完璧主義であることには、メリットもデメリットもあります。本記事では完璧主義とはどういった状態や性格のことを指すのか、意味や特徴、完璧主義になってしまう原因を解説します。

完璧主義をやめたいと思っている方のために、完璧主義の治し方もまとめました。

完璧主義とは? 「完璧主義をやめたい」と思う人も?

完璧主義とは、常に完璧であることにこだわり、必要よりも高い目標を設定して努力する人のことを指します。他人からの評価を気にしすぎていて、ミスや失敗があれば自分を責め、成功しても不満や不安を抱き続けるという傾向にあります。

自分に対して完璧主義思考が強い人もいれば、他人に対して厳しく完璧を求める人もいます。

一方、完璧主義ではない人は、物事にこだわらず寛容な姿勢でいる人と言えるでしょう。「人間は失敗するもの」とはじめから考えていて、8割程度成功すれば良しと考えるタイプです。

完璧主義は「堅苦しく融通が利かない」「頑固」など、マイナスなイメージを持たれることもあります。そのため、「自分のこの完璧主義をやめたい」と思っている人もいることでしょう。

ただ、完璧主義は決して悪いことではなく、仕事によっては重宝される可能性もあります。個性の一つとしてプラスにとらえることも大切です。

  • パソコンを見ている人

    完璧主義について深く考えてみましょう

完璧主義な人の心理や特徴

完璧主義な人にはいくつかの特徴があります。

自身が完璧主義かどうかを知るためには、その特徴や心理について把握することが必要です。「自分は完璧主義かもしれない」と感じている方は、チェックしてみてください。

  • パソコンを眺めている男性

    完璧主義な人の特徴について知りましょう

自尊心・プライドが高い

完璧主義な人は自尊心が高いことが多く、根拠もないのに「自分の考えは正しい、周りが間違っている」と信じている傾向が見られます。

「自尊心」とは、自分に対して肯定的で、「自分は優れている」と思い込む気持ちです。プライドが高く、他人に頼ったり甘えたりするのが苦手なので、自分で抱え込む行動をとりがちだと言われています。

また、自分と違う意見を受け入れにくいので、思い通りにならないとしつこく意見してくることもあるでしょう。

自意識過剰

自意識過剰とは、他人が自分をどう見ているかを気にしすぎる状態を指します。

完璧主義な人は自意識過剰になりすぎるため、他人に良い評価をされることを第一の目的としがちです。

そのため、他人の評価を気にするあまり物事の本質や自分の目標や意見を見失ったりすることもあるでしょう。自意識過剰は、常に神経を周りに向けているのでストレスの原因になります。

人に頼るのが苦手な性格

完璧主義の人は、人にお願いすることが苦手で、何でも自分で抱え込みがちです。

自分がやらなければ、という義務感、責任感が強いことに加え、人に任せるよりも自分でやった方が質が高い、と考える傾向にあるためです。

理想像が高く妥協を許さない

完璧主義の人は、100が頂点であれば限りなく100を目指すため、80や90では満足しません。「常に一番でなくてはならない」という意識が強く、理想像が高い特徴があるでしょう。

そのため、実現したい夢をきちんと持っていて、夢を実現させるために努力する真面目さと向上心があります。

理想像が高すぎるため、心身が疲れてしまうこともありますが、基本的に妥協せず粘り強く自分の理想と向き合います。

柔軟性がなく頑固

完璧を求めすぎるために、型にはまった考え方をし、柔軟性が乏しい傾向があります。既定路線を外れられず、臨機応変な対応は苦手な人が多くいます。

悪気はないものの、頑張って完璧を求めるがゆえに、客観性や柔軟性を失い、視野が狭くなりがちです。柔軟な対応がとれないので、頑固で扱いにくい人だと思われてしまうこともあるでしょう。

責任感が強く頑張りすぎてしまう

何事にも完璧を求めるため、任された仕事は完璧にこなすという意識が強く、責任感が強い傾向にあるでしょう。

妥協を許さないのでいつも質の高い仕事をし、信頼をおける存在になります。ただし、頑張り過ぎて心身ともにすり減ってしまいがちです。また他人にも妥協を許さない姿勢を持ってしまうと、周囲との関係性にヒビが入る可能性も高いでしょう。

失敗やミスが怖く、常に不安

物事を完璧にこなすことへの理想が高いため、失敗を恐れる傾向が強いのも完璧主義な人の特徴です。そのため、与えられた役割で失敗することを怖がり、慎重になりすぎる面があります。

