数年に1度、「解散総選挙」という言葉をニュースで耳にするようになります。

聞き馴染みのある言葉であり、かつ「日本の今後を左右する大きな出来事である」ことは理解できていても、「具体的にどういったものなのか」「自分が何をすべきなのか」といったことがわからない方も少なくないでしょう。

本記事では、解散総選挙の仕組みについてくわしくご紹介します。

  • 解散総選挙とは? 今後の影響は?

    解散総選挙とは? 今後の影響は?

解散総選挙とは?

解散総選挙とは、総選挙を行うために(衆議院を)解散することを示します。解散総選挙という言葉は「解散」と「総選挙」に分けられるため、「解散・総選挙」や「衆院解散・総選挙」などと表現されます。解散が行われるとすべての衆議院議員は、任期満了前に議員としての地位を失うこととなります。

以下では「解散」と「総選挙」の役割や意味を説明します。

解散とは?

まず、解散とは何のことを指すのでしょうか。よく誤解されるのが「一度国会議員や内閣をすべて解体する」というもの。これは完全に間違っているというわけではありませんが、解散・総選挙における「解散」とは衆議院の解散を意味します。

衆議院の解散は日本国憲法で定められており、天皇の国事行為のひとつ。しかし、これは内閣の助言と承認により行われるものであるため、事実上、その責任者である内閣総理大臣の専権であるとも言われています。

解散が行われると、その時点の衆議院議員は任期満了前であっても議員としての立場を失います。それと同時に内閣総理大臣を指名する機関の一つである衆議院が一度存在しなくなり、新たに選挙によって選び直されます。つまり、内閣も総辞職となります。日本の行政を司る内閣を一新するための最初のステップが解散なのです。

もちろん、解散以外の形で内閣が変わるケースもあります。1つは内閣改造です。これは総理大臣が国務大臣の辞表をとりまとめ、新しい国務大臣を任命するという形式です。さらに、「総理大臣の辞任」により内閣が一新される場合もあります。あらためて衆議院で次の総理大臣を指名し、組閣するというケースです。

この2つのパターンの場合、総理大臣を指名する衆議院はそのままなので、たとえ内閣を構成するメンバーが替わったとしても、行政の基本的な方向性はあまり変化しないケースが多いです。解散総選挙時と比較するとその時点での国民の意思が反映されない可能性もあります。

総選挙とは?

ここでの総選挙とは、解散が行われた後に行われる「衆議院選挙」のことを指します。解散が決定すると、40日以内に衆議院総選挙を行わなければなりません。そのため、解散が決まると各党はすぐに選挙に向けて動き出します。

内閣の責任者である内閣総理大臣は国会によって指名されますので、実質的に日本の行政のトップを決めるための選挙とも言えます。そのため、日本国内で行われるあらゆる選挙の中でももっとも重要なもののひとつであると言えるでしょう。

選挙が終わると、今度は選挙日から30日以内に特別国会を召集し、同時にそれ以前の内閣は総辞職し、再び総理大臣が指名されて組閣が行われます。

つまり、解散から最長でも70日後には新しい内閣が誕生することになります。

衆議院と参議院

ここで、あらためて衆議院と参議院の違いについてご紹介しておきましょう。

ご存じの通り、国会は衆議院と参議院によって構成されており、それぞれで法律と予算の審議が行われます。それぞれの大まかな役割分担としては、最初に衆議院で法案や予算の審議を行い、参議院と行います。そして、参議院では送られて来た案をさらに深く審議する――という形になります。

衆議院には議決の効力や権限において優先的な権利が与えられていますが、衆議院のみですべての法案などを通すことができるわけではありません。というのも、参議院では60日は法案を保留することが可能です。いくら最終的に衆議院で再議決が可能だと言っても、通常国会は150日ですので、参議院によって60日を使われると多数の法案を強引に成立させるのは難しいのです。そういった意味で、参議院は法案や予算案をダブルチェックし、衆議院の独善を防ぐ機関として機能していると言えるでしょう。

また、衆議院と参議院では任期も異なります。衆議院の任期は4年間であるのに対して、参議院は6年間となっています。ただし、衆議院には解散がありますので、選挙で当選したとしても任期内に辞職することになるケースがほとんどです。

  • 解散総選挙とは?

    解散総選挙はそれほど複雑なものではありません。仕組みを知ることで1票を有効なものにできるでしょう

解散総選挙によって変わること

解散総選挙によって何が変わるのでしょう?

解散すると世の中はどうなる?

解散が行われるということは、国の立法機関である国会において優位性を持つ衆議院の議員、そして行政を担う内閣が替わることを意味します。つまり、あらためて民意が問われる形になります。

解散が行われたからといってただちに私たちの生活が大きく変化することはありませんが、日本という国の未来に関わる選択を迫られていると考えることができるでしょう。そこで、私たち有権者がすべきことは、選挙に向けて自分が誰に、どの党に投票すべきなのかを検討しはじめることが大切です。

総選挙によって何が変わる?

総選挙では新たに衆議院議員を選び直すという形になります。そして、天皇によって内閣のトップである内閣総理大臣は任命されます。つまり、各選挙区の当選者を決めるのみでなく、国の代表を決める選挙であるという色合いも強いのです。

こういった点も踏まえて自分の1票をどうすべきなのかを考える必要があります。

  • 解散総選挙によって変わること

    政権が交代すれば、当然行政の基本的な方向性、つまり日本の今後が大きく左右されます

解散総選挙で私たちができること

解散総選挙が重要なことであることがわかっても、「自分にできることはない」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、確実に私たちにできることがあります。そこで、続いては解散総選挙で誰でもできることについて考えていきましょう。

投票

まず、すべての有権者ができることは投票です。各選挙区の立候補者と、比例代表の立候補者それぞれに1票を投じることができます。

投票は権利です。近年の日本では投票率の低さが問題視されるようになっています。投票率が50% を下回ってしまうと、国民の半分以上の意思が国政に反映されていないことになるのです。

たかが1票と思われるかもしれませんが、それぞれの1票が最終的な結果を左右します。このことを意識して、確実に選挙に行くようにしましょう。

立候補は誰でもできる?

解散総選挙の対象となるのは衆議院です。2020年現在、選挙権は満18歳以上となっていますが、衆議院の被選挙権は満25歳以上となっています。日本国民で満25歳以上であれば誰でも立候補することは可能です。ちなみに、参議院の被選挙権は満30歳以上です。

総選挙以外の選挙

選挙は衆議院総選挙だけではありません。解散のない参議院は3年毎に全体の半数を入れ替える決まりになっていますので、その都度選挙が行われます。また、知事・都道府県議会議員選挙や市区町村長・市区町村議会議員選挙なども辞任や任期満了に伴って行われます。

  • 解散総選挙で私たちができること

    選挙は国民の権利であり、その結果は日本の未来を左右しますので、しっかり投票しましょう

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ニュースなどで解散総選挙という言葉を耳にする機会は多いものの、具体的にどういったものなのかわからないという方も少なくないようです。

そこで、今回は解散総選挙についてくわしくご紹介しました。投票は国民の権利であるのみでなく、日本の、私たちの今後を左右するポイントにもなりますのでしっかりと自分の意思を持って参加するようにしましょう。