、言動や態度を控えるようアドバイスしたり、たしなめたりすることになるため、相手との関係性や状況を考慮し、失礼にならないように使用しましょう。