相掛かりの将棋で永瀬王座が快勝。4連勝で豊島将之竜王と並んで首位に立つ
渡辺明王将(名人・棋王)への挑戦権を争う、第70期王将戦挑戦者決定リーグ(主催:スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社)の▲永瀬拓矢王座(3勝0敗)-△羽生善治九段(3勝0敗)戦が11月3日に東京・将棋会館で行われました。結果は89手で永瀬王座の勝利となりました。
本局の前日に豊島将之竜王が4連勝目をあげて首位に立った今期のリーグ戦。豊島竜王、永瀬王座、羽生九段はまだ直接対決がなく、この三者の対戦結果次第で挑戦者が決まりそうな様相となっています。
永瀬王座が先手番の本局は、相掛かりの戦型になりました。先に動いていったのは羽生九段。角交換から敵陣に角を打ち込んで、馬を作ります。永瀬王座は自陣に▲2七角と角を投入して、香にひもを付けつつ相手の馬を封じ込めました。ひと目は受け一方の角を打たされた永瀬王座が苦しそうに見えますが、これは部分的な定跡形。先手は将来的に▲3五歩と突いて、2七角の利きを敵陣に通す構想です。
本譜は次第に局面が落ち着いていきました。永瀬王座は▲2八歩と打って相手の1九の馬を完全に封じ込めることに成功。さらに前述の角を働かせる構想を実現されて、優位に立ちました。羽生九段としては、より激しく動いていったほうが良かったようです。
永瀬王座は満を持して相手の馬を金で捕獲し、手中に収めると、相手の弱点の桂頭を攻めていきました。受けていてはジリ貧になると見た羽生九段も、駒損を重ねながらではありますが、永瀬玉に迫っていきます。
しかし、このような無理気味の攻めの対処をさせたら永瀬王座の右に出る者はいません。受けるべきは受け、いなすべきはいなした後に鋭く羽生玉へ反撃。最後は詰めろ逃れの詰めろとなる決め手の桂跳ねで勝負あり。永瀬玉に詰めろをかけて下駄を預けた羽生九段に対し、しっかりと永瀬王座は羽生玉を詰まし上げました。
この勝利で永瀬王座は4連勝。豊島竜王と並んで首位に立ちました。17日に組まれている両者の直接対決は大注目の一戦です。
一方、敗れた羽生九段ですが、まだ挑戦の可能性がないわけではありません。20日の王将リーグ最終局で豊島竜王と対戦するためです。挑戦権を得るためには、その前の17日に行われる木村一基九段戦での勝利が絶対条件になります。