共働き夫婦は、どちらか一人だけが働いている夫婦よりも収入が多い傾向があるでしょう。また、仮に何らかの理由でどちらか一人が働けなくなってしまっても、収入が途絶えないという強みもあります。しかし、反対に気をつけなければいけないこともあります。
うっかり落とし穴にはまってしまうことがないよう、共働き夫婦の家計管理の方法や平均の生活費・貯蓄額のほか、貯蓄を成功させるコツについて見ていきましょう。
家計管理するお金には2種類ある
家計管理と聞いたときに、多くの人が思い浮かべるイメージは、「家計簿に日々の食費や日用品費を書き込んで管理する」というものではないでしょうか。
しかし、実際の家計管理には、日々の短期的な「収支の管理」と、将来必要になるお金を貯めるための「貯蓄の管理」という、2種類があります。
日々の短期的な収支管理
家計管理では、毎月の収入と支出のバランスを見たり、支出内容の項目を管理してお金がかかりすぎている項目がないかをチェックしたりします。これによって、月々の収支が赤字になっていないか、どのくらい貯蓄が毎月できているのかがわかります。
将来の長期的な家計管理
長期的な家計管理とは、子供の教育費や住宅購入費、車の購入費、老後資金といった、将来かかる大きな支出に備えるための貯蓄管理を行うということです。
まずは、いつ、何のために、いくら必要になるのかを把握しましょう。そうすれば、毎月どのくらい貯蓄すればいいのかが計算できます。
その後は、計画どおりに貯蓄が進められているのかを、定期的に確認します。うまくいっていない場合は、日々の収支管理を見直して原因を探り、貯蓄できるように使いすぎを防いだり、無理な貯蓄計画をしている場合はプランを改善したりするなどして、対処していきましょう。
このように、長期的な家計管理は、日々の収支管理とも密接に結びついています。家計管理を考える上では、1カ月などの直近の収支だけでなく、将来的にも安心して暮らし続けられるかどうかなど、長期的な面でも具体性を持って計画し、管理していくことが大切です。
共働き夫婦の理想的な家計とは?
家計管理をするときに気になるのが、何が正解なのかということではないでしょうか。家計管理には、絶対これが正解というバランスや貯蓄額はありません。家庭の状況や考え方はそれぞれ異なるため、自分の理想を叶えるための家計バランスを考えることが大切です。 続いては、おおよその目安として、2人以上で暮らしている世帯の1カ月の平均生活費と、年代別の貯蓄額について見ていきましょう。
1カ月の生活費はどのくらい?
総務省「家計調査報告(家計収支編)」(2019年)によると、2人以上で暮らす世帯のうち、年金暮らしの人などを除いた「働いている人世帯」の生活費の平均や、支出項目の割合は下記のとおりです。
<生活費の平均額>
- 実収入 : 58万6,149円
- 非消費支出(税金や社会保険料など) : 10万9,504円
- 可処分所得(手取り) : 47万6,645円
- 消費支出(税金や社会保険料等を除く生活費)の合計 : 32万3,853円
- 黒字(手取りから生活費を引いた差額) : 15万2,789円
<支出項目の割合>
- 食費 : 23.9%
- 住居費 : 6.0%
- 光熱・水道費 : 6.7%
- 家具・家事用品代 : 3.7%
- 被服および履物代 : 4.0%
- 保健医療費 : 3.9%
- 交通・通信費 : 17.0%
- 教育費 : 5.7%
- 教養娯楽代 : 9.9%
- 交際費 : 5.4%
- その他の消費支出 : 13.8%
※総務省「家計調査報告(家計収支編)」(2019年)
ただし、この数値はあくまでも平均値のため、すべてを自分の家庭にあてはめて、そのとおりになるとは限りません。平均値という特性上、特に住居費は、持ち家でお金がかからない人を含んで計算していることから、支出割合が非常に少なくなっています。
平均的な貯蓄額は?