完璧主義の人にとっての失敗、ミスは、自分への評価が下がることに直結するため、絶対に成功したいという気持ちが強くなり、対応スピードを失います。

慎重になりすぎて、気付かないうちに成長のチャンスを失っていることもあるでしょう。

完璧主義かどうかを診断するチェック項目

自分が完璧主義なのかどうかをセルフチェックしやすくするため、上述の完璧主義の特徴を一覧にまとめてみました。

1 自尊心・プライドが高い
2 自意識過剰
3 人に頼るのが苦手な性格
4 理想像が高く妥協を許さない
5 柔軟性がなく頑固
6 責任感が強く頑張りすぎてしまう
7 失敗やミスが怖く、常に不安

このように一覧にしてみると、完璧主義者の特徴にはポジティブな面とネガティブな面が入り交じっていることがよくわかります。

「理想像が高い」「責任感が強い」は、仕事をする上でプラスに働く可能性が大いにあります。高い目標(理想)を掲げ、そこにしっかりと到達できるように責任感を持って仕事に着手する……という姿がイメージできますよね。

一方で「柔軟性がない」「失敗が怖い」という特徴は、ビジネス面においてネガティブに働いてしまうケースも。柔軟性がない点は固執した考えややり方にとらわれてしまう可能性がありますし、失敗を恐れていてはなかなか新たなチャレンジに踏み出しにくいという側面もあります。

ご自身を完璧主義者だと自認されている方は、これらの特徴をしっかりと踏まえておくとよいでしょう。

完璧主義になってしまう原因

完璧主義になってしまうのには、どんな原因が考えられるのでしょうか。

幼少期の周囲の環境

幼少期に厳しい家庭で育った場合は、完璧主義な性格になる可能性があるでしょう。例えば、親からテストで常に満点を取るように言われ、たとえ努力をしていても結果が伴わなければ褒めてもらえない、あるいは叱られるといった環境などです。

このときに根付いた考え方が尾を引いて、今でも常に完璧を目指して頑張りすぎてしまったり、緩急をつけるのが苦手だったりする性格になっているのかもしれません。

失敗や仕事の出来に対するトラウマ

失敗を笑われたり、完成度が不十分だと激しく怒られたりといった過去の経験から、二度と失敗したくない、と自分を追い込んでいる可能性も考えられるでしょう。必要以上にプレッシャーを感じて、完璧主義な性格になっているのかもしれません。

完璧主義は克服できる? 治し方を解説

完璧主義にはメリットもたくさんありますが、完璧主義だからこその気難しさや、頑張りすぎて疲れてしまうなどのデメリットもあります。また、相手にも自分と同じ完璧を求める心の狭さなどもあり、人間関係では敬遠される場合もあるでしょう。

ここからは、完璧主義を治す(和らげる)考え方をご紹介します。

  • 人の足元

    完璧主義を治す(和らげる)にはどうしたらいいのか考えてみましょう

慎重になりすぎない

丁寧な行動をとってくれる安心感がある一方で、結果へのこだわりが強すぎて時間がかかるという弱点があります。

特に新しいことや慣れないことに挑戦するのが苦手で、仕事では、完璧主義の人が担当した部分だけが遅れてしまうこともあるでしょう。

正確性や自分のこだわりだけを追求するのではなく、周りとの足並みをそろえ、ある程度時間を決めて作業したり、制限を設けたりできるよう努力しましょう。

優先順位を決める

自分が関わる全ての物事を完璧にこなすというのは、誰にとっても無理な話です。頑張りすぎて心身がすり減ってしまうだけでなく、結局全てが中途半端になってしまう可能性すらあります。

「これは重要なので時間を掛けて頑張る」「これはさほど大切ではないので、ほどほどでOK」など、物事の優先順位をつけて、メリハリをつけることを心掛けましょう。

ストレスをため込まない

仕事や目標に対して完璧を目指す姿勢があるので、思い通りに進まないとストレスを抱え込みやすい傾向があります。

自分の思い通りに物事が動かないこともあるので、「できないこともある」「まあ、いいか」と楽天的な気持ちを持ってストレスをため込まないように心がけましょう。

ささいなことでストレスを感じていると、完璧主義を悪化させる場合もあるでしょう。

自分を客観的に見る

自分のモノサシを持っており、それが強すぎる傾向があります。自分視点だけではなく、客観的に見ることでこれまでの自分の普通や常識について見つめ直せるでしょう。

主観だけで判断していると、他人と比べて自分ができない部分ばかり見えるため、自分を責めて劣等感を抱きやすくなります。

客観的な視点を持つことで、自分の基準の高さに気づけると同時に「他人は他人」「自分は自分」と考えられます。

減点ではなく加点する

完璧主義の人の視点は、ミスを嫌うことから常に減点的な見方をしています。理想を100とした場合、100未満は失敗と評価するため、どうしても心が狭くなってしまいます。

「できないこと」に着目する減点ではなく、「できたこと」に対してプラスする加点式にすることで、自分にも相手に対しても寛容になれます。

自信がつきやすくなるため、気持ちに余裕を持てるようになるでしょう。

完璧主義であることのメリット・長所

完璧主義だからこそ、目標を達成できたり、夢を実現できたり、自分を誇らしく思えます。完璧主義が悪いことなのかという不安を持つ方は、完璧主義者であることのメリット、長所を理解しておきましょう。

質の高い成果を出せる

完璧主義者は、努力家で向上心にあふれているため、効率的かつ効果的な行動を心がけ、質の高い成果を出せます。

完成度の高い成果物を出すことで、自分の完璧さに自信を持ちます。自分の完璧さが揺るがないことへの安心感を持つ部分もあり、出来栄えや精度へのこだわりも一段と強いでしょう。

自己管理ができている

物事を計画的に仕上げていくことに長けているため、自己管理能力に優れているというメリットがあります。タスクをピックアップし、スケジュールへ落とし込むことや目的達成への進捗管理が得意です。

自己管理が徹底している人は、自分の甘い部分を許さずストイックな姿勢を保つことが可能なので、長期的な問題解決や、粘り強さが必要な場面や強い意志が必要なシーンでは特に活躍するでしょう。

信頼度が高い

完璧な結果を出すことにこだわるため、周囲からの信頼度は高いでしょう。

責任感が強く、最後まで妥協しない姿勢は、責任者やリーダーにふさわしく、仕事でもそのような立場に抜てきされることが多くあります。

努力をいとわない

地道な努力を嫌がらないことも完璧主義の大きなメリットでしょう。自分で立てた目標を達成し、結果を残すため、日頃から技術を磨き、地道な努力を惜しまない長所があります。

努力を続けることは、飽きやすい人や意志の弱い人に成せることではないので、自信を持って良い部分です。努力している姿勢を見て、周囲から信頼されたり、尊敬されたりすることも多いでしょう。

  • ノートに何か書いている

    完璧主義であることのメリットは十分あります

完璧主義であることのデメリット・短所

次に、完璧主義であることのデメリット、短所を見ていきましょう。

始動が遅れやすい

完璧主義であるがゆえに、「完璧に仕上げられる」と自身で判断するまで仕事に着手できないという傾向がある点がデメリットとしてあげられます。「不完全でもいったん走りだしてみて、途中で改善・修正を加えて完全を目指す」というスタンスに抵抗を覚えてしまうため、どうしても初動が遅れてしまうようです。

他人にも完璧を求めやすく、人間関係に影響する

仕事において完璧を求める人は、他人にも自分同様に高いレベルを求める傾向があると考えられています。他人のミスを厳しく指摘、叱責するシーンが続くと職場での孤立につながってしまい、自分自身にもストレスがたまっていく恐れがあります。

仕事を放棄してしまう可能性がある

完璧主義者は初期に立てた目標を達成すべく努力を惜しみませんが、ビジネスにトラブルはつきものなので、すべてが計画通りに進むわけではありません。自分ではなく、一緒に仕事をしているビジネスパートナーや取引先の不手際でプロジェクトに支障が出るようなケースもあります。

そのような際、心が折れた完璧主義の人は「自分の理想通りにはいかなくなった」と仕事を放棄してしまう可能性があります。

完璧主義は強みにもなるが、損をすることも

完璧主義者は、完璧へのこだわりや、努力を惜しまない姿勢が信頼されるため、向いている職業も豊富です。常に完璧にこだわっているだけあって、能力が高い人も多く、誇らしい面も多いでしょう。

ただ、頑張りすぎて疲れていると感じたら、自分や周囲に対して厳しすぎていないか、一度自分自身に問いかけてみましょう。慎重になり過ぎて仕事が遅いことによりチャンスを逃したり、他者にも妥協を許さないことで人間関係に亀裂が入ったりと、完璧主義を貫くことで損する場合もあります。

ミスをしない人間はいません。ミスを許せる心の広さを持つことで、プレッシャーから解放され、周囲にも寛容になれるでしょう。