「及第点」は、誤った使い方をしてしまうと相手を不快にする可能性があるため、特にビジネスシーンでは注意が必要な言葉です。
本記事では「及第点」の意味や使い方と例文、類義語・対義語、英語表現などを紹介します。由来や合格点、次第点についてもまとめました。
及第点とは? 意味と読み方を解説
及第点の基本的な意味を見ていきましょう
及第点の意味は、合格や一定の基準に達するために必要な点数
及第点とは、合格に必要な点数を示す言葉です。もともと、「及第」が試験や審査に合格すること、一定の基準に達していることを表しているので、それに必要な点数、ということです。
及第点はどちらかというとネガティブな意味合いで、人に対して使うと上から目線な印象です。例えば「彼は社会人として及第点だ」という表現は「合格ではあるが、ギリギリだ」「合格ではあるが、可もなく不可もなく」「合格ではあるけれど、完璧ではない」といったニュアンスを含みます。
及第点とは何点のこと?
何点が及第点なのか、はっきりとした具体的数値の決まりはありません。
例えば100点満点中60点以上が合格とすると、ある人にとっては60点~65点程度が及第点、他のある人は60点~69点程度が及第点と考えるかもしれません。人によってとらえ方が違うので、あいまいな表現とも言えます。
ただし合格の最低ラインが含まれることは共通なので、この場合、60点は必ず含まれます。
及第点の読み方は「きゅうだいてん」
及第点は「きゅうだいてん」と読みます。
及第の語源・由来
「及第」の意味は前述のように、試験や審査に合格すること、一定の基準に達していることです。
この語源は中国にあるといわれています。「第」は「大きな屋敷」を意味しており、「第」に「及ぶ」で、「大きな屋敷に手が届く」ということを表しているというものです。
中国では官僚試験に合格すると大きな屋敷で務めるようになるため、「試験に合格する」という意味で「及第」という言葉ができたとされています。
及第点の使い方・例文
ビジネスシーンで「及第点」がどのように使われているのか、例文も交えて解説します。
及第点に達する
「及第点に達する」と表現すると「いままでは合格圏外だったものの、やっと合格のレベルに到達した」といった意味合いになります。
- 勉強の結果、ようやく及第点に達した
及第点の評価をもらう
「及第点の評価をもらう」とは、誰かに及第点だと判定されたことを意味します。「及第点」は一種の謙譲語として使うこともできるほか、「認めてもらえた」という意味も含みます。
- 今回のプレゼンテーションは、部長から及第点の評価をもらった
及第点と合格点の違い
及第点と似た言葉に合格点という言葉があります。「合格点」は合格できる最低点数、またはそれ以上の点数という意味です。
及第点も合格点も結果としては同じ合格ですが、どちらかというと及第点の方が基準ギリギリでなんとか合格したという印象で、合格点の方がポジティブな印象があるでしょう。
及第点の類義語・言い換え表現
「及第点」を使用する場面において、ネガティブなニュアンスではなくポジティブな意味や、もっと分かりやすい表現にしたいときは、類語から適切と思われる言葉を選んで使いましょう。
よい出来・よい結果
「よい出来」「よい結果」を使って文章の言い換えができます。シンプルな表現のため、暗にネガティブなニュアンスを含んでいるということもありません。
「今日の演技は及第点だった」を「今日の演技は良い出来だった」もしくは「よい結果をもたらした」などと言い換えると、素直に「よい」という感情だけを伝えられます。
まずまずの出来・まずまずの結果
「まずまずの出来」「まずまずの結果」というと、「完全ではないけれども一応許容できるレベル、まあまあ」という意味です。「今日の試合でのプレイは及第点だ」を「まずまずの出来だ」と言い換えると、どちらも「完全にとは言えないが、ある程度は評価できる」といったニュアンスがあります。
そこそこの出来・そこそこの結果
「そこそこの出来」「そこそこの結果」には「十分とはいえないが、一応認められるレベル」という意味があります。「今日のプレゼンは及第点だ」を「そこそこの出来だ」と言い換えると、どちらの表現からも「満足なものではないが一応できた」という感情が読み取れます。
次第点(しだいてん)という言葉は存在しない
及第点と同じ意味として「次第点」という言葉もよく聞かれますが、これは誤りで、もともと存在しない言葉です。「及第点」を「次第点」と勘違いして広まってしまったのではないかといわれています。
及第点の対義語
表現の幅を広げるために、対義語も一緒に覚えておきましょう。対義語を知ることで、「及第点」と比較する文章を組み立てられるようになります。
赤点
「赤点」は学生時代に使ったことがある方も多い言葉でしょう。落第点を意味します。ただし、「及第点」の完全な反対語というわけではなく、ニュアンスが異なります。
「赤点」は実際の試験の結果に対して使われることが多く、「試験の結果は赤点だった」のように使用します。仕事の成功を「及第点」と表すことはありますが、「赤点」を使って表現することはあまりないでしょう。
落第点
「落第点」は落第となる点数や、一定の基準に達しない得点という意味を持ちます。
不合格
「不合格」は合格しない、合格できないという意味があります。「今日のプレゼンは及第点だった」に対して、「今日のプレゼンは不合格だった」という反対表現ができます。「不合格」は試験や検査などの明確な合格ラインがあるものだけでなく、感覚的に判断する場面でも使えます。
及第点の英語表現
「及第点」を英語で表現する場合には、「passing mark」「passing grade」といった言葉を用いるとよいでしょう。
「passing mark」は「合格点」と訳せる英語表現です。「passing」が「合格」、「mark」が「点」という意味を持ちます。
- I think he gets a passing mark as Prime Minister.
彼は首相として及第点だと思う。
「passing grade」は「合格ライン」と訳せる英語表現です。「passing」が「合格」、「grade」が「成績」や「評価」を意味します。
- She managed to get passing grades.
彼女は及第点を取れている。
及第点は褒め言葉ではないので、使い方には注意しよう
「及第点」は、日常の会話でもビジネスシーンでも使われる言葉です。使われる機会が多いからこそ、類語や対義語、英語訳などを一緒に覚えておけば、幅広い表現方法が可能になります。
ただし、「及第点」は「合格ではあるけどギリギリ」「合格ではあるけど可もなく不可もなく」というようにネガティブな意味が含まれるため、使い方や使う相手には注意が必要です。正しく理解して、ビジネスシーンに生かしましょう。