次に、厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2019年)の、年代別の平均貯蓄額を見てみましょう。
全世帯の平均の貯蓄額は、1,077万円でした。世代別で見ると下記のとおりです(小数点以下切り捨て)。
<年代別の平均貯蓄額>
- 世帯主が29歳以下の世帯 : 179万円
- 世帯主が30歳以上39歳以下の世帯 : 530万円
- 世帯主が40歳以上49歳以下の世帯 : 650万円
- 世帯主が40歳以上59歳以下の世帯 : 1,075万円
- 世帯主が60歳以上69歳以下の世帯 : 1,461万円
- 世帯主が70歳以上の世帯 : 1,233万円
※厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2019年)
なお、これはあくまでも貯蓄額のみを見た統計で、各世代ともに、これ以外に抱える負債の平均額も算出されています。全世帯の負債の平均は425万円です。
あくまで参考程度にとどめて、自分の家庭の場合はいくら貯める必要があるのかを考えるようにしましょう。
家計管理を成功させるコツ
月々の収支が把握できていなかったり、貯金がなかったり、1年後の貯金目標がはっきりしていなかったりすると、家計のやりくりに困る可能性があります。
そうならないためにも、家計管理をうまく行うためのコツを見ていきましょう。
収支と予算、お金の流れを把握する
予算を定め、それに沿った収支を実現させていくことは家計管理の基本であり、最も大切なことです。
とはいえ、1円単位まできっちり管理するとなると、「面倒」「収支が合わなくてやる気がなくなった」といったことにもなりかねません。
大切なのは、おおよその収入と支出を把握し、計画どおり貯蓄にお金を回していくことです。例えば、支出をすべてクレジットカードで行うようにすれば、何にいくら使ったのかがカードの明細に自動で記録されます。クレジットカードと連動できる家計管理アプリなどを使えば、簡単に月々の支出バランスがわかるでしょう。
また、細かい項目は書き出さずに現金を袋分けで管理する、食費と日用品を分けて記載するのは大変なのでスーパーごとに管理するなど、細かい管理方法は自由です。
まずは、正確に収支を管理することではなく、おおまかな収支を把握できる管理方法を選びましょう。
先取り貯金で貯める分と使う分を分ける
貯蓄する分も使いきってしまうという人は、給与天引きの財形貯蓄制度や、銀行の自動積立などを活用して、給料の一部を最初からないものとして生活する習慣を身につけましょう。
生活費で使う口座とは別に貯める口座を作って、そこに自動的にお金が貯まっていく流れを作れば、ついつい使いすぎてしまうという事態を回避できます。
ただし、あまり無理な金額を設定すると「やっぱり足りない」と貯金用口座からお金を使ってしまう可能性がありますので、無理な金額設定はしないようにしましょう。
先取り貯金用の口座と、生活費の余りを貯めておいて不足時の補填に使う口座を2つ用意しておくというのもおすすめです。
目標金額に届かないときはどうする?
「思ったよりもボーナスが少なかった」「家電が壊れて買い替えた」といった理由により、貯金額が目標に届かないこともあります。こういうときは、副業をしたり、不用品を売ったりして収入を増やしつつ、目標達成までの生活費を抑えるといった工夫をしてみましょう。
なお、上記は「2年後までに車の購入費300万円を貯める」といった、短期的な目標に届かなかった場合の対処法です。
10年、20年後の教育資金や老後資金が思ったように貯まっていない場合は、節税にもつながるiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを活用した資産運用なども検討してみるといいでしょう。
積極的に貯金を増やしたい場合のやりくりの方法
貯金をもっと積極的に増やしていきたいと考えているのであれば、家計のやりくりの方法を根本から見直してみるのもおすすめです。
夫婦共働き家庭は、どちらかだけが働く家庭に比べるとお金に余裕があるケースが多いでしょう。この場合、「どちらかの給料だけで生活をして、もう1人の給料はすべて貯金をする」という家計のやりくりの方法があります。
1人分の手取り年収がすべて貯金に回るため、貯金効果はかなり高いでしょう。ただし、名義を1人にしてしまうと、将来家を買うときの名義などでトラブルにつながる可能性もあるため、注意が必要です。
また、「共有口座を作り、夫婦それぞれが一定額を毎月振り込む」という方法があります。共有口座で、生活費と夫婦の貯金を管理するというものです。
それぞれで貯めるよりも、夫婦としての貯金額が可視化されますし、同じ口座を見ているので、貯金をするという意識をお互いに高めることができるでしょう。
なお、どのような形をとるにしても、夫婦2人が家計に興味を持ち、協力し合うことは必須です。どちらかが一生懸命節約していても、もう一方が湯水のようにお金を使ってしまえば、いつまで経っても貯金は貯まりません。
日々の家計管理は、どちらか一方がメインで行うケースが主ですが、長期的な貯金計画については、2人で定期的に話し合い、計画や進捗状況をチェックしていくことが大切です。
家計管理は短期と長期両方行うことが大切
日々の収支を管理することは、突き詰めれば、計画的に貯金を行い、将来に備えるためだといえるでしょう。そのため、いくら毎月の家計簿をつけていても、将来、必要なお金を貯められていないのであれば、家計が破綻するリスクが高まってしまいます。
家計管理は、短期的な収支管理と長期的な資産管理の両方を行うようにすることが大切です。夫婦2人が当事者意識を持って、協力し合って家計管理を行っていくことが、将来のための資産形成につながるでしょう。