注力のデータセンター向けが減収も、PC向けが増収

Intelが10月22日に発表した2020年第3四半期(7~9月期)の決算概要によると、売上高が前年同期比4%減の183億3300万ドル、営業利益は同22%減の51億ドル、純利益が同29%減の42億7600万ドルとなった。

注力してきたデータセンター用CPUの売り上げが同7%減の59億ドルにとどまり、アナリストの予想平均(62億1000万ドル)を下回る結果となった。クラウド企業への販売は同15%増と成長を果たしたものの、一般企業や政府・地方自治体が自前利用のためのオンプレミス向けが同47%減と落ち込んだことが影響した形だ。

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    Intelの2020年第3四半期の決算概要 (出所:Intel発表資料より抜粋)

第2四半期は同3割増と好調であったが、急激に売り上げが減少する結果となった。新型コロナウイルスによるビジネスの変化が影響を与えたようである。新型コロナ関係としては、在宅勤務や遠隔授業が推奨されており、PC用CPUの売上高は同1%増の98.5億ドルとなったほか、第3四半期にはノートPC向け第11世代Coreプロセッサ「Tiger Lake」が発表され、年内にも搭載PCが多数登場する見通しとなっている。

PC向けに代わるメインビジネスにしようと注力してきたデータセントリックビジネスが減収減益となる一方で、凋落傾向だったPC向けビジネスが増収という皮肉な結果で、相変わらずPCビジネス(社内用語ではクライアントセントリックビジネス)はIntelのメインビジネスのままで抜け出せそうにない。

同社は業績について「新型コロナウイルスに関連する景気低迷の影響を受けた」と説明している。しかし、Intelのプロセス開発の大幅遅延をしり目にTSMCの先端プロセスを活用して猛進するライバルAMDの市場シェアの上昇の影響もあるとみられる。今回の決算内容は投資家の将来に対する失望売りを招き、10月22日の時間外取引でIntelの株価は終値から約10%急落した。7月末の第2四半期決算発表時にも先端プロセス開発遅延があきらかになったため、好業績にもかかわらず、株価が大幅低下しその後回復しないうちに、第3四半期の業績発表で再び値を下げており、投資家のIntelに対する失望の度合いがうかがえる。

Intelは2020年第4四半期の売上高を第3四半期より低い約174億ドルと想定しているが、アナリスト予想は173億ドル台である。2020年の年間売上高ガイダンスは前年比5%増の753億ドルに設定している。

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    2020年第3四半期のIntelの事業部門別売上高と前年同期比増減率 (出所:Intelプレスリリースより抜粋)

7nmチップの外部生産委託の最終判断は2021年初頭に

IntelのBob Swan最高経営責任者(CEO)は、7月に開催した第2四半期決算発表の場で、7nmプロセスを用いたデバイスの開発段階における歩留まりが過去1年にわたり所定の値に達しないため、量産に移行できない状況が続いていることから、7nmプロセスに基づく新製品の発売が遅れることを公表するとともに、外部製造委託の可能性を示唆していたが、10月22日に開催されたアナリスト向け説明会にて、7nmチップの自社生産を推進するか、外部委託するかは2021年初めに決める考えを表明した。おそらく2021年1月末に予定されている2020年第4四半期決算発表の場で何らかの発表をするものと思われる。

同氏は自社生産と外部生産委託を組み合わせた形になる公算が大きいとの見方を示している。つまり、外部ファウンドリ(半導体業界関係者の多くはTSMCだと見ているが、Swan CEOは具体的な製造委託先を明らかにすることを避けている)に製造委託しつつ、リスクを減じて自社内でも製造歩留まりを上げる努力を継続するという意味だと思われるが、7nmについては外部委託を行い、現状の10~14nm製品は自社工場で製造し、これらの複数のダイを1チップに実装する可能性もある。

著者が知りうる範囲だが、Intelは以前からTSMCへ一部の製品の製造を委託していることもあり、メジャーなCPUを製造委託することになっても、特段の驚きは生じない。その証拠に2020年3月9日に、Intelは、「2019年度Intel Supplier Continuous Improvement Awards」(Intelのサプライヤーとして納入した装置、素材などの製品の継続した改善に対する表彰)のうち「Preferred Quality Supplier Award 」(高品質な納品のサプライヤ賞)をTSMCに授与したと発表している。授賞理由は「Intel製品の社外生産においてTSMCのウェハ製造品質の高さ」にあるという。こうした背景を踏まえれば、おそらくIntelは、自社で製造するよりも上かどうかはともかく、TSMCが製造した半導体チップが高歩留まりかつ高品質であることを把握しているものと思われる。

Swan CEOによれば、同社のアリゾナ工場は、現在10nmプロセスCPUをフル稼働で量産中だというが、本来、アリゾナの新しいファブ(Fab 42)は幻になりかけている7nmプロセス用に建設された施設であり、2021年初めには7nmプロセスで量産するための製造装置への投資をするか否かの判断をする必要があるということであろう。