キリンビールは6日、都内で2021年の事業方針について説明した。登壇したキリンビール 代表取締役の布施孝之社長は、昨年の業績を振り返るとともに、コロナ禍の2021年において注力していく事業と商品について説明している。

コロナによる業績の影響と、2021年の戦略は?

登壇した布施氏は「2020年はコロナで始まり、コロナで幕を閉じました。環境変化に対応するべく、舵取りに迫られた難しい1年になりました」と総括する。そして『あのコロナの年が変換点になったよね』と振り返ることができるような社内改革も進めている、と明かした。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、年初計画には未達となった。しかし「飲食店に寄り添った提案」「ビールの魅力化」「うまさと価格の両立」といった観点で取り組んだ結果、「市場実績を上回る効果を実現できた」(布施氏)と評価する。

キリンビールの2021年の戦略には「強固なブランド体系の構築」と「課題解決による新たな成長エンジンの育成」を掲げている。

  • 強固なブランド体系の構築について

「強固なブランド体系の構築」は、2020年10月、2023年10月、2026年10月の3段階で実施される酒税の改正を見越したもの。「昨年(2020年)10月の酒税改正では、ビールカテゴリーは減税、新ジャンルは増税になりました。これを機会にビールを再成長させていきます」と布施氏。販売価格が変動すると、弱いブランドは淘汰されるというのが布施氏の考え。そこでキリンビールでは「愛されて生き残るブランドに投資して、しっかり育成していく」方針だという。

まずは、キリンビールのフラッグシップブランドである『一番搾り』について。酒税改正後の3か月(2020年10月~12月)における『一番搾り』『一番搾り 糖質ゼロ』を含むブランド缶の販売数量は、前年比で5割増となった。布施氏は「さらに美味しさをみがいて、日本のビールの本流を目指す」と話し、2021年も育成に再注力していく考えを明らかにしている。

新ジャンルの注力ブランド『本麒麟』は、酒税改正前の駆け込み需要もあり、2020年の販売数量は前年比3割増に。布施氏は「麦系の新ジャンルの柱を立てることで、見える景色も変わってくる。来年度はうまさと品質にさらにこだわり、3年連続の前年増、過去最高売り上げを目指したい」と意気込んだ。

もうひとつの2021年の戦略「課題解決による新たな成長エンジンの育成」では、高付加価値ビールをあげた。コロナによる巣ごもり需要は、ゆくゆくは「こだわり消費」と「節約志向」に二極化すると分析し、高付加価値商品、手に取りやすい価格の新ジャンル、の両方で開発を継続していくとのこと。

  • 高付加価値ビールの開発にも注力

「今年はクラフトビール事業にさらに注力します。またHomeTap(ビールサーバー)の展開基盤を整えることで『ビールってこんな美味しいんだ』という驚きを、より多くのお客様に届けていきたい。ビール市場全体を、さらに魅力的なものに活性化できたら」と話した。

2021年販売目標は「コロナの回復時期によって大きく左右されるため、非常に不透明な部分があります。昨年は業務用の瓶ビールや生ビールが大きなダメージを受けました。今年は(昨年ほどは)酷くならないだろうと考え、ここは前年比増を目指していきます。一番搾り、一番搾り 糖質ゼロを伸ばすことで、全体の目標を達成したい」と布施氏。

人気商品も続々リニューアル

続いて、キリンビール 常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏が新商品について説明した。

主力商品の『一番搾り』は2021年にリニューアルする。山形氏は「2年ぶりのリニューアルになります。”一番搾り製法”はそのままに、仕込み条件、発酵条件の最適化を図りながら、麦のうまみを感じやすくし、澄んだ味わいを実現しました。飲みやすく、飲み飽きない理想のビールができました」とアピールする。

  • 一番搾りは2021年にリニューアルする

『本麒麟』も2021年3月にリニューアルを予定。「大麦の増量により飲みごたえがアップします。また良質な苦味が特徴のドイツ産ヘルスブルッカーホップの増量により、コクも上がります」と説明する。パッケージも「品質の良さ」「造り手のこだわり」を感じさせる、高いビール品質を期待させるデザインにするという。

他にも、同社のノンアルカテゴリの伸長に貢献しているノンアルコール飲料『キリン グリーンズフリー』(2020年4月発売)も、「良質な麦と爽快なホップを採用した自然生まれの美味しい良質ノンアルコールビール」として大幅リニューアルする予定だそう。

緊急事態宣言について

また、政府が緊急事態宣言の再発令について検討を進めていることについて記者団から質問があると、布施氏は飲食店への影響について言及した。

「昨年の緊急事態宣言から、withコロナの闘いが始まった。なんとか凌いだ、あるいは業態変更を迫られたなど、現場からは必死の思いで営業してきたという声が聞かれる。そこへ来て、この第3波。忘年会、新年会の需要は蒸発し、さらに緊急事態宣言となると、業務用市場も大変な状況になり胸が痛い。外食マーケットは国内規模が26兆円程度と、裾野も広い。携わる従業員、社員は400万人以上の計算になる。雇用喪失など、日本の経済にも大きな影響があると危惧している」と回答。

そして「緊急事態宣言の内容は現状分からないが、外食全般を一律に見るのではなく、きめ細やかな対応を求めたい。いずれにしても政府、地方自治体の方針とあれば、粛々と受け止めながら、我々は、昨年同様に飲食店・量販店の皆さまと同じ立場で考え、気持ちに寄り添って困りごとに対応し、できることを提案していく。それに尽きる」と説明した。