「薫陶」という言葉は、多くの人にとって聞いたことはあっても意味がわからず、難しい漢語の一つではないでしょうか。薫陶は、人としての成長を助けてくれた優れた人格者に対する、心からの感謝と敬意を表す言葉です。この記事では、「薫陶」という言葉の意味と、使い方がわかる例文や類義語をご紹介します。

  • 薫陶の意味とは

    薫陶を使いこなして成長しましょう

「薫陶」の意味

薫陶の意味は「人やものが、他の人の人格や精神面の育成に与えるよい影響のこと」で、読み方は「くん・とう」です。指導を受けたことを感謝するだけでなく、教えてくれた相手の徳性や品格をほめ、相手を尊敬している意思を表す、より深い意味の言葉です。

「薫陶」の語源

薫陶の起源は、中国の元の時代に書かれた歴史書「宗史」の「程頤伝」にある「薫陶成性」(くんとう・せいせい)という四字熟語にあると考えられています。かつて香を焚くことや人に影響を与えることを「薫」といい、陶器などの器を作ることや人を教育することを「陶」と言いました。

国語辞典は、香を焚いて香りを染みこませた土をよくこねて器を形成する様子を、時間をかけて人の精神的人格的分野を成長させる様子に例えたのが薫陶の語源としています。

「薫陶」の使い方・例文

薫陶という言葉は、間違って使用されることの多い言葉の一つなので、注意する必要があります。ビジネスシーンで薫陶を使った例文には、どんなものがあるでしょうか。

知性あふれる言葉づかいは、自分だけでなく所属する組織のイメージアップにもつながります。失礼のない使い方を覚え、大人の語彙力を身につけましょう。

薫陶を与える

薫陶とは自分を低め相手への尊敬を表す謙譲語なので、自分が誰かに薫陶を「与える」ことはありません。第三者から見て「AはBに薫陶を与える」または「薫陶を授ける」という書き方が正解です。

例えば、「父親の授ける薫陶が、彼を大きく成長させている」のように使います。教育者の人格と施す教え両方に対する、深い尊敬の念を表す使い方です。

薫陶を受ける

薫陶は主に目上の人や権威者から「薫陶を受ける」という仕方で用いられます。

例えば、「教授の薫陶を受けたBさんはその後世界的な活躍を続けている」「課長の薫陶を賜りましたおかげです」のように使います。品格や徳性において優れた人物から影響を受けたことを丁寧に認め、感謝していることを示す表現方法です。

  • 薫陶の使い方・例文

    ビジネスシーンでも活用しましょう

「薫陶」の類義語・言い換え表現

薫陶と似た意味を持ち、文章の中で言い換えても不自然ではない類語がいくつかあります。伝えたい内容や相手によって使い分けるなら、尊敬と感謝を表現豊かに伝えることが可能です。

薫陶の意味に近い言葉には、教育関連の言葉が多く挙げられますが、例えばどんなものがあるのでしょうか。以下にビジネスシーンで使える薫陶の類義語をご紹介します。

感化

「感化」とは共感を通して相手に道徳的・倫理的な影響を与え、考えや生き方を変化させることです。

使い方は「彼の感化を受けた生徒たちは、困難に前向きに取り組んだ」「その本は彼女によい感化を与えた」のようになります。

薫陶が優れた人格者や権威者について使われるのに対し、「感化」はそれより身近な人やものにも広く使われます。

薫育

「薫育」とは優れた人格の影響によって人を教え導くことで、薫陶の同義語です。

天地がすべてのものを養い育てる様子を意味する「化育」が薫陶に続いた、「薫陶化育」という四字熟語も、「薫育」と同じ意味です。

「彼は少年時代に受けた薫育のおかげで成功した」のように、主に受け身や第三者的な立場からの見解で用いられます。

一方この言葉と混同されやすい「訓育」は、人格的教育よりもしつけに重点を置いた言葉です。

啓発

「啓発」とは、人が気づいていなかった物事についての知識を与え、より高い認識や理解に至るよう導くことです。一般的に受け身や第三者的な表現で用いられます。

例えば、「新人研修で学んだことから啓発を受け、仕事に対する見方が変わった」のような使い方ができます 。

教え導かれる過程で、大切なことを気づかせてもらい、人格的に成長できたことを強調したいときに使うのがふさわしい言葉です。

「薫陶」の英語表現

薫陶の主な英訳はeducationやdisciplineで、「薫陶を受ける」を英語で表現するにはreceive one's moral influenceなどがあります。

また、文章では It's thanks entirely to the excellent education of prof. Montgomery(モンゴメリ先生に薫陶を賜りましたことを心より感謝します)と表現できます。

グローバル化に備え、受けた指導への感謝を英文でも表現できるようにしておきましょう。

「薫陶」の意味や使い方を理解しよう

薫陶とは、優れた特性と品格を持つ人が他の人に影響を与え、人格面や精神的な成長を助ける事です。

指導に対する感謝や、深い尊敬の念を表す品格ある言葉として、主に受け身や第三者的表現で使います。幾つかの類義語から相手の心に響く表現を選び、失礼のない仕方で気持ちを表しましょう